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海が見える新興住宅地
まだ買い手のつかない広い区画には
イタドリ ススキ タンポポ
何処からともなくやってきた
柳や白樺の若木も生え
地面は覆い尽くされることもなく
盛り固められた土が腐 ....
ことばの奥底にある
私の声が聴きたい。
そう扉を開く時にいつもあなたはいない。
なかないで、
なかないで、
あなたはいつ ....
さびしさに疲れました
まちがえて産まれて
お母さん 申し訳ありません
父さん ほんとにごめんね
なかったことにできないことが
こんなにかなしいことはない
どうしたってもたぶん
骨はの ....
ししゅう、
死臭を漂わせることばを、
書いてみたいと、
手を伸ばしたそこは
暗闇が続いていた。
私たちは一列になって、 ....
公園のベンチに座っていた
そよ風が恋人のように寄り添っていた
古いノートの中で
ことばは悶えた
それとも窮屈な服を着せられて
詩がのたうち回っていたのか
その時ひとひらの蝶が
記憶に ....
プラナリアに 出会いたい
永遠の命だというプラナリア
世界が黄砂に なぶられて
沈鬱が大陸を覆い 海洋にも降りた
人は みみずのように
スマホのなかの情報に生きる術をもとめ
無数の出口 ....
水時計に溶けていた
血液の雫があって
時計の器の外には
一枚の翼が堕ちている
静かな痕跡がある
誰しもの夢のなかで
真夜中にも時間を報せる
いっぱいになった
聖なる水時計は
透明な水 ....
何処にも見つけることは出来なかったはずだ
そう訴えているかのように
私の視覚を証言台に立たせ尋問する
画家であれば画材は其れまでに蓄えてきた感情の十色
上手く言葉を塗り付けようとするが
もう ....
炎に出合うと体が勝手に近づいていく
この習性を
人間に気付かれたのはいつだったろう
夏の水田に灯火が点いて
人が居るかと思えば炎だけ
どれだけの仲間が焼け死んだことか
人間にも似た ....
おそらくもう夏は行ってしまったのに
夕刻になると
埋葬されない蝉がうたう
取り残されるということは
ひとつぶの砂のような心地
苦いさみしさだろう
――さいごの一匹になりたくないのです
生 ....
オリオンを確かめて
冬と悟る空に
白い吐息を吹きかけて
部屋に戻る少女たち
残された結晶たちは
さまよった末に
辿り着くのだろう
この夜も 夢へと
赤いバレエシューズ姿の女神が ....
ムシと言えば…
小学生のとき、有名な昆虫博士のお話を聞いた。
日本では 蜘・ムカデ・蛇にトカゲ・ノミ・虱など 小さな生きものをムシといったけれど ここでは昆虫のことを言います。では、昆虫とは何 ....
秋刀魚のような
ひとでした
辛味のきいた
大根おろしが
ほどよく似合う
それはおいしい
ひとでした
....
雨の夜
国道には死があった
帰り道を急ぐ車の
その一台一台に生があるその対極に
或いは
その隣りに
ぴくりとも動かない人間の脚はまるで
精巧なマネキン人形の部品のよう
アスファ ....
坂を上りきったところには思い出が宿る。
僕は持ってきた手帳を開き、使い古した万年筆でそっと言葉を描く。
生命の継続。生命の継続。生命の継続。
三回繰り返すと不思議とその場所には新しい ....
服を脱ぎ捨てて、
皮膚を剥いで、
すべて剥ぎとる。
まだだ、
核心に触れるまでは遠すぎる。
いったいどこまで
いったいいつまで
続くのだろうか。
魂は太陽に比例 ....
皮を剥くことばかり求めて、
実の味を忘れた
林檎みたいな私の肌に、
あなたは歯をがりり立てました。
私はその痛みに歓喜し
ちいさな翼を羽ばたかせ
あなたの心のなかの
小さな ....
最近は月を観ていないからかも知れないけれど
ぼくは退屈で何をしていいか解らない
マリィの部屋に行き
琥珀を舐めても
紫煙に沈んでも
何が変わるとは思えない
あなぐらに潜んで夢でもみ ....
六月の雨が
育ち盛りのスイカをいたずらに誘う
でも、今年の梅雨は少々しつこくて
早くも冷夏の予感がした
ナスビもトウモロコシも痩せたまま太らない
繁茂するのはスイカのツルと葉っぱばかり
....
自然であること自然に衰えてゆくこと
ぶつかりながら消耗しながらもえつきる流星
いつ どこで
誰が 何を 何故?
自分のだけの視野で批評も感想もなくて
生きることも可能だが
....
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
....
電柱スルスル登って翻る
夜の風は
ううんうんといい匂い
もう秋だね秋だよと
電線をスウイスウイ息を吹きかければ
粒々の秋が沸いてきて
ゆらゆらゆらぐ雲の上
大きな鉄塔にょきっと一番星が飾 ....
わたしは帰る
猫の住む我が家へと
服も靴下も脱ぎ散らかし
ひんやりとしたベッドへ
もぐりこむ
鼻先の生温かなけものの匂い
....
戯れが過ぎたのか
名月が遠い 待てない心臓が加速始め
この訪れの麗らかさを
深呼吸トクトク鼓動にはもって上体を反らして
螺旋の儚い軌道を静止飛んでいる
ひたひたの心に ....
あんた証明したい
なんにも
嬉しいね卵持ってかえりなよ
釘打ってごらん釘
ぎったんばっこん傾いて
地球も発泡してら
ああ君ら目から艶墨ちろちろ流すが
猫がしどろもどろだね
あんた主張 ....
ひかりのあたる角度によって
ものごとは綺麗に反射したりえらくくすんで見えたりもする
シャンデリアのある素敵な応接間
ある生命は空間を得るために代償を払う
それを得られない一部は
高速 ....
箪笥の奥深く秘められていたいくつかの小箱
おそらく母の物であろう歯の欠けた櫛に
出合ってわたしの心が波立つ
そして 夭折した兄たちの名に混じって
ボクの名が乾ききった小箱
それは ....
夏のあいだ僕らは
危うさと確かさの波間で
無数のクリックを繰り返し
細胞分裂にいそしみ
新学期をむかえるころ
あたらしい僕らになった
けれど
ちっぽけなこの教室の
ひなたと本の匂いとザ ....
国家機密は
戦争を始める日をこっそりと
封鎖している
昭和憲法はアメリカの
占領政策のもとに創られた
平和憲法であって
日本はアメリカの植民地だと云う
国会議員がいる
国会で発言された ....
きみの取扱説明書をみつけた
ちょっと古びて
もう保証書もどこかへいってしまった
皮膚を剥いでゆくように
すこしずつものを整理してゆく
基本性能だけでいいのだ
死ぬまでにデフォルトの ....
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