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わたしのなかで
剥がれおちたなにか
そのなかにある
あかいかたまりのなかの
あかいわたし
剥がれ落ちたわた ....
学園都市線の高架下
灰色の橋脚に二羽の鳩が仲睦まじく
寄り添ってはキスをして
激しく身をよじってはまたキスをして
やがては重なり 羽ばたきながら
気の早い春が固い雪を緩め
茶色く水っぽ ....
歩くのはいつも なまの義足
寄木細工のじん帯をか細い骨で震わせながら
足裏に
肌合いのわるい
なじめなさを押しつけても
二つのものが 交互に役割を担うから
どこか
と呼ばれるcell(セ ....
十二月の夕暮れは突然やってきて
時間の無い坂道を上って行く
左手に灰色のニコライ堂が聳え
覆い被さりながら
聖橋の先には聖堂の黒い森
神田川もJRも跨ぐ聖橋
暗いトーンの夕暮れから
....
ずっと考えつづけてきた
この街にやってきてもう何年になるだろう
親しい知人も隣人もたくさんできたし
顔馴染みの飲み屋もいくつかできた
でも時々その飲み屋であのひとのことを聞く
その噂 ....
ともだちのメールの カナリクタビレタが
カタクリ カンタービレに 読み間違えてしまうのは 三月のせい
この胸に 湖水が萌える
サーモンピンクと コーラルピンクのあいだに ひそむ
銀 ....
薄桃色の
柔らかなパジャマ越しに
君の左胸に
そっと僕の手を置く
温かくないけれど
正しくもないし
なんの役にも立たないけれど
君にあ ....
道の途中で振り返ってみる
長い時間だったのだろうか
それとも
ほんの
まばたきするような
短い時間だったのだろうか
人は人と
すれ違い
時々恋をしては
大人になったふりで
別れ ....
赤ちゃんは
眼が見えるようになると
まず
人の顔を認識するらしい
丸の中にふたつの小さな丸があったら
それだけで顔だとして
笑いかけるように
出来ているらしい
そうすることで
世界は ....
吸い込まれていくその先は
さいぼうの隠れ家
手を振る、手をふるう
ぼたんになる、頃になる
おや、もうあんなにも遠くに
浸透してしまった窓のつらなり
わたしは遅れた足取りで
ひとつ、ふたつ ....
力の限り優しくなろう
電車の中で目の前に座っている見知らぬ他人の幸福を願う
元気でありますように
心穏やかでありますように
家庭が平和でありますようにと
インフルエンザとか伝染された ....
(水)
あ
うえ
おいくか
こけきく゛け
こ゛すさこそせしす
てつとせたちつてとのな〇のにぬねのひほへふはほまもみむめもゆよえや●いう
れおるらりる
りろわえい
....
チェーンステッチで
四つ葉のクローバーを
刺繍した
クリイム色のやわらかなフェルトに
ひとさし
ひとさし
鎖をつなぐ
祖母へ
眼鏡入れとして
プレゼントした
祖母は
....
針を数えたか、と
父が言う
裁縫は針を数えることから始まって
針を数えて終わるんだと
わかったようなことを言う
自分では
ボタンひとつかがらないくせに
もしも
針がどこかに落っこち ....
きみは僕に問う
僕が不条理を否定するようなことを言ったとね
僕は答える
ああ言ったよ
不条理はひとを幸せにしないってね。
じゃあときみは訊ねる
ペケットの“ゴドーを待ちながら”を
....
1
白く熱い道を
白いカッターシャツの高校生が
自転車でくる
7年ぶりに会った息子、きのうのこと
美しく花開いたのっぽのあの子
その道を今日も彷徨えば
また出逢った有り難さ
足 ....
忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす
あ ....
かなしい夢をみて
目覚めた朝は
ああ、夢でよかったと思う
けれど
かなしいことが
なくなった訳ではなくて
心の引き出しを開けたら
別のかなしいことが
そこにある
引き出しをちゃん ....
静かな 待合室に響く
早口で話す声
隣りにいる付き添いの人は
慣れているのか
相づちさえ打たない
脈絡もなく
しゃべり続ける婦人
耳を塞ぐ
イライラを通り越して
不安 ....
雨が降っているのかしら、と
君がつぶやく
君のつぶやきは
答えを求めている時と
そうでない時があるので
それを聞き分けるのが
とても微妙であるけれど
肝心なのは
語尾のニュアンスで ....
降り続く白い冬
いまはただ
うつむいた雪が
降り積もってゆく
脊髄が 錆びついてくるのを感じる
骨が膠着し 何も言わなくなると
ますます冬は
冷たくよそよそしくなる
寒さが喉で固ま ....
僕の目指す
ドラミングは
どっしりとしたリズム
それでいて
軽やかに転がっている
隙間に ぴたっ とはまった
かと思えば
メロディーの上で踊っている
ビートを刻 ....
ひとりで生きられる
生きられない
それとも、ひとりで生きざるを得ない
わたしってどれなんだろうね
※
無責任ってわけじゃないけど
ちょうど
満員電車のなかで誰かに寄り ....
私は
カラダの中に
海の記憶をとどめておくの
何度
再生しようとも
薄れはしない
漣の音
いつか
愛しいあの人が
私のことを手にとって
そっと耳にあてたなら
懐かしい愛の歌が ....
過ぎ去ろうとしている
冬のしっぽが
白く きらめきながら
川面を流れていく午後
でも
私は
それをつかまえられない
パレットに出された錆びた金色を
時間の筆が
グラデーションを付 ....
バックスペースで
だいじな文字から
消していく
逢いたいな
逢いたい
逢いた
逢い
逢
あ
跡形もなく
この世を去った
文字や
私のため息が
抜け殻の ....
君がリリアン編んで
見上げた空は花と同じ色で
ぜんぶ、ぜんぶ春だった
ゆびさきで、光源をたどる
なくしたもののかたちは
思い出せないけれど
なくしたものから芽ぶいたのは
街でいちばん ....
ゆらゆら路地裏に消えていく猫の尻尾
日曜日の午前9時
空がある
雲はない
宇宙がどのようになっているか いつの日か科学は突きとめるだろう
宇宙が何故在るのか 誰も永遠に分からないだろう
テ ....
小学生の頃のいきつけの内科医院は いつも
消毒薬と漢方薬の匂いがしていた
医者の奥さんが受付の奥で薬を調合していて そこでもらう薬はとても粉っぽくて
飲むと必ずむせた
待合室から小さな裏庭 ....
うみのながさを感じていると
わたしがその手につつまれているような
不安定な安堵に満ちてくる
うみのながさを感じていると ....
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