すべてのおすすめ
また列車は停まらず通過していった
もう何本の列車が通過していったことだろう
早朝からプラットホームに立ちつづけて
もう陽は落ちようとしているのに
どの列車も眼の前を速度を落とすことはな ....
夜中に目が覚めて散歩に行った
黒の画用紙に太めの半月が貼ってある
彼女はふっくらした横顔を向けてこう言った
忘れちゃだめよ あの娘はお嬢様育ちだということを
そうだった 彼女は両親からたっ ....
ロングジョンシルバー船長は引退したらただの爺さんになっちまう
フェアリーテールはティンカーベルの魔法でいきのびるのだね
世界はウオール街ではなりたたないのだよ
ぼくたちは不思議の ....
無くした愛をいくつかぞえただろう
面影をいくつわすれただろう
歳をいくつかさねただろう
こころのなかでなんにんころしただろう
僕はいつか独房のなかでしぬのだろうか
....
たねは
ねむっている
どんなゆめをみているのだろう
たねが
かぜにとばされた
すこしふあんになってふりかえる
たねのきおくは
らせんのようにつながっている
たねは
たびを ....
雨を切る
水面のふたえの眼差しを
かたちとどめるまで震わせる
水上に口寄せる雲のとうげ
向こうは見えず雨惑い
みなもとに降る縦糸の舟が
あまさず小道を払いおとし
南の淵から流れる北へ
....
発見した洞窟は
温かかった
あなたを想って
さまよった末
たどり着いた
わたしは其処で
恍惚となった
あの初夏に
感じた潤い
上り詰めた感覚
果てない わたし。
....
ふたりで見た海を通る
消したい記憶を消せるほど
ぼくは澄んではいない
吹き消されない光の源
その物真似をしている
ふたりで見た海を通る
消したい記憶を消せる ....
吹き消されないともしび
たしかにある
それしか分からない
一箇所だけ鏡のような俺は石ころ
ひとりでもないし
たにんごとでもない
やり方はほかにあるってことさ
....
苦しんだり悔やんだり
いまさら心をたてかえたって
どうにもならないような気がした
肩とおなかににちからをいれる
惨めですっからかんになってしまう
遅くはないさ
....
私の頭に
時々帽子がぷらりと帰ってくるよ
遠い昔
だれかが
私の髪の毛をくしゃくしゃっと
した時の
あの切ないような感触を
私の頭は覚えているよ
みんな
自分のことだけで精一 ....
萎み始めた意識の片隅に
かろうじて立て掛けてある
ギターの絃はたぶん錆びついて
降り積もる時間に埋れている
僕の指は踊れないから
意味を探してしまうから
残念ながらギター弾きにはなれな ....
橋の下の叢に
ひっそりと落ちていた
真珠色の受話器と
捩れてしまった一本のコード
その先は川に入っていて
その更に先は
わからない
暮れ時、水面に ....
子供の頃
古めかしい三面鏡が
部屋の隅にありました
木目模様の板に貼られた
三枚の鏡はそれぞれに
蝶番によってつながっていて可動式でした
普段は折りたたまれているのだけれど
ぱた ....
あのひとは
気まぐれで意地悪
あたしの気持ちを
試すかのような言葉で
揺さぶりをかけてくる
かと思うと
子供のような
愛らしさ
彼は
いつも 大気のような優しさで ....
青い空を白い雲が流れて行く
さらさらと水の流れる音がする
地上から隔絶された空の楽園
ここには僕以外誰もいない
静寂と孤独だけが僕の友達
ささやかに続く平穏な日々に満足していた
あ ....
しょうがないじゃない
わざとじゃない
あの人が悪いのではない
誰のせいでもない
ひとりでにそうなった
春だから
愛でたい
吹き荒ぶ二月の夕刻
山裾の疎らな住宅を
訪問営業でまわるのは
実に 切ない
長靴ギリギリの雪をこぎ
通りから玄関までの細道を通りぬけ
もはや顔面がかじかみ
鼻水が垂れている感覚すらない ....
肉体労働者はバカになる。
勉強をしなくなる。
頭が働かなくなる。
寝てばかりいる。
女の事ばかり考え
ひまをもてあます。
一昨年は勉強しまくった。
資格を取らなくては
現況には ....
とがらせろ
とがらせろ
ながれのすべてを
とがらせろ
握りしめた力が
入水した紙粘土のように ....
飼っていた黒猫が突然行方不明
家の玄関の鍵は掛けていた
どこか窓が開いていたのか
窓から見える風景は
空っ風舞う冬景色
街路樹の葉はあらかた落ちてしまい
魚の骨の並木道
ふと見る ....
ああよく寝た
こんなに寝たのは久しぶりだ
大きく背伸びをする
薄暗いベッドルームを抜け出し
ひんやりとした大理石の床を踏み
白い柱列を巡って神殿の外に出た
燦燦と降り注ぐ春の陽光が ....
XXは シュールと見せかけて
XXは 実はリアリストである
XXは 計算なしで泣くと想わせながら
XXは 正確な解答を知る数学者である
XXは 傷ついたのよと訴えながら
XXは 舌を ....
ぽっかりあいた
空洞は
ただ ひたすらに
まっている
「おかえりなさい」と
言う時を
夜の孤独は
しんしんと冷え
柱時計が時を刻む
ぽっかりあいた
スリッパの
空洞の ....
なんのために
歩くのか
それが死への行進であっても
もはや
退くこともできず
ただ祖國の土を踏むことだけを
夢見て
凍土を踏みしめて行く
泣く力はとうになく
乳さえ吸う力もない
赤 ....
ひさしぶりの渋谷文化村通りを歩く
フェルメールに会いに行くのだ
ハチ公前で待ち合わせて雑踏に紛れる
風は冷たくて肌に突き刺さる
沢山の愛や希望が行き交う街で怪しいふたりは浮いて ....
世界は様々な色と形に溢れている
雑誌や広告にも様々な世界が散りばめられている
//透明な硝子板の上//
配置を考えながら切り分けてみた
淡い色と鮮やかな原色のポーズ
長 ....
むらさきにしずむみずうみの
せをはしるあめのかげは
せつなのおもいつなぐための
ひびわれのなかにひかる ....
言葉なんて
なんの役にも立たない夜があった
抱き合った体温が
生きている今を
実感する唯一の術であると
感じた夜があった
舌と舌が出会い
いくつもの嘘を従えて
口腔内で生まれ出た言 ....
麗 帰って来てくれたんだね
冬の間中街を取り囲んでいた灰色のビル群の向こうに
東京湾が光っている
その上空を飛行機が西に飛んでった
さらにその向こうの木更津の山々には緑が芽生えている
山頂に ....
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