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「メリーゴーラウンド」 4
数学
わたしがまだ小さかったころ
という表現は
何歳くらいを示すのだろう
白板にマジックペンで数式をならべる
....
翳りはじめた葉の陰でねむる日の
腕をのばし
触れた輪郭を
最初のものとして、覚えておこう
たゆたう
まだ眼をあけてはいけない
つたい流れてくる感触は、にぶい冷たさにふるえ
昨夜、飲み ....
もういない
切り取られた空間
いつもの椅子の上に
黒く切り取られた空間が
重く 黙りこくっている
しわしわと凝った
妻の肩を もみながら
目は 切り ....
高架の上を幾つもの魂が
赤い光を灯らせて
帰るべき場所へ向う
高架の下では
ダンボールの中でちいさな魂が
仲間に入れてくれと
か細い声で歌い続ける
弱く
さらに ....
誰の所有でもない
扇風機が回っている
建売の新築住宅の壁にこびりついた
電信柱の影は
皮膚病
二階の窒息のベランダに干された
布団は
....
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきに ....
からだが どうん、まばたきしたときの
あのせかいが まっぷたつ から、ゆうぐれて
頭から 地球の中心に ぐん、と押されると
わたし、いつも きまって あやまってしまう
ごめんなさい、ごめんなさ ....
財布の中で
二度と巡り会えそうもない指の動きは
千円札と別れる為
明日も会ってくれるのか
どうかもわからない恋人の為に
今日もまた財布に指を入れる
そして俺と君は
野球場でホーム ....
急に君が言う
疲れましたって
何にってとこはにごして
あるいは別に
言ってみただけの事かもしれない
昼過ぎの喫茶店が
ちょっと嫌な感じに混んできて
早々に帰りたくなったが
突然雨が ....
1 夜の庭で
白い米を
黒ずんだ木の升で三合量る
最初のとぎ水は
庭に撒く
立秋を過ぎたので
コオロギが鳴いていて
いるか座が光っていて
だから私はしばらく庭にいた
....
商店街を抜けると土手の向こうから
途切れ途切れに提供のアナウンスが流れて聞こえ
江戸前のを再現した
真っ白い枝垂れ花火が降りました
わずかに遅れ耳に届く乾いた打ち上げの音が
昨日まで必死だっ ....
いくら扇いだところで
忘れることなどできないというのに
いつまでもうちわで扇いでいる
自分の周りだけ
他のところより夏めいていて
ほんのりとしょっぱい
何本平行線を引いても
必ずどこ ....
ぼくがひとり
窓を閉めている
ぼくがふたり
雑木林をあるいている
ぼくがひとり
床を掃いている
ぼくがふたり
ゴミ箱をあさっている
ぼくがひとり
湖畔 ....
大事だったはずのいろんなものが
どうでもよくなる
スイッチ
普段は見えない
あることさえも
感じない
でもそれが見える瞬間があって
それは
大抵
一回につき
何時間か続く
....
(失うものすら持っていなかった女の子たちへ)
ゆびのすき間から桃の果肉がぶちゅる、
って逃げて行くというよりも追い出すような
だからもう女の子たちはソフトクリームを
溶けるまでしっ ....
ずっとここに住んでいる
ここがどこなのか
わたしにはよくわからないけれど
アル日
ここに
白い服を着た
顔のない誰かが
わたしを連れてきてくれた
わたしの手を引いて
それからずっ ....
何はともあれ
やっとのことでお触りバーにたどり着いた
とにかくここまでの道のりが大変だったのだ
目覚し時計にカミキリムシが巣をつくって
がちゃがちゃ長針と短針を適当に動かすものだから
....
蝉が時雨れている8月の
呼吸がぴたりと止まる時がある
子供達は公園でぶら下がっていて
突然の静寂にゆれている
初めてついた嘘はどこへやったかと
懐かしい引き出しをひっくり返すと
初めて ....
この時刻にこれほど眠いの
悪くない話だと思うよ
さっきメラトニンたくさんナイトミルクnemuを飲んだから
それで眠いのかもしれないけど
睡眠薬は飲んでない 飲んでないんだ
肩凝りがずいぶ ....
人の向こう側に横たわる人よ
横たわる人を跨ぐ人よ
潰された眼は見ていただろうか
白く透ける少女の抜け殻を
地下水脈の夜光虫を
皮膜に隠された結晶体を
地は焦げるほどではなく ....
きみとぼくは
泣きながら
ダンスを踊り
磁石の月に
吸い寄せられる
空の終わりに
ぼくの汚れた靴と
きみの破れた
ドレスの裾が
....
このままどこかに行ってしまおうか
帰りの車中でそんなことを言っていた二人は
どこにも行けないことは知っていたけれど
その言葉だけで十分満足だった
今、僕らは三人になって車も一回 ....
いつもあのひとのことを考えているわけではないから
たまには大目に見てやってほしい
外は爽やかに水色の夏の朝
汗で酸っぱいTシャツを脱ぎ捨てて窓辺に立っても
田舎の農道に車一台通るでもなく
....
抱き合うことでしか伝わらない言葉で
君は
忘れられないモールスを
ボクへと送った
ボクは
その意味を図りあぐねて
夜行列車が奏でる和音を
ずっと数えてた
少し開いた窓の隙間で
....
1
るるる
時には名もないあなたを「あなた」と呼んでみる
「あなた」 あなたはふりかえる 顔のあるあなたは
時として 「あなた」ではあるものの あなたではなくなってしまう
時がある 「あ ....
コイン型の潜んでいたりありてぃが溢れそうで思わず叫んでしまいそうでした
部分的に降る雨、といいますか、
局所的にそれはまるで僕だけに降り続けるような
金色でも銀色でもない
猿ぐつわでございまし ....
一滴の水の中へと
沈殿してゆくひと夏の青空が
無呼吸で深遠へと降りてゆくので
圧迫された半円の夏空その低空ばかり
飛び回る鴉たち
重たく旋回しては羽を乱散させ
またしても映り込む水の中
....
先週の午後
雨と一緒に
隣の男が降った
最上階に住んでいるとそれだけで
いつでも飛び下りなさい、と
手招きされているような気がするので
荷物が重たくなった時などは
ベランダに近づ ....
18禁と書いて
18金って書くと卑猥で高飛車だ
しかし青い春とは金なのだ
俺の18禁もやはり金だった
勤労ゆえに
16歳の時に友達とビニ本を買いに行った
年齢を偽り店からつまみ出された ....
足音 は
ほっておくとどんどん先に進んで
呼び止められると不満を洩らす
体 は
手足を動かすことに夢中で
なにを訊かれても聞こえないふりをする
心臓 は
なにかあるたびペースを乱して
....
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