うたのように
長い夏が来た
暑い国際通りで
私は泥のように
ラーメンの汁を啜る
うたのように
軽やかな夏が来た
蘇鉄の葉が
鼓動する
果ても知らない夜だ
ジェーン・バーキン ....
ふとした事で何かを忘れる
記憶なんてものは都合がいいもんで
いつも自分が自分を忘れ
都合の悪い心を残したまま
今も私は私を置いたまま
知らない誰かを自分と思い込んで
わたしの真似をする
....
少女が窓辺に腰かけて
静かに外をながめながら
じっと何かに聴き入っている
その目からこぼれ落ちる
涙のしずくは
キラリとひかる美しい
ダイヤモンドのよう ....
六月の夜の街で 通りすぎるはずの弾き語りに足をとめて
どうするべきか戸惑いつつ 疎らな聴衆の背後に加わり耳を傾けた
酔っていたせいかもしれない
気持ちのいい風が吹いていたからかもしれない ....
{引用=
イ短調ロンドの孤独に犬のやうにあくがれて
せつかく育てた{ルビ硝子=がらす}色の{ルビ菫=すみれ}を
ただなつかしく僕は喰ひ尽してしまつた。
失意のかたい陰影を
新緑のプロ ....
葉桜ふさふさ
夜の川
光はしずかに
水流の
運転手さんが
桟橋で
蛙のひとつを
あいまいな成功
諦めるのではなく
ただ助けていく
葉 ....
海老とか虫が宇宙人だったとしたら
もはや彼らは
地球侵略になんとなく失敗している
だいたい地球にとっての人間なんてものも
失敗作であることはあきらかだ
失敗ぐらいでは ....
無数のきみの顔は
いつも笑顔を見せる
他のどんなものとも似ていない
きみの生と死は
時の海流を流れていく
潮目ではふたつの流れが
ひとつに混ざり燃え上がる
暗闇の波でおぼれたぼくたち ....
{引用=ふるいふるい くさばな
わたしをみながら
なにを はなしているのか
わたしに きこえない
おそろしい こえで
(いのることができないのです
す ....
もういいよ
帰ろうよ
私たちは
あまりにも それぞれが
理由を愛しすぎて
変わらないものを
予定調和の規則を
もうもたれないのだ
もういいよ
帰ろうよ
私が あまりに速 ....
変わらない
梅雨明け空と海の青
鳥類魚類は気ままに生きます
風の谷
潮の香りの風が吹く
死出の旅路のやきばの煙
海の旅
竹の筒には酒入れて
勘弁してよね、酔って、乱れ ....
たしかに電車を乗り継いで、よくわからないうちにお墓の前に立ってた
お花もお供え物も、お線香もない
たよりないトトロのリコーダーが裏の通学路から聴こえてくる
このご時世しあわせであることは地獄 ....
【虹色の白鳥】
遠い海に、虹色の白鳥がいるという
羽はとろけるようにやわらかく
飛ぶようにはつくられていない
青い夜を泳ぎつづけて
ああ、まるでひとりぽっち
そういう思いに羽が沈み ....
暑い
暑いなあ
まるで真夏の暑さだ
地球が狂い始めて
オマエラ、人間のセイダロウ
叫んでいるかのように
路傍に屈み
タンポポの種を
ふぅと吹いて飛ばしている
子供が二人、
白く ....
あぁ
世界は
なんという粒子の細かさ
無数の感情が
一生をかけて
行く宛てを探している
今日も私に届いた粒子を
醜いと思う私が憎い
悲しみだけの自嘲
恐怖を携えた挨拶
....
からっぽです
それはそうと
からっぽなのです
いいえ、からっぽなのです
からっぽなんだってば
それ以上言うこともないでしよ
からっぽなんだから
寂しいよう
おれは水溶性だから
泣いている人とか、
こういう灰色の
天気が嫌いだ、
カゲロウみたいに
目の前がふらふら歪んで、
傘の無い人もろとも
いきなり消えてしまうのは
怖いな、
....
最後の恋かもしれない
恋に恋して恋かも分からないまま
私は何枚ワンピースを縫ったのか。
私は知らなかった、
あんなに小さなお花に劣等感を微塵も感じず
ブレザー着こなす紳士ぶった紳士、
くま ....
風のない日も向い風
おでこもあらわペダルをこいで
きみは往くきょうも
仮の目的地へ
本当に往きたい場所には
まだ名前はない
愛せない地図ばかり
もう何枚も手元にあるが
こんなに長い一瞬 ....
「ねえ、夜這いって、知ってる?」
と、{ルビ麻子=あさこ}ちゃんにきかれた。
わたしは、その言葉を知らなかった。
「ヨバイ?」
麻子ちゃんは、けさ読んだ小説に出て ....
すべての川は流れている
すべての故郷の川は流れている
耳を傾けるならその川の流れを
聴くことができるだろう
乾ききった風と砂しか入らない
窓からせせらぎが流れてくる
台所の床をひたして ....
あの犬の鳴き声が哀しみをいや増して
どの街まで逃げても逃げられないような
死にたいって感情が邪魔で吠えられない夜なら
白々と明ける朝をそのまま凍って待つつもりさ
空白の静けさが ....
{引用=*筆者より――ちやうどこの時期、十二年書けずにゐた詩作が復活して三ヵ月が経ち、十二年分のマグマの噴出が落ち着いたこともあり、いま読み返すと力が抜けてゐる感があつてそれが良い方にも悪い方にも出て ....
じきに夏ですね
わたしの表現は
誰にも奪えませんが
暑さにかまけて
じきに夏ですねなんて言ってみる
新陳代謝で生まれ変わるわたし
青空のもとで血肉を燃やす
風の隣で鼻を利かせ ....
あの時の理解は宇宙に染み渡ってゆくのだ。
ほかのまぜものを食べてみようか
黎明の貧困のうち商売が成り立たないから
廃墟に廃棄される、ロボットの哀しみの夜を知れば
凍てつく空気を ....
吹いている
もう風が絶えず
吹いている
私は空の青みを見つめる
やがてその底の方から
貴女の声が木霊するまで
漆黒の闇に手を伸ばし
混沌の夜にひざまづき
吹いている
もう風 ....
前歯を光モノに替えてやろうと思う
「ピカリ、が眩しいだろ?スズメ
奥歯の歯周ポケットから小銭が溢れだして
それを溶かせばいいだけのお誂えさ
ここだけの話しだけど 」
使えば使うほど ....
{引用=落ちてきました
くだものです
なまえはしりません
まるくて、やわらかいです
あなた神さまからうまれたんですよね
了介くんがいってました
(了介くんは十二歳の時に
海でお ....
音楽の花の大地に星も降る
色彩が瞬き心に透き通る
風につられて 心地よく時間を置いて
手を合わせる
何かと繋がり その何かを考えずにすむ
心の置場所 雛を巣にそっと置くように
....
少女がいま黒い部屋でしずかに笑っているのは
そこに活けられた中原中也が枯れているからです
中原中也は季節に追われ
小さな窓から見える春の風に憧れたのですが
羨ましいとは言いませんでした ....
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