あんまり心体しんどくて
行き場を失い裸になる
そうして編み戸から入り来る
夜風をひんやり肌に浴び

生きてるなあ 生きてるなあ

私は自分を取り戻し
静かに目を閉じ胡座かく
何処にも ....
  なつぐも
{引用=―エミリ・ディキンソン " AFTER a hundred years --"に基づく―}

ともだちがだれもいなくなったとき
わたしはその野原にいき ....
全てが終わり
全てを失い
命は保たれ 
風が吹き

この静けさのなか、
この透明のなか、

私は深い井戸の底に居て
寒さと闇に震えながら
一日に一度の来光の
その瞬間を待っている ....
やさしいと
感じてしまった愛じゃなく
あれはみんなにやさしい小悪魔


こころ堕ち
欠けた十字架とかも好き
汚れたリアルな愛とかも好き


憎しみを
人の数だけ持つ身だが ....
からだを崩して
水の音が静かに静かに
重力に逆らい天上へとそそぐ

赤ん坊がボールの中で宙返りをしている
老婆は手編みのベストを厳かにまとって
庭木は樹海の水脈を眩しげに浴びる

洞穴 ....
季節はつぎつぎ仕舞われて
ま新しいシャツの朝、とびはねた分だけ沈む靴

いつ吹雪がきてもいいように準備しておくんだよ。
たんぽぽを乾かして瓶詰めにして
転んでも泣かないように、いつもすこ ....
ぼぅっと座っている
木陰のベンチに
黒アゲハが周回し
近付いては離れていく

午前十時半、

照り映え揺れる木立の緑が
明るくまた濃く暗く
並び繋がるその相貌を
痛む目こじ開け凝視 ....
君が今さっきまで居た
空間に
光射し込み
無数の影、ゆらゆらの揺れ
わたしの脳裡に鮮やかに
真白い面にピンクの頬、
浮き立ち余韻を
響かせる
光、光
光響く
この未知なる道を
僕は行くよ、
もう希望もなく絶望もなく
(夢の通い路は荒れ果てて)
逃れ去る郷愁抱き
進める限り何処までも。
思うんだけどさ

月に
祈っている声は
すき透る悲しみをかすかに帯びて
でもあの物語の舞台の入り口にもなるよね

それでね

木々をゆらす風の暖かさが
行方を見失った時
 ....
{引用=*筆者より――筆者が本フォーラムでの以前のアカウントで投稿した作品はかなりの数になるが、アカウントの抹消に伴ひそれら作品も消去された。細かく言ふと二〇一五年十二月から二〇一七年二月までの間に書 .... から だった
前進しようと思えば未だできたが
から だった

寝ても覚めても
あんまりカラカラと鳴るばかりで
もう嫌気がさしちまった

(なのに夢の空はまた
淡い淡い紅に染まり
何 ....
閉じた目をあけたとき
私は一個の月となり
孤独な三日月の
寒さに凍えたのでした

ふるふる震える
突き刺さった星の旗は
悲しみから遠く離れて
無関心なあの丘の上で
風に吹かれ ....
ゆび伸ばし
綺麗な三日月触ってみたら
遠く魚の跳ね跳ぶ湖



月ひとつ
孤独な顔している空は
やさしいくせに哀しい闇色





そんな目で
わたしのな ....
穴があったら誰か埋めてくれませんか
リモコンの不具合に
いちいち強迫的に反応し
ビジョンから見れば 滑稽なのは
十分承知している

生活に支障のないものの
家族には目障りな光景に見え ....
満開の桜の下に集う人々は
静脈のように透き通っている
花曇りの午後に風が吹いて
柔らかい水のような眠りを誘う

穏やかに笑う彼らの腕時計は
それぞれの時刻で停止している
目的も意味もそっ ....
もう
陽がくれる

とつとつと
西へ西へと歩んでいくと
孤影は東へ歩み去り

すれちがうのは

ひとつ、ふたつの足音と
みっつ、よっつの息づかい
いつつ、むっつのさみしさよ

 ....
「家族は唐揚げ」
どこからともなく
湧いて出た
その一句
そのしゆんかんから
なにゆえか
俺の心を とらへて離さぬ

幾百万もの言葉があり
百の何乗だかの組合せがある中で
天使 ....
層成す緑が揺れています
奥まる樹木の向こうは白々、
高曇りの空に薄日が射し
何とも爽やかな風情です

(こんな景色のなかに居ると
身体中が透き通って
うっとり懐かしく溶けていく、
そん ....
  
 
 昨日の信念と、今日の信念が変わる人が居る。
 
 一貫性の無い嘘つきだと、人は言う。
 
 そう否定する人は、今を生きていない。
 
 今の在りかを知らない。
 
 
 ....
あなた達とすべる。
小さなおしり達は、
風のやさしい手のひら、
土の広い背中の上を。

都市から遠くはなれた
昼間のような自由な丘で。
そしてあたたかな夜、
星たちと共に駆け上がる。
犬や猫、人間たちのいる駅の
自販機の前で
え?別れてって?


ラーメンを
食べる姿が醜いと
言っただけでしょ、嘘じゃないからッ!



あんなにもすべてを許してくれるから
て ....
さかなのひれが走り
海はのどかに青い石をのみこむ
くじらのせなかに白い
かげがえんえんと生えている

むろん海だけじゃ
生きていけないから
あたたかなほうようをおこなうのは
水平線 ....
S君の身体は真に要領のいい奴とできている。
だからわたしはS君の身体を離れて住処を変えようと思っている。
ところがこのことを未然に察知したS君は自分に切り替えを命じたんだな。
血の流れを切断 ....
数日前の冷え込みは
さらりと積もった雪とともに
あっさり流れて消えた
今日はぬるい雨が降る
冷えては弛んで
今年も確かに春は

令和は五月からだとさ
準備期間がどれだけあったって
あ ....
ぼくの朝は完結しないつめたい夜を引きずってはいない
ぼくの大腸は閉塞して夜をためこんでいたけれどもね

カーテンを引くと天使はねぼけまなこで羽ばたいている
窓からのぞくと景色のはじに満開の桜の ....
  
  
  
  結論から先に言え。
  
  
  
  いつもそう言って
  
  俺の努力もアンタへの気遣いも
  
  不毛にしてしまう上司。
  
  
   ....
終電にゆられて、風の強い歩道橋を渡り、またビールを買って帰る

テレビ通販の明かりだけの部屋で、あしの爪を切りそろえて
膝を眼窩にうずめた


いつになく緊張してた官房長官がその昼なん ....
 花瓶の近くに置かれた姉の唇が燃えてゐる。

 うす紫色の炎が小さく上がつてゐて、読んでゐる文庫本に今にも火が移りさうだ。

 目を細めて見ると、表紙に「菜穂子」と書かれてゐた。
 ....
夜になると

いちにち恋をひとつ

棄てようと思って

田んぼの畦道で夜風に

洗われています

やることがほかにないから

しかたがないのです



ここ ....
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