悠々と二羽の鳥が、碧い空を裂いてゆく、
鮮やかな傷口を、
銃弾のような眼差しで、わたしは、追想する。
その切立つ空を、あなたの白い胸に、捧げたい。
・・・・ ....
過ぎ去りし 春のいのちを 悲しむか
薄暮に舞うは 花びらの雪
彼の乗った船が エーゲ海で消えた
滅多にあることでも ない
彼の乗った船が エーゲ海で消えた
遠州浜の海岸線は 遠い砂浜
波に運ばれる 白い砂と 生き物 ....
はるは ひたひた湧いてくる
はるかかなたの 地殻の置くから
ひたひたひた
毛細血管を駆け上り
地上にある草木という草木のすみずみまで
ひたひたひた
....
あなたを通り過ぎた風は
凪いで
睫の高さで追いかけていた
ニ歩先の肩甲骨と
くしゅん、と鳴った鼻
とのあいだに、置いていった
指先にのせて飛ばした
内緒のくちづけの形をした
ふ ....
風のゆくえに
はぐれたのなら
含ませ過ぎた胸に手を
どうでもいいと言い捨てるには
あまりに一途な
朝です、
誰も
いつの日も
気がつくためには
やわらかく ....
鏡は自分にだけは
正直でありたいと思った
常に見るものに
反対のことを教える自分に
罪の意識を感じていた
だからせめて自分だけは
正しいものを正しく見たかった
だがそれは
自分が逆さま ....
さくら さくら
あの人を返しておくれ
さくら さくら
私の元に戻しておくれ
さくら さくら
女の業が咲き乱れ
さくら さくら
今宵私は鬼になる
満開の桜の花の下
額に蝋燭 ....
もくれんの 花びらが
舗道に 散っている
わたしに
もくれんは
翔びたいのに
翔びたてず
むくれている 鳥達にみえる
だから
この花びらは
ひとひらだって
....
冷や冷やとする冷たく濃密な乳白色の霧が辺りに立ち込めている
雲と同化している為僕は逃げ場を失った気分だ
吸う空気が水蒸気化して咳き込む
この霧は何処まで続いているんだろう?
兄貴達は ....
宵夢の {ルビ幾年千代=いくとせちよ}の 花見酒
酒に浮かびし 月はかぐやか
宵は酔い 遠見の富士の 静かなる
月に浮かびし 薄桃色の
寒空に あ ....
潮風と過ぎ来し時を背に流すさだめのごとき蒼を開いて
旅立ちの日には必ず響いてた警笛がいまつまさきで鳴る
桟橋に残したサヨナラ遠ざかる振っていた手で面舵一杯
羅針盤果て ....
白く鮮やかに咲きほこる、
一本のモクレンの木の孤独を、わたしは、
知ろうとしたことがあるだろうか。
たとえば、塞がれた左耳のなかを、
夥しいいのちが通り抜ける、
鎮まりゆく潜在の原野が、かた ....
生まれ出る感情は
どこから湧いてくるのか
わからないけれど
森の中の泉のように
こんこんと
形を留まらせずに湧き出して
全身に流れてゆく
ある流れは海のような夢へと
広がってゆく
あ ....
デキる上司と デキる後輩に挟まれて
「まじめに生きてますよ」と 今日も一生懸命な姿だけでもアピール
上司に媚売るぐらいじゃ 出世できない御時世です
胃も荒れて なにもかも悪くなるばかり
....
いまここに
来たるべき夜の紺青は
誰しもの
奥深くに眠る
逃れられない
悲哀の色をして
春はいつのときも
悲しみ覚えたかたちを
おぼろに映すから
すこし涙もろくなる
さ ....
ごめんなさい
ごめんなさい
好きになっちゃって
ごめんなさい
私達は(仮恋人)
ほんとの恋人じゃない
カモフラージュのために付き合ってる
....
薔薇色の大理石の壁
ふりそそぐシャンデリアの光
ペルシャ絨毯の幾何学模様を踏んで
白いドレス姿の君が浮き立つ
言い知れぬ暗みと喧騒の中を
艶やかな笑みとともに君が通り過ぎる
氷を砕き、 ....
公園の砂場で
車のおもちゃが死んでいた
一度も生きたことがないのに
もう自ら動くこともないのだ
近所の庭に咲く
キンモクセイが香っている
今まで見たことのある死体と同じように
嫌な匂 ....
砂時計という名の{ルビ幽閉=ゆうへい}を描くべき色彩に迷い、
指先ひとつで幾度も幾度も
流れをもてあそんで
みる
(ここは、アトリエ・スロウ
(時の許しに並ぶ場所
....
そのヘッドフォンは
わがままな存在と言われながらも
誰からの耳も貸さなかった
自分に流れてくる音楽に酔いしれ
他人には一切聴かせることはさせずに
自分だけの世界に閉じこもっていた
誰よりも ....
やさしさもみんな抜け落ちて
そいつはセーヌの流れに消えた
キリストマリアを引っかいて
破れた爪で十字を切った
....
無数の雪片の一つが僕の熱を帯びた唇に溶けていく
綿雪が降りしきる夜 綿雪が降るさんさんさん…という音だけ聞こえる 暗黒の幽冥
外灯が一本向こうに立っているだけだ
ここがどこだか分からない ....
トキメキを運ぶ春風
心の桜が色めく
幾億回も繰り返して
今年も僕達に
儚い気持ちを思い出させる
着信拒否され
深い川の底に沈む
鍵が架けられた心の扉よ
いつか開け ....
夜の畑の前にふと立つ
まだ種しか植えられていない
土だけの畑
奥の方まで目を凝らしてみても
どこまでが畑で
どこからが空なのか
何の区別もない
ただ真っ暗な風景しかない
けれども畑は命 ....
雨上がりの高尾山
散策の一行は
山を愛するおばちゃんのガイドに
耳を傾けながら
濡れた山道を往く
ある者は
ひとすじの細い茎の上に
寄り添い
束ねられた家族のよう咲く
....
カマンベールを食べ
ロゼワインを飲む
ガラスのように
砕けそうな心
つまらない事に感動し
つまらない事に涙して
耳元でささやいて
つぶやいて
ありがとうは
心の潤滑油
笑顔 ....
心に頼り心で確かめ心で伝える
心が無くなれば宇宙も消える
確かめるというのは常に
その一瞬一瞬でしか使われない
後のことはともかく
こうして二人だけの永遠ができた頃
どこにも君はい ....
泥を かわして
かわして また 泥
すきだとか きらいだとか
そんな難しいことは あとからになさい
もっと ずっと あとからになさい
余裕がでるまで 待ちなさい
陽をあびて ....
山下達郎の「クリスマスイヴ」をゲオから借りてきてMDに入れる
僕は街中でウォークマンで聴く
リピートだ
高さのある花壇に腰を下ろし 僕は来るはずもない君をずっと待ち続けている
今日は ....
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