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{引用=
あなたはやさしい
ずぶ濡れの私を拾い上げ
暖かく抱き締めてくれた
私はあなたの拾い猫
ポツリ落ちる溜息を掬うため
一瞬の寂しさを紛らすため
....
このようにして
夏を取り巻く呼吸は
やがて薄れていくのです
擦り剥いてしまった、膝のような
削られていく私たちを
夏空はどんなふうに
抱いてくれるでしょう
グラスの中の氷は
き ....
夜を乗り越える呪文
古いノートの落書きから思い出す
詠み方を忘れた大人には
雑踏に落ちている足音に似て
あどけなく残酷な
季節を乗り越える呪文
変色した写真の束から探し出す
今日しか ....
うやむやに熔けてしまっていませんか
その夕暮れに
指揮棒に従うことで
いくつの雑音を聞かずに済みましたか
なつかしい歌たちに包まれたい日があります
拒みたい日もあります
....
せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。
ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
....
彼女のハンモックは
ピンク色だったそうだが
僕のハンモックは…
完全な漆黒であり
プランクトンの雪の舞う
蟹のいる深海の黒
練炭より
エスプレッソコーヒーより
悪魔の翼より
....
不思議な声で
鳥が鳴く
梅雨の終わりに
わたくしはその鳥の名前を知らない
ワールドカップの順位表で
トリニダード・トバゴという国の存在を
初めて知った
わたくしはその国の ....
打ち震える涙が、立ちならぶ
忘れられた街景の片隅に、十代の足音を揺らして、
失われた向日葵は、いまだ声を上げて、
古い風の臭いに浸り、
枯れた夏を首に巻いて、
届かない空の裂け目を編んで ....
照りつける夏の陽射しの下
墓石の群を横切る私の地面に頼りなく揺れる影
一瞬 頬に見えた{ルビ滴=しずく}は 涙なのか汗なのか
( {ルビ嘗=かつ}て 一途だった少年の恋は
( 夏の夜 ....
「輪郭はね、大きすぎない方がいいと思うんだ。
両手を、こう。ゆらりと、一杯に広げたくらいの」
朝の電車は
どこかに海の匂いが紛れている
だから皆、溺れた ....
瞼の裏で、
魚が撥ねている。
なんの魚かは分からぬが、
確かに撥ねている。
目が合った。
すると魚の奴は、
ひときわ大きく撥ね、
瞼の水溜まりに消えた ....
ハレーションしそうな圧倒的光量が
雲隠れを始めると
夏はブラックなジョークそのもの
太平洋高気圧は昨日の前線に押し切られて
雨のノイズで水浸しの状態
日本列島はホワイトアウトして
沈没 ....
ぼくは詩人
人は逆境に立ち向かうからこそ
人である
今日もまた
夜の散歩をしていると
激風に出会いました
大地の血液が激しく流れる
その静脈の中で溺れあがき
液体に溶か ....
砂糖にたかっていたアリを
靴で踏みつけた
おまえは家の子ではない
アリの巣から拾ってきたのだ
前の夜、酔った父は言った
群れは乱れ右往左往し
数十匹は難を逃れ
数十匹は幸せな表情 ....
は、真空の一点で凝縮し続ける無言する{ルビ性=さが}である。
仄暗い
道を歩いていると
星雲を繁茂する
一角で
ぽっかりとあいた
湿っている暗闇が
{ルビ濃紫=こむらさき} ....
草合歓の葉陰から
かすかにもえる月を見た
藍青の波間にひかるものは
あれは はるかな昔
指から落ちた曹長石のかけら
青みをおびた涙の石の粒
もしも
月の淵から水音がしても
蠍が ....
真夜中の街
儚い灯りを縫い合わせて
君はいくつも
星座を作ってみせ
物語がわからなくても
知ったかぶりで綺麗だねと
僕は何度も
言うのだろう
地上の流れ星はいつも
赤 ....
ぼくは詩人
願いは夜に
行動は朝に
今日もまた
夜の散歩をしていると
夜の願いに出会いました
夜を織りなす芸術は
尖った心を溶かし
月とともにまどろみ
夢の世界へと誘 ....
服の仕立て屋の看板の前のバス亭から
町を離れる時刻は 数本
昨日の夜から待ってた 朝は
大きな通りに 越えて 来た
牛乳配達のバイクが かちゃりと 続く
家の開けられた窓からは 蛇口 ....
見知らぬ人から葉書が届いた
元気ですか、とだけ書かれているそれに
元気ですよ、と応えてみても
一人の部屋は結局一人だった
置いていかれた
この街も、いつの間にか色が薄くなってきている
....
目の前に置かれた石を
思い切り、蹴る。
弾道は前方に細く長い弧を描き
一面の霞の向こう側にある
無数の「明日」を貫いて
激しい雷雨の日を貫いて
柔らかな陽が注ぐ日へと
....
遠い朝 日に乗るように
長靴が 畑の真ん中に立っています
沈んでいく桃色の光が 靴底で
何人かの村人に 似ていきます
ひそりと ゆえに おもむろに かぜ
駆け出しそうな 針葉樹の ....
ぼくは詩を書きたい
はかなく終える命だからこそ
人は支え喜び愛しみあう
今日もまた
朝の散歩をしていると
命の詩に出会いました
清らな川のせせらぎに
流れる時を浮かべつつ ....
宛てたい心があります
傍目には
いまさらでしょうが
いいえ
いまだからこそ
伝えたいことは簡単なのに
前置きが長すぎて
床に散る便箋は増えるばかり
傍目には
綺麗な足元か ....
午前二時の国道は静かで存在の定義を忘れてしまう
僕の声が遠くに木霊して野良犬が彼方で吠える
明日の兆しは生ぬるい風が吹く方
薄れて行く希望の中で微かに芽を咲かす
その花に名前を付けてあげれ ....
乗り過ごしの君を乗せて都会の
寒いばかりのドアは行き過ぎる
ざらついた坂の向こうで、夏は
君の声を真似て、笑う
誰のものになるか、晴れ向日葵
種を植えたのはふたり、以上で
なりそこない ....
ついに
黒い大群となって
見下ろすか
カラスめ
と
言ってみてもしかたがない
伝わらない言葉は
黒い羽根に遮られ
傍らに
ただ
人の
眠っている
ぼくは詩人
必要なものは言葉になるも
言葉を超える心があるからこそ
必要なのである
今日もまた
夜の散歩をしていると
手紙に出会いました
あなたは人を悲しませ、
人から ....
障子のむこうでは
雨の簾が揺れています
重なり合う影を
私の分だけ
一枚引き剥がして
あなたの流れに
耳をすませ
聞き取りたいのです
....
彼氏は火星の開拓団に参加した
ミリーはグレイのキャミソールを着て
カーキー色のキュロットスカートを穿き
金色の髪の毛をポニーテールに束ねて
ラジオの音楽番組に耳を傾けている
....
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