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朝に
林檎がもがれる
それは
太陽になり
風になり
私のもとへとやって来る
おはよう
ごきげんいかが
と はにかんで
さくりと
歯に当てた
ほのかな酸味
....
西陽が傾いてゆく
風を追いかけながら
オレンジの雲は次第に細長く
なつかしい言葉をそっと隠していった
暮れなずむ野辺は一面の草海
薊の花の谷間に静か
蝶がいる 淡い光のような点が
....
海に来て月の遺骸を{ルビ面=も}に浮かべ
白貝割りて指先を切る
貝やぐら沖に燃え立ち{ルビ蒼蒼=そうそう}と
胸に巣食うは十三夜月
月葬に送り遣るのは{ルビ鸚鵡 ....
草合歓の葉陰から
かすかにもえる月を見た
藍青の波間にひかるものは
あれは はるかな昔
指から落ちた曹長石のかけら
青みをおびた涙の石の粒
もしも
月の淵から水音がしても
蠍が ....