すべてのおすすめ
ほどけた靴紐を結びながら走った
朝はいつも苦手で
腕組みしている先生の顔を見ないように
校門を駆け抜ける
一時間目から六時間目まで
机に突っ伏して眠り
部活だけはさぼらなかった
そん ....
もし愛に辿り着けたら
まずその中の闇を探り当て
もぐり込んで
しばらくは眠ってしまおう
砂浜
貝がひとつ
海の広さ
貝って何年くらい生きるの?
夜道を散歩しながら
人知れぬ夢を呟くと
胸に溢れる想いは
目の前の坂道を昇り
仰いだ頭上には
只 白い月が
雲間から地上の私を見ていた
半年前
オートバイに乗ったお爺さん ....
犬になりたいと願ったことがある
大きくてまっ黒い犬になりたい
バカで舌だしっぱなしだったりして
まっ黒い服をきたひとに飼われるのだ
静かな家で
僕はよく眠るだろう
そしてバカみたいに愛して ....
幸せは一杯の紅茶
飲み込めなかった昨日の苦さに
{ルビ一=ひと}さじの砂糖を溶かす
幸せは真昼の入浴
日常の{ルビ垢=あか}に汚れた{ルビ心身=こころみ}を
泡立つタオルで浄い ....
少女は高い{ルビ椅子=いす}に上ろうとしている
小さいお尻をどっかり下ろすと
食卓には色とりどりのご馳走とデザートが並んでいる
食べ終えると飽きてしまう少女は
物足りず他の何かをき ....
浴衣を着たこどもなのでした
まだ菜種梅雨も過ぎぬというのに
二本の鉛筆のように突き出た裸足は
春泥にまみれているのでした
これあげる
こどもはあかるい声で言いました
小さな手に握られて ....
ねえ、ブランシュ、
あのとき
あなたが越えようとしていたものがなんだったか
今のわたしにはもう
それを知る手だてもないけれど
あなたはいつも わたしの
理解の範疇をこえて
日常のただしさ ....
今日が、一日になる
間に合わせの爪先を
朝焼けの海に潜らせる
寝息を、街は敏感に拾い上げていく
遠く聞こえる海鳴りのようだ
*
ただいまやおかえり、よりも
届いて ....
インディアン・パークに行こう
インディアン・パーク、インディアン・パーク
老若男女みんなが大好きな
インディアン・パークに行こう
手に口をあてて
アワワワとインディアンの真似をしよう
イン ....
長い洗濯をしていると
パンツもシャツもくつ下も
きれいになって
空を飛べるようになる
洗濯の匂いが土にしみ込み
そして全ての建築物にしみ込み
青い空で見えない
全ての恒星にしみ込んで ....
幽かなる種の話
そわりそわりと忍びこむ
小さく微動している夜の心音
紺碧の深さに丸く亀裂が走り
静かに芽吹いてゆく密かな呼吸
たらりたらりとしな垂れる
遠く木霊している風の鮮血 ....
遠くに真っ赤な窓が見える
紫色の夕暮がだんだんと深い灰色になる時間に
遠くに見上げる団地の窓が
ただひとつ真っ赤に染まっている
僕とお前はその窓を見上げて
ゆっくりと二つのカゲボウシにな ....
あの手紙を
風に託したのは
去年の秋のこと
あのとき流した
涙の理由
忘れたふりして
送った月日の重たさも
体の一部にしたけれど
それも性分なんだと
開き直れば
今、吹く風の行 ....
一昨日
夕食を待ちきれず
ピーナツをひと袋
ぼりぼりたいらげたら
腹をくだした
昨日
{ルビ無精髭=ぶしょうひげ}を{ルビ剃=そ}り忘れたまま出勤し
一日青白い顔で吐き気をこら ....
たまねぎパリリ
皮をむいて刻みます
おきまりで涙が出ます
ついでにすこし
泣いてみます
じゃがいもクリリ
むいていきます
船乗りになった気分で
いくらでも
樽イッパイ ....
午後の日差しに翻る白いスカート
柔らかな髪
思えばあれは初戀だった
名前も知らぬ年上の彼女
消え入りそうな細い躯を
ただ目で追っていた
古い映画を観て、ふと思い出す
もう顔すら ....
心にはなな色の種
宝箱へしまわずに
とびきりのお花を
蒼い哀しみひとつひらき
怒りの紅ふたつ咲き誇る
ピンクな喜びみっつ綻び
美味な黄色蒲公英よっつ
今日に爛れた橙いろ五 ....
団地の掲示板に
吊り下げられたままの
忘れ物の手袋
歩道に
転がったままの
棄てられた長靴
{ルビ棚=たな}に放りこまれたまま
ガラスケースの中に座っている
うす汚れた ....
{ルビ朱=あか}くて小さなさかなの
息のように
そっと触れた
てのひらから
あなたを呼吸する
ほんの少し
の温もりが意識を
わたしに繋ぎ止め
る、わたしの体温
....
生きる意味に悩んでいるなら
悩んで悩んで悩み抜いて
大いに苦しめばいいよ
それでも君は幸せなんだから
今すぐにでも死にたいのなら
遺書のひとつでも書いて
とっとと死ねばいい ....
路地裏の台所
いつも泣きながら言い訳を調理する
どこに傾いても、コンセントに差し込む場所が見えないので
とりあえず玉ねぎを切っていた
ということにしてみたい
*
電子レンジに生 ....
どうにかなるさ、とか
ノートの隙間に落していた気がする
過ぎたことを半分にして
明日の方へ送りたい
繰越し続けてあぶれた一日は
最後はどこへ行くのだろう
上手く折り返せない水曜日に
....
ブルガリア
ローズ・オイル摂取する
あなたとならば
触れ合いたいのよ
手を繋ぎ
じわり濡れゆく
感情線から恋愛線へ
薔薇香水は
流れ 流れて
黄 緑
....
喫煙所に近づき
しゃがんで声をかける
「 調子はどう? 」
{ルビ煙草=たばこ}をふかす R {ルビ婆=ばあ}ちゃんは眉をしかめ
「 調子悪いねぇ〜・・・
明日は歯医者
....
春が
はるが
傘の水滴に溶けて
声も密やに
幼いまるみの春の子に
子守唄を聴かせる
まだ固く木肌の一部の様子で
繚乱、を隠した蕾は
雨にまどろみ
陽射しに背 ....
腐ったリンゴを上手に切り分けても
誰にも食べてもらえない
手の中の熊蜂
うるさいわ。
黄色い布張りの
銀色の装丁の本
ある文字だけ黒く塗りつぶされている
「エチカ」
そうい ....
蔦の絡まる瀟酒な鉄骨のアパルトマンの朝は姦しい
おくにことばが行き交って
美味しいゆげが湧いてくる
毎日どこかのお部屋から
喜びのうたがあふれ出し
ある部屋のかた隅からは
....
体じゅう
寒気が
激しい朝
詩がとどく
さむいのに
雨なのに
書いたひとの気持ちが
きれいな色が
入り混じって
ここまで
とどく
チョコレートを
私はスペインの
よく冷え ....
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