すべてのおすすめ
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。」
それが母の口癖だった。
嬉しいことがあったときも、
悲しいこと ....
高層マンションの谷間に
ひっそりと公園
そこだけは昔のまま変わらずに
闇の中に
ぽっかりと
術後麻酔のなかで
すべてをかけた無意識で
あなたがいま
探しつづけている
あなた自 ....
疲れ果てて座り込んでいた
あなたは
公園のベンチで
まるで影が貼りついているみたいに
立ち上がることができないほどの
そんな悲しみでした
いつしかそれは
頬つ ....
甘くない珈琲を
手の中で
大事そうにしていた
猫舌だと言って
大事そうにずっと
両手の中で
十二月に降る雪のように
ま ....
玄関に立っていたのは畳だった
今日は暑いですね
そう言うわりには
畳なので汗ひとつかいてなかった
畳は座敷に上がりこむと座し
良い畳ですね、と手で撫でている
それからいくつかの世間話を ....
あ、
あ、鳩の
光、銀杏の
光、それらの
光
ぱた、ぱた、
一時的な昼下がりが
水銀の微粒子の鳩として
アスファルトの日向へ、群がり
アスファルト ....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
君からもらった
たった一通の封筒は
古びて黄色く灼けてしまいました
その中に大切に抱かれた
数枚の便箋も
古びて黄色く灼けてしまいました
今にも崩れそうな酸性紙の上
ボールペンの ....
捕まえてごらん
物事の本質や中心は
あっけなく
そっけなく
鰻みたいにぬるりと
その手から容易く逃げる
亀を捕まえるように
簡単にはいかないんだ
夢から紡いだ淡い期待を束ね
双の棒針で器用に操る
操る毎に淡い期待は確かな予兆に変わり
なまめかしく揺らめいて
蠢いて
少女は艶やかな女人となる
月の満ち欠けを赤い細布で数え
確 ....
雪ばかり融けずにいる
針が突き刺したような
星夜の暗闇が恐ろしいのです
あまたを溶かすはずの暗闇が
かすかな影のいいわけを
裏切るのです
ひどく凍らせる結晶に
張り付いた切り絵を ....
公園へと続く夜道の街灯に照らされて
{ルビ百日紅=さるすべり}の木は裸で独り立っていた
枝々に咲かせた無数の桃色の花びらを
過ぎ去った夏に{ルビ葬=ほうむ}り
樹皮を磨く北風に じっと口を ....
君の瞳の中の僕が微笑んでる
人影のないベンチ
君にKissしても
僕は、制度に脅え
泣くことも出来ない
全てのモラルに傷つき
切り刻まれても
愛は守り続ける
....
隣の白蛇が、
皮を脱ぐ。
彼は失恋すると、
いつも絶食して、
いつも脱皮する。
センチメンタルなのだ。
脱皮する少し前から、
蛇の目は白濁しはじめる。 ....
ボクは外側がボクである
ヘヤは内側がボクである
それがボクとヘヤとの
相違点
冬の夕暮れ 老人ホームの庭に出て
A {ルビ婆=ばあ}ちゃんと若い僕はふたり
枯葉舞い散る林の中へと ずんずん ずんずん 進んでく
「 A さん、目的の宝物がみつかりました・・・!」
....
冬の空のしんとした質感に
しなだれる肺のたおやかなこと
木枯しに枯れていく太陽のもと
不透明な雪の結晶となる重さを
熱く呼吸して火照る
湾曲している波に共鳴する
空との境界で
風 ....
彩りが白く染められ
輝きが覆い尽くす
秋に重ねるから美しい
君の
季節に染まったほおに
想いが重なれば
雪景色のように
清らかに美しいだろうか
それとも
ただ ....
僕のからだの内燃機関は
なにを動力にして
ここまで
走らせ続けてきたのだろう
西日はいつも眩しいね
僕の手が掘り出したいものの
手がかりを
きっと
西日は知っている
....
聞き慣れぬメロディーが
不意に耳を訪れ
きみのケータイを発見せり
外出先で気付いたろうか
今の電話は急用かな
届けてほしいと言うだろか
どうしてくれよう
白いフレームが
こっち ....
目には見えない「現実の壁」に敗北して
言葉を失いしばらく立ち尽くしていた僕の背中は
やがて青空からの{ルビ息吹=いぶき}に押されて
いつのまに
古時計の長針と短針がゆったりと逆回転する
不思 ....
花の名前を知らない僕は
きれいな花を見つけても
誰にも教えてあげられない
植物図鑑を一冊買って
花の名前を覚えよう
いつ芽が出て
いつ花が咲くのか覚えよう
小さな庭に種をまい ....
僕の部屋には大きな貼り紙があって
窓と名乗っている
ときどきそいつをはがしては
あっちへ貼ったり
こっちへ貼ったりして遊んでいたのだが
ある日ふとしたはずみに
僕の胸に貼ってしまった
....
世の風に流され
秘め事を{ルビ懐=ふところ}に隠し
灰色のコートを羽織った背中を丸めた男の後姿が独り
世の風に{ルビ抗=あらが}い
闇の向こうに見える光へと澄んだ瞳を向け
空色のシャツを ....
ひとり立ち姿
死んでいるように
つぶやく灰の後ろに映る
星の塔が旋回してから
七色のアーチをくぐり
一瞬する視界の腐蝕する太陽へと身を焦がす
失えるものなら失ってみなさいな
零の ....
他人に優しいって事は
自分にも優しいって事かな
君に優しい顔を見せるたびに
僕は自ら犯した罪を
古いものから順に消し込む
過去に犯した罪を贖う為に
君の気侭な振る舞いにも優しさ ....
薄荷煙草の火も消さぬうちに
十二月が階段を上ってきた
(マフラーの準備をしなければ冬は来ない)
身勝手な先送りを
誰か聞き届けるはずもなく
暦の挿し絵は 赤 緑 白
聖 ....
つながっている
(
青く透けた日の光が
結晶となってふりそそぐ季節
つめたい雨は 灰となってしまった
存在している私
無くなる。
空から堕ちた秘密が
虚ろな視線で風を呼ぶ
無神経 ....
{引用=
ねぇ、サザえさん
あなたの住む町の
空はいつも青空で
夜空には必ず星が瞬いて
ご近所さんは誰も親切で
悪人なんて大して悪人じゃなくて
ねぇ、サザえさん
人目を憚るようなわ ....
「世間」と言う濾過器を使うと
見えてくるのは 他人が知る「自分」
「日常」と言う濾過器を使うと
見えてくるのは 自分が知る「自分」
「不可知」なる濾過器を使えば
そこにいるのは 本当 ....
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