すべてのおすすめ
学校を卒業して
実家に戻った君から
普段と違う調子で
不意に電話が入る
ずいぶん遠い町に住む君と
昨夜同じ受話器から
おやすみと言ったばかりの僕は
醤油の有名な町で
働き暮らしていた
....
彼は今迄何度も転んで来た。
愛に{ルビ躓=つまず}き、夢に躓き、
恋人の前に躓き、友の前に躓き、
鏡に映る、自らの{ルビ滑稽=こっけい}な顔に躓き、
振り返れば、背後に伸びる
長い日 ....
いつまでも気付かなければ良かった
と思うことがある
熱帯夜の寝苦しさに目をふと覚ますと
わたしの知らないおとこのひとが
わたしの横で寝ていて
二つ並んだお揃いの枕と
ふたりで寝るには狭いベ ....
戯れる森の雫が、
ひとびとの拍手のなかで、静かに横たわる。
あなたの流れる姿が、
森の節目に、厳かに薫り立つ。
標高をあげている森は、
巧みに感度を敷きつめて、
わずかに彩色を動かしな ....
ぼくは詩人
時は動き
明日へ未来へ
つねに今は変わる
今日もまた
夜の散歩をしていると
時の動きに出会いました
ようやく雨が上がった夜
湿り気を多く含んだ空気が
肌寒 ....
そのとき奇跡を初めて信じた
この世に無駄ないのちの誕生はひとつも無いのだ
あっ、食べたね
その肉はさっきね、
やわらかく やわらかく揚げたんだよ
ああ
カリカリのドッグ ....
打ち捨てられてそこにある
朽ちたピアノ
横たわる私
ぽろんぽろんと
雨音と共に
雫が鍵盤を叩く
音色が世界を包むとき
雷が悲しみを切り裂く
思いはどこへ
姿なき君の手をとり
ぬかる ....
{引用=
家中の窓が閉ざされても
あなたの庭を暖めている
秋も冬も陽差しをあつめて
あなたの庭を暖めている
大きなお世話と言われようが
ずっとずっと
わたしはあなたの向日葵でいる ....
夜のアスファルトと
それに密着してゆく夏と雨とへ
車の落とす赤が付着しては
ひゅっ、と
離れてゆく一秒一秒、その風に
肌寒くなれる体の、少女である体の、わたしが
....
ぼくは詩人
未来に憧れ原始に憧れ
現在を生きる
今日もまた
夜の散歩をしていると
原始に出会いました
街灯がない夜の道
そこは何億年も前の夜だった
葉の広がった草が ....
魚類図鑑を開き
少年は魚になった自分を
想像する
エラ呼吸の仕方が
わからないので
いつも溺れてしまう
遺書は
鳥類図鑑に挟まれている
夏空の飛び方なら
誰よりも詳しく
知って ....
覚えていますか あの国道を
場所のことではなく
名前のことではなく
もう二度と通ることのない
あの
国道のことです
向日葵の頃には
とても眩しいものでした
容赦のない陽 ....
今年もまた 原っぱに
レンゲ草が一面に咲きましたよ
レンゲ草は
その真っ白なすべらかな姿を
揺らしています
中華料理店のトラックが
止まりました
レンゲ草をごっそりとっていきまし ....
シャチを吐いたなどとは
とても言えぬ
あの白と黒の
愛しい人 日傘で待ちます
私はいるから 死んだ後でも
ここにいるから ....
{ルビ異花=ことはな}の{ルビ雲夜=くもよ}にしんわりんと咲き
翼よ
きみはなぜ
はたたくのか
熱く青くはためくからだ
その空間を根幹となし
風の性霊を動力とするためか
花 ....
じゃあ あたしは何なのよ
そう言う沢子の声を
尻を掻きながら聞いている
ジャガリコはとても美味しい
でも沢子なんて女はいない
じゃあ あたしは何なのよ
そう呟いている自分
そう呟いて ....
はじめて海を知ったのは
函館山の東側、岩だらけの海岸でした
あちらこちらに見える対岸の
私との間は早波で仕切られ
たくさんの潜水艦が行き来しているのだと
おじいちゃんに教わりました
次 ....
夏ひらく夢は
空に爆ぜる大輪の花
ほんのり蛍の揺らめき
風孕むびいどろの澄んだ音色
今を鳴ききる蝉の声
儚く琥珀色に透ける抜け殻
明けていく毎日の残像
たとえば
いま、ぼくらがみまわれている不幸とういうものの正体が
医者達のあきらかな過失により生じたと
ぼくらが
つよく
つよく
信じたとしても
それはそれとして
ただ
ただ
にこや ....
あなたが、水かさを増す
「では、また 」
と 言って
あなたが身を反らして
木立から、わたしから
離れていった
その刹那から
あなたが、視界でいっぱいになる
あなたが、
....
月のようでもなかった私は
君にうすぼんやりとした影を
もたらしたり
することもなかった
輪郭を
持ちはじめた気持ち
境界を求めてはいけなかった
あいまいなまま
分針が何度、 ....
豊かなだけの想像力なんか俺はいらない
そう思いながら自転車専用の真っ赤な道を歩いていたら
後ろから
すけぼーで
いかついリーゼントのお姉さんが
ざっ
と通り過ぎた
首筋には漢字で ....
ぎざらめな夜に
公園の外灯で
待つ宵草の照らし出され
冷たいお茶を
とくり
とくり
間もなく携帯が鳴る
僕の悲しみに花が咲くよ
ぼくは詩人
何を感じて何を想い
何を感じようとして
何を想おうとする
今日もまた
夜の散歩をしていると
鈴の音に出会いました
今日のこの夜の道で
いったい何を聴くのだろ ....
絵はがきみたいな花丸正しい夏休みには
入道雲と蝉の声と蒼い海の三点セット
空と大地をパッキリと分ける入道雲は
どこまでも大きくまっしろで
桃源郷までいける螺旋階段を隠す
蝉はサイレン ....
飛び込むと
その先には砂漠が広がっていた
課長がいて
砂粒をひとつひとつ数えていた
課長
声をかけてみた
砂漠では名前で呼んでください
と言われたけれど
課長は課長だったので
知 ....
1997/03/19
もうじき刈り入れの始まる一面の麦畑の中を、
パラソルをさして散歩するのは誰かしら。
ミラージュ戦闘機のように、
....
どんな蝶でも蜜を求める花に
好き嫌いがあるように
あなたの望む花と
わたしのなりたい花には
どうしても相容れないものが
あるのかも知れない
たとえば地味目なおんなのひとがいて
百人のおと ....
車輪の下という小説が売れるので
透明板ガラスを溶融
車の下敷きという文房具を試作する
『凸凹になった波形は
薄い光が虹色に染まるまで
何度も何度も重なって
麗しいハーモ ....
夜に、時々の夜に
震えるほどに凍えてしまう私なので
留まるために何度か
君を殺したことがある
深い深い、寝息
子守唄はいつもどこから来て
どこへ行くのだろう
私たちは何が怖くて
寄 ....
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