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海の中で生まれた気がする
始まりは遠い手のひらの中
重ね着をして、重ね着をして
風邪を引かないように眠っていた頃
どこへでも、の世界は
指先まで暖かくて
つまずかないように歩けば
いつま ....
そっとかわいてゆくならば
あと すこしだけ
(でんわのおとで目をさまして)
(それからゆっくりと足の裏をつめたい床へ)
(ひた ひたと)
おきてがみの温度は なまぬるく
....
毎年几帳面に
庭で鳴く虫たちも
ただ手をつくねているのではなく
住みよいほうへ
住みよいほうへ
移動しながら
運を天にまかせて
鳴いているのだろう
こんな十五夜の晩には
いつまでも
置き忘れられたような
宿題のような生活だ
いつまでも焦っている
逃げるように眠る
鳩が鳴いている
静かにメスを入れられる時間
過去はえぐりだされた
歌います
感情 ....
ほがらかに歌う
春
ではないけれど
やわらかい
そのような、
声
やさしい人
やさしい
易しい笑顔 と
きらめく
すこやかな、
絶望
人を花にた ....
今しがた
煎れたばかりの紅茶は
口をつけないまま
冷たくなって
湯気をたてることも
香りが揺れることも
なくなっていたので
カップの上から覗いてみた
ふたつの瞳が私を見ている
ティーポットに
熱い ....
たった今
沈んだ太陽と
入れ替わりに東へと
十五夜
最も
輝かせるために
180度遠くに立った
雲も寄せつけず
風も追いつけず
ただ美しくあるために
冷たいくらい
....
彼女という人は
詩人とかそういう類の人みたいで
ときどき僕を近所のファミレスに呼び出しては
伏目勝ちにちょっと小難しいことをしゃべり
左手に持ったフォークでグリーンサラダにやつあたりし ....
私の目の前に広がるのは
どこまでも続く
絶望という名の砂漠
全てをさらい飲み込んでいく
変わらない物など何一つなく
全ては私を裏切って消えていく
私はただ死に場所を求め
彷徨い続ける ....
最終バスは一番後ろの席に座るのです
何となくそれが習性になっているのは
そこからは町の様子がよく見渡せるからです
蒼い街灯の下でたたずんでいる
停車場の表示を運転手は調子よく
鼻歌まじり ....
お散歩に行きましょう
今日も歩けるしあわせ
草の香りが立つ道を
踏み歩いて
香りをすぅっと
吸いこむと
幼い私と手をとる父
横を歩く
いつか
子供に私は話す
父と手をつ ....
夏のごみ捨て場
金網のなかに
積み上げられた袋
その間にさまざまな模様の猫が
五、六匹寝そべっていた
手にもった袋を捨てようとして僕は
猫が食べちゃまずいものが入ってないか
ちょっと ....
はまに まわした よめいの かりごま
なげる てのなみ くるわす つきやみ
ささぬ あかりに さしつぐ いっこん
らがん ちりうつ こぐだて わるむね
のどに はしゃぐ みめいの
つきの すずか つむぐ かるた
まわる やまの はるか さます
かやの ねむり まどう むごん
みちぬ おもい ゆきて きえる
かえぬ こころ ぬぐう ....
季節は一冊の本にまとめられ
秋の頁をめくりながら
月明かりの下
あなたの言葉を
思い返すのです
秋の頁はとても長く
多くの言葉で
埋め尽くされているはずなのに
めくってもめくっても ....
銀色の刺に、凍える、空気は、
青い空の下で、
白い、息をつき、声がもれる、
頬の骨に、拳が石のようにあたる。
わたしは、
バラ線を後ろに、殴られる。
放り出された、ランドセルの黒い光。 ....
もう一度
その無数の紅く小さい花々を闇に咲かせたシャツの下に
酔って赤らんだ白い背中で
僕に{ルビ凭=もた}れてくれないか
なぜ
君の背中のぬくもりを
もっと素直に感じなかっ ....
他人を批判して
自己を正当化することは
とても容易い
ところが
詩を描き始め
自分を少し管理できるようになると
正当化どころか憂鬱になる
他人を批判することは
とても難解だ
....
筆圧の高い私は
消しゴムで消しても
けしてきえない
言葉を持っている
ただ
その消えない
言葉は わたしの胸の奥にしかないので
消して消えない言葉だということを だれも知らない
....
人間が
犠牲の上で生きるように
世界は
戦争の上に幸福を創れる
そう独り言じみて呟き
少し
自虐的に笑って見せて
貴方
虚ろな目を伏せたから ....
夜空にはウシが瞬いていた
草原では干しが干からびていた
もう一つ出まかせを言おう
この袋には伝えきれないほどの
星が詰まっている
飛行船のように女は笑った
名前入りの口紅があるんだって
彼女の憧れのスター
ふっと 話し掛けると
知ってる と 真剣にみる
友達が注文するって 言うと
お願いだから私のぶんも と
一緒にすることにした ....
「ぶち猫も欲しがってら。」
ばあちゃんの言うとおり、窓の外で三毛猫が
僕らが食べる蜜柑の行方をじっと見ている。
けれど本当に三毛猫が
蜜柑を欲しがっているかは知らない。
一体全体、僕は(きっ ....
パーティーは散々だった
おやすみ、のあいさつの方角へと
だいだい色のシロップが
ゆっくりと流れて
しだいに
粘性を増してゆく、
夜の
水の底で ゆうべ、まき散らされて
わたし ....
あなたの
てのひらには
いつも
虹が
あふれている
炊飯する
ごはんはきっと海苔で巻かれたい
秋刀魚焼いてみる
秋はその辺りでちりじり色つきはじめる
お米は海を知らない
秋刀魚は畝を知らない
けれどもぼくは知っている
そこでぼ ....
腐った葡萄を投げ捨てろ
国道あたりに投げ捨てろ
トラックの車輪ではじけて
アスファルトに染みこんで
どす黒くかたまってやがる
(ああ、デラウエア・巨峰・ピオーネ!)
....
こんこんこん。
と、
扉がいったので。
とんとんとん。
と、
返しました。
外に出る。
と、
誰もいませんでした。
....
幼い頃に覚えた童謡を口ずさんでみれば
なぜか悲しい気持ちがわいてきて
もしかしたら
うたの歌詞が悲しいのかもしれないと
確かめるように繰り返してしまう
夏と秋のさかいめは
きっ ....
どこからかまた盗賊が来て
盗んでいった
かまぼこ板だけなら良かった
かまぼこまで盗まれたら
僕ら家族はかまぼこを食べられない
子供たちは泥棒さんが来た、と大はしゃぎし
とりわけ下の子は ....
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