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君のいた夏が終わる
故郷を知らないという君が
旅先で描きためた風景画、
古びたスケッチブック
迫る山並み
水田に映る空
夕暮れの稜線
風に ....
きれいにいきること
ゆめをひきつけること
赤い靴とおどりつづけること
こ
と
こ
と
こ
と・
・
・
....
買い物袋から
オレンジが転がったのは単なる偶然で
私の爪の端っこに
香りが甘くなついたのも単なる偶然で
果実が転がり出さぬよう
そろりと立ち上がった頭上に
飛行機雲を見つけ ....
曇った窓ガラスに
家の印をつけて
それから
母の勤めている店の印をつけて
でたらめな道でつなげる
窓が汚れるから、と
後で怒られたけれど
それがわたしの初めて描いた
世界地図でした ....
それはすてきな
なつのそらを
かついでかえったのに
いない
なつくさのみどり
たっぷりと
しみこませたのに
いない
さっきとったトマト
しおかけて
きゅーっとうまいのに
....
少し湿った空気のせいにして
ずっと見つめていられない
まばたきするのと同じ一瞬で
咲いては散る火の花は
たくさんの星を集めたように
火薬の匂いをひいて流れてゆく
ほら
星が夜空に ....
知っている曲が 途切れて
知らない歌が とぎれとぎれに
髪の先 さわり ふれる
冷蔵庫にジュース
飲みたい けど
動きたくない
どうやってたんだっけ
時間て
なんて
数えるん ....
な をよぶ
とき が隔てた
かぜ の かいろう
打ち
うまれた のろい
すくう ゆめ
わ 火焔
走 破
白き 鼓動
水 と 灯る
2003 4 20
深夜二人で食べるさくらんぼ
みずみずしく甘い木の実は情熱の赤
とろりとした思いを胸に
黙ったまま次々口へ運ぶ
一箱分のさくらんぼ全部
積み上げられた種と茎は 明日庭へ埋める
膝 ....
ああ、旅をしているんだな。
揺れるクレマチスの青い花。
ああ、ひとりでいるんだな。
夏が、終るとするにおいが、
今日はしているのだけれど、
どうしてなんだろう。はて、
どこへ行こうとしてい ....
柔らかく黒く夏で濡れている子供達の髪の毛の
美しい経緯を追い過ぎた眼の私は
くら、くら、
平衡感覚がたわみ
色彩感覚があればいいと思った
色彩感覚があればいいと思った
身体の、 ....
電車を待つ人々が
いっせいに
携帯を開く
今日の株価を確認する
プロ野球の結果を確認する
誰かとの 距離
同胞メール
という
機能が嫌い
いっせいに
私の孤独を送信する ....
台風が近づいてくるという
天気予報通りに降りだした雨に
慌てて部屋の窓を閉めました
(淋しさというものは
そんなささいなところに隠れていて)
窓の外から聞こえてくる雨音を
半歩遠 ....
いくら温めても孵らない夕暮れに
灯りはじめた明りが視線にぶら下がっている
帰り道を間違えた私は
街角を覆う木の下で傾くようにして
蝉は鳴かない
明日への蓄えを手のひらに溜めるようにして
燃 ....
指先なんか不器用でいい
鍵盤が求めるものは
迷いを持たない、その
指先の重み
ねぇ、
清らかな雨の注ぎに
いつまでも耳を傾けていたいの、
私
おはよ ....
日に焼けた古びた手は
私の知らない
たくさんの出会いをつなぎ
また別れをもつなぐ
いろいろな色の数珠
ひとりひとりの私連珠
ふるえる手で
なぜか
繊細な作業を
つづけてゆ ....
初めて道を歩いた人はどんな人だったろうと
ものすごく高尚なことを
考えていた朝であったけれど
眠ってしまった
目が覚めてしまうと
体中にぐるぐると包帯が巻かれている
木乃伊取りの夢なん ....
レモン水一口飲んでいる間に
地球が生まれ
消えていきました
桜がとてもきれいだったので
あなたに伝言を残そうと思いました
見たこともないさよならを
毎日つぶやいているうちに
つめたいそれは温度をもって
かわいたそれは潤いを増して
かなしみに包まれたフィルターを
たぷたぷと揺らしながら
ぼくを爆破した
見 ....
グラスの縁を滑り落ちる
雫のまるい膨らみの中に
千切りそこねた夏景色
麦藁帽子の少女の幻を閉じ込めて
氷の欠片をもてあそぶ指先の
すこし伸ばした爪は
太陽と同じ色に染められて
行き場 ....
僕の「はじめまして」と「さようなら」は
イコールになっただろうか
なんだか「さようなら」ばかり思い出す
僕は1年前
君に出逢った
君のことが好きになった
心から ....
花のひとひらが
枯れ葉を追っておちる様に
それはとても自然なことだよと
あなたは言った
白いカーテンが窓の外へとたなびくのに誘われて
....
ふりふりふり っと
どれすの すそを
ゆらして
まるい
ぼうるの なか
きのせい かなー
うわめづかい
きのない ふりして
さそってる かなー
そとは
....
深くまでつづいている
いつか見失った道の先にある、森で
夏の日
ぼくたちは、生まれた
頭上には空があった
ぼくたちと空の間を通り過ぎてく風があった
ふりそそぐものは、光
光とも見 ....
きれいな音楽だとか
物語が
ささえになること
ぜんぶひとから生まれたなんて うそみたい
ひとは まだ じょうずに好きになることができない
うけとめる心の
線の細さは
....
雨が降っていた
暗い門の下で
男が三人いて
僕がその一人だった
門の先に続くのは
センチメンタルな山道だ
雨が小降りになってきたので僕は歩き出す
男が「大丈夫かなあ」と言っている
....
皮膚が邪魔だ
熱だけが祭りのようで
街灯までが青白く貫く
ああ、皮膚が邪魔だ
この世界と私を
容赦なく隔てる
この外套を捨て去ってしまえば
多少は見苦しい液体を
ばら蒔くかも知 ....
君がぽかんと口を開けているのは
口の中で風が吹いているからだ
その正体が何であるのか
問う方法も知らないまま
ある日突然に
君は君であることに気づくだろう
そしてそれは
君が君で無いこと ....
わたしは宇宙人を見つけた
自分でそう言っていたから
たぶん宇宙人なんだと思う
宇宙人はロックバーのトイレで煙草を吸っていた
フロアが混みすぎていたからだと思う
ずいぶん痩せているから
....
身体の自由を奪われることと引き換えに
過去の重荷をどこかへ置き忘れて
少しづつ解き放たれていく
その手を見ればわかる
長い年月を耐えて踏んばって
あなたは生きてきたのだから
ちょっ ....
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