すべてのおすすめ
夕闇の
あの色が好きです
切なさをひとつぶ
いとおしさを一粒
弄んでは
つぶすたびに
広がってゆく葡萄色
甘いあまいのは
街の匂い
あなたとはぐれた
秋の匂い
五 ....
きりきりと張られた
暗い夜道
向かう音のない雨
片側だけで 聴く耳
もうひとつの行方
舗道を流れる
外灯の明りに
寄りすがり
つぶてに 落とされた 蛾
パタパタと 動か ....
遊ぶために生まれてきたんだ
それだけだ
それが人間だ
仲良くみんなで遊べばいい
それなのに俺はここ最近
とらわれてる
檻の中に
自分の模様に
なあ月が
見え ....
魚の名前や花の名前に似ているけど
それとは違う言葉
直線ではなく曲線にも似ていない
それでも閉じている言葉
数え切れないそれらを
生み出しては忘れ去り
墓標をたてては
思い出と気取っ ....
のら犬がいた
そいつは
安全な距離を保ちながら
一生懸命に
オレを吠えた
かるく
しっぽが揺れていた
もとは白かっただろうに
よごれた茶色が寂しかった
砂利道にし ....
どこへおいきやすの。
ほらあんた、
あんたですがな。
どこへおいきやすのか、
ちゃんとゆうてみなはれ。
ゆえへんのか、
ゆえへんのはどのくちや、
このくち ....
波や風は待つものなのよ、と
長い髪を旋律で
砂浜の反射が切り抜いて
細めた視線の届く先に
僕の胸は高鳴る
星座盤の小さな窓から見たように
君のことを知ったかぶりしていた
そんな気がすると ....
いつだって遥か遠くを
見つめていた、正太
本当はそんな名前じゃないのに
誰もがそう呼んでいた
*
学校へ行く途中
平然と菓子パンを買った、正太
朝飯なのだと、悪びれず
無造作に ....
お花畑に火をつけて
全部燃やしたら
火はどんな色だろう
どんな匂いがするだろう
甘い蜜に群がる虫も
燃えるだろう
めらめらと
静かに花畑は
灰になってゆくのだろう
海に火をつ ....
郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね ....
夕映えに長く伸びた影の
手足のしなやかに動くのを
美しいと見惚れた
サッカーボールが弾むたびに
視線が鋭く光るのも
伸びかけの髪をかきあげて
おどけて笑う口元も
....
ときには
顔を真っ赤にしながら
たくさんの風船を膨らませてきました
割れたものも
木の枝から離れなかったものも
見知らぬ空や海の彼方へと流れたままの
ものもあります
が
それは ....
はじまりは
突然ではなくて
地面に染み込んでいく
雨の速さに似ている
背後に潜む
稲妻と雷鳴の予感
と、その準備に追われる頃
夏の気配はすでに
私の踵を浮かせ始めていた
色濃 ....
レモングラスの川べりから
青い星座を辿ってきたのですね
稲妻をたたえた雲は
あと少しで追いつくでしょう
細いボトルには少しのお酒が残っていて
薔薇の庭にぐるりと張り巡らされた柵
....
排気口に 流れて行くために
従っている 繰り返し
とられた息
ためた息
去れば野にささやくものが
指
目
噛み締めるものに 寄り添って
信じそうなあぶなくないと信じそう ....
教えてほしい
あの空の青みの
ほんの隙間の翳りの中に
何を見いだし詠うというのか
たおやかに流れる川の
水底に沈む
ひとかけらの悪意を
掬って頬張った
その後の嗚 ....
君は控えめに微笑む
今僕がここで笑ってもいいのかなって
君はそぉっと思いやる
おせっかいにはならないかなって
まだ
子どもの大きさしかない君は
その内側で
広 ....
私 帰るから
駐車場で 車に荷物を入れている 夫に
私は 口走っていた
何か言ったか とふり返った時
もう 走りだしていた
このまま 新居になんか行きたくない
結婚なんてしなけ ....
水が割れるのです
いま
指先の銀の引き潮に
水が
割れるのです
うなじを笑い去るものには
薄氷の影の匂い
たちこめてゆきます
たちこめてゆくの
です
紫色の ....
木、その大きな直立
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけが
音でよかった
根元に座って
レンガらしいレンガばかりを
レンガと呼び
それ以外のものは ....
一羽の鳥が空をゆく
わたしには
その背中が見えない
いつか
図鑑で眺めたはずの
おぼろな記憶を手がかりに
爪の先ほどの
空ゆく姿を
わたしは
何倍にも引き伸ばす
こんな ....
自転車から転げ落ちた
右の頬の痣と 切れた唇
またそんなに酔っ払ってさ
殴りあう暇があったら
海を見な
切れた唇に
寄せる さざなみ
笑い声は
痛いこともあって
七色 ....
背景のない明日が
夕暮れを透かして見えそうな頃
閉ざされてゆく今日が
夕闇にかすんでゆく
そんな当たり前のことに
淋しさや儚さを感じるこの心
あるいは美しさを見つけようとす ....
長い間
{ルビ棚=たな}に放りこまれたままの
うす汚れたきりんのぬいぐるみ
{ルビ行方=ゆくえ}知らずの持ち主に
忘れられていようとも
ぬいぐるみのきりちゃんはいつも
放置され ....
空虚な腹部で
命と鳴いている
今日は夏だ
われんばかりの空だ
あぁ、こぼれてゆく
大地の精霊を
宿す
からだは
青空のもとで響く
首すじに光る雫を
ハンカチーフにすっと吸わせる ....
日々の果ての
朝、(辛うじて未だ夏の、)
誰よりも先に、空が
窓で泣き出している
日々、とは
ひとつづきの熱風だった
その果ての、床と素足に
夏だったものが生温か ....
自転車の私と
白い軽自動車の先生が会ったのは
広い水田の中の十字路
偶然にもかごには
できてきたばかりの詩集
それはコピー誌で手作りで
でも 作品を集めてお金をだしあって
イラストを ....
繰返してはいけないと思っていても
繰返してしまう
それはちょうど悪戯っ子が
すぐにばれてしまう悪戯を繰返すのに
似ているのかも知れない
かまって欲しいわけでもないし
誰かに判って欲しいわけ ....
一.
なんだかね
スーパーに行ったんだ
この街は夏でも冷房とかあんまり無くて
でもそのスーパーにはあって
涼しくて
何買うわけでもないけどね
近くの中華料理屋の中国人たちがいつもどお ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた
神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
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