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ぼくは というと
このからだに いま とどまっている
このからだが うごくことを やめたとき
ぼくは からだと ともに
たしかな きおくを おいて
どこへ つながってゆくのか
わか ....
渇く渇く渇く潤う
行き止りのない道を
いつまでも
忘れていることがあるにせよ
それは帰れない{ルビ道程=みちのり}であって
忘れていることなど何もないのだ
あどけないうすい影は
....
帰り道に迷って
泣いてる子羊
あの空の羊雲は
違うよ
君の帰るところじゃない
涙を拭いてよく見てごらん
発見はいつも
ほんの足元からはじまるんだ
背伸びをしてると
ほんと ....
{引用=私イコール作者だと信じる純朴な読者は、読むな。}
夫のいびきが隣の寝室から聞こえる
ここは私の部屋で ここにあるのは私の取り分
大きな書棚 たくさんの本 オカリナ ちゃちな顕 ....
人は誰もが
{ルビ完=まった}きできそこないであり
どこへ行っても人の輪へ入れば
金曜の夜の飲み屋では
ぶーすか ぶーすか {ルビ愚痴=ぐち}っており
海の向こうでは今もなお
....
恋人よ
その安らかな寝息をまもれるのか
わたしは
同じ所に{ルビ止=とど}まっていられない
飽和した
硬質な怠惰の
夏の深奥に
ワイシャツが青く干されていて
ノイズの走るレコードが ....
小声で呼ばれて小声で教えられた
(左左、ミミズが傘を差してる)
顔を向けようとして止められた
(向いたら気づかれる)
目の端っこで何とか見る
確かに紫色のミミ ....
どうしましょう
幸せなのです
幸せでたまらんのです
涙も出ます
あ
それは煙草の煙のせいかな
とにかくとてつもなく幸せなのです
不思議な気分です
ほしいものがありません
必要なも ....
寄ってきた子供達に
お菓子をふるまってた 米兵に
自爆テロがつっこみ
多数の子供と兵士が
亡くなられたという
手をだす子らは
わざと 足止めしたわけではないにせよ
いつもそう ....
ねえ 凜
前にも話したかもしれないけれど
きみが生まれる前に
きみのために考えていた名前が
ほんとうは ふたつあったんだよ
どちらかといえば
ぼくはもうひとつの方が
ほんの少しばかり ....
うすい月が窓までおりてきて
わたしの絶望を笑うのだった
からっぽになったところで出発だ
ほんとうの旅は いまからはじまる
なんて こともなげに言うのだった
黄昏が
輪郭を奪い
ネオンが灯りだした
町並みの真上
薄雲に隠れ
ほのかに
きょうの月
ああ
そうか
僕は君の
輝きばかりを追い求めて
ついにその形を
知ること ....
つくんと
ときおり胸で感じる痛みを
悲しみのせいだとは
思いたくないから、僕らは
うたおうとする
好きな歌を
思い出せないフレーズで
立ち止まってはいけないと
覚えてるとこ ....
恋に目覚めたとき
君は書くだろう
恋に焦がれた
男の詩を
愛に恵まれているなら
君は書くだろう
優しさ満ちた
日々の詩を
性に欲望したとき
君は書くだろう
交尾に狂う
獣 ....
なすときゅうりの馬なんて
のれないよねえ とつぶやいたとき
お兄ちゃんは
ひらたくて少し冷たい手のひらで
あたしの手を
つかんでいた
じいん と鳴る
すずしいかぜに
....
3匹目の獏は道端で
へたりこんでるところを拾った
小さな獏は虚弱体質で
夢はもちろん秘密も嘘も受け付けず
今にも消え入りそうに震えている
私は必死で噂とか言い訳とか ....
日が落ちて 暗い川に
すう とよぎる物がある
魚のひれに
背の高い草
それから
釣りのおじいさん
長い棒で
水をかき
橋をくぐる
なにがみえるのか
なにがきこえるのか
波紋と ....
爽やかな日曜日
朝からお洗濯
はりきってお洗濯
お洗濯は大好き
がらんがらん
洗濯機が回るところを
見ているのも好き
暇だから見てるんじゃないよ
暇じゃなくても見ているの!
ごしごし ....
カレンダーが
隙間を 埋める
いちいち 並んだ文字
規則正しく
色までついてる
ななめに さいて
ずらしても
あくる日は 書いてなかったように
きちんと くる
時 ....
悪気などないのだから
だから尚更
優しいあなたは嘘つきになる
誰をも騙せなくて
自分を騙すことではじめて嘘つきになる
それがたとえ取り繕いの仮面であっても
優しいあなたは
....
焚き火の火を見つめながら
煙草を吸っているから
涙もくしゃみも煙のせいにできる
焚き付けの新聞紙にはテロのニュース
世の中のもめごとみんな燃やしてすっきり
なんてわけにはいかないけど
....
生まれた日のことを覚えている
ちらちらと雪が降って
がやがやと人の声が聞こえた
そして何度か暗くなった
明かりは穏やかに灯った
鳥の声が聞こえた
硬貨の匂いがした
笑っていた
抱きしめ ....
七月の窓辺
夏色の羽をはばたかせて
揚羽蝶がひとり
庭に迷い込んできました
羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なのだというように
ゆらりと抱いた風をふ ....
とても寂しそうに立っていたから
声をかけられなかった
檻の中
100センチの
ペンギン
タイミングが全て合ったら
結婚しましょう
氷の上で
夕方の風は冷たくはないの
ぬるいの ....
あなたはわたしの何もかもを知らないし
わたしはあなたの何もかもを知らない
それでいいと思う
それでいいと思ったら
夏の柔らかい部分では
雨の方で都合をつけて
わたしとあなたを
水たま ....
十二番目で
いつも言葉を間違えてしまう君は
その次の交差点では
左折ばかりを繰り返している
東京
狭い夕暮れで
夢から覚めたばかりの抜け落ちた体を
ついでのような角度でドアの隙間に潜り込 ....
チョコレート
チョコレートの包みを
あけたのは
退屈なカエルが
土の中から這い出て
鳴いたから
スカーフ
ほめたら{ルビ白髪=しらが}まじりの
老婆がくれた
....
梅雨の雨にキスをして、
みなさんじめっとさようなら。
空っぽ空にキスをして、
みなさんからっとさようなら。
太陽の果実にキスをして、
みなさんおいしくさような ....
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅 ....
東京、きみは振り向いて
見過ごすことと忘れることに慣れず
クラップ、手を、たたいて
(光のように)
歩道橋、線になって逃げていく車の
ひとつひとつにああ、ぼくと同じひとが乗っていると ....
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