すべてのおすすめ
もう自分の場所に
やすらぎがあるので
という理由で
前に進むことを停めた友へ
アガー整骨院は
久茂地交差点の近くにある
それは痛いという意味なので
痛くなったらおいで ....
君の声がどうやって千切れてゆくのか知らない
どうか耳をよせてください
いいやよせないでください
僕はカミキリ虫みたいに叫んだ
その声は成層圏を真っ二つにした
そんなわけない
ど ....
空にたくさんの綻びができて
あとからあとから雪が落ちてくるので
裁縫上手な婆さんに
縫ってくれ とお願いした
ひさしぶりの大仕事に
婆さんは大喜びで
せっせと針を動かして
つ ....
中学校の図書室で
詩の書き方という 本をひろげた
文芸部に入りたてで
それなりに 真面目だった
そこで 出会ったのが
高村光太郎様作 火星がでている である
ひと読み惚れという言葉 ....
鎌倉に住む私は
古びた寺の庭園の水の滴で岩を掘る
{ルビ水琴窟=すいきんくつ}の{ルビ音=ね}を忘れ
日々グレーのスーツに身をまとい
コンクリートの街並みに染まる石像群の一人として
朝の川の ....
1.
かみさまはいるよ、
って
教えてくれた人は
もうすぐ死んでゆく人だったけど
それは黙っておいた
だって、あいしてるんだ
2.
きのう、かみさまを見か ....
先生
唇が、
ふるえてしまいます。
電線に
飛行機雲が斜線して
雨上りが地上をうっすらとはいでいきます
あの日
陽炎で生まれました
わたし
浮遊する
夢みるからだで透けていき
....
初春のみずうみに映る景色を
刻々と塗り替えて
青かったり
赤かったりする
目一杯に膨らませた
君の頬を指先で弾けば
凍えた朝の軒先に
透き通った氷柱を見つけ
曖昧な気配の裾を払 ....
冬枯れの老木に
花を咲かせてやりたかった
とびきりの六花をこしらえて
枝という枝に舞い降りたのに
老木は身をふるわせて
あぁ、寒い
ゾクゾクするよ と呟いた
初恋に破 ....
私はとても小さいので
海を見れば
海でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
空を見れば
空でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
風を匂えば
風で ....
棘に着せる花びら
ちぎり終えて
何も知らずに 枯れていく
カーテン で 抑えきれない
濃さの違う 溜息
流す視線 だけで
つなぐ
人魚のように
青く 空は
どちらの ....
蔓薔薇が石塔に深く絡まっていて
霧に浮かびあがり声をもらしている
清らかな
石塔には
老人の深遠な目でこう刻まれていた
?在る{ルビ可=べ}し?
霊園の霧は
空中に充足した空虚な ....
もう何年も前
遠い北国に{ルビ嫁=とつ}いだ姉が
新しい暮らしに疲れ{ルビ果=は}て
実家に帰っていた頃
日の射す窓辺に置かれた
白い植木鉢から緑の芽を出し
やがて赤い花を咲かせたシク ....
久しぶりに三人で手を繋ぐ
いつもより寒い冬
汗をかいた小さな掌は
どことなく妻に似ていた
歳を聞けば指で
三本や五本を出していたのに
今では両手の指すべてを使わなければならない ....
弛緩にいたる 手薄な機微
アメーバ脱いだ 手袋の中
渡しちまいたい 不燃焼再
登られて 痛み 頬紅傾れ
みつかりましたか 保険虚
あららの なかの 夕暮れ
ちんけな 煙草 責めたて ....
真ん中が欠けたから
ドーナツ
ビルばかり並んで
空が遠くなった
大通りは渋滞の波
自転車ですべり抜ける
みんな何処へ帰るんだろう
真ん中が欠けたから
ドーナ ....
ただひとつの意味でだけ
朝であればそれでいい
女は、暗がりから
チチチチチ、が発されるのを待っている
さあ、と
鳥が開かれるのを、鳥が始まるのを
待っている
....
さぶらうわあたしさぶらうわもっと、ねえ
あなととわたし
融和ね
波しぶきと太陽のあいだで
あらあね
鼻が
もげそうだわね
口の上がいろいろふべんだわね
鼻のまわりが狐狸狐狸だあね
ぺ ....
地下鉄から生まれた人たちが
夜の寸前で吐き出されている
空へ続く四角い階段
斜めに染まる街の角度で
溶かされそうになっている
午後六時は動き出せない
指先も爪先も逃げるように
眠るに ....
おまえがほんとうのことを口走る度に
鳥の翼から羽毛がぬけ落ちる
世界はやせ細り 目に見えるものすべてが
絵に描かれたものとして溶けてゆく
たとえば可哀相な妹が
人に知られぬ速度で後退する時
....
国語の教科書にのってる詩に
水しぶきをあびせられたように
眼を見開かされた小学時代
宿題にされた詩
初めて書いたのは 鶏頭の花
鶏のとさかみたいだとか 好き放題
五年生から 夏休み ....
遠くにいる人を想っている
列車は夜の手のひらをすべるように過ぎてゆく
舞い落ちる雪はその速度に蹴散らされて
散らされた後たいへん静かになり
静かに舞い落ちて
舞い落ちて
落ちて
落ち ....
月の咲く頃、青鷺が溺れた
川辺の彼岸花のように 恋に焦がれた
ひらがなの響きで、わたしを呼ぶ あの人
辛辣な言葉を並べるくせに
どうして時々 柔らかく、呼ぶ の
青い紙で鶴を折って、 ....
今日も遠い北のはずれでは
北風がつくられている
私は妹の手をとって歩きながら
「ごらん、あれが北風だよ」と
すり切れそうな雲の端を指さして言う
すると雲は
少しずつ形を変えなが ....
暗いはずでした
起き上がっても
見えるわけがないと
思い込んでいました
ふすまを開けて
階段を 見下ろすと
一段 一段
角も はっきり
見えるのでした
外に 降り ....
幾日か後
妹の手を引いて
池まで降りていった
石畳は少し先の
見えないところまで続いていた
水面には遺影に良く似た温もりがあり
生き物たちの息継ぎまでもが
今ならわかる気がした
....
空は啼いているのだろう
風は狂いはじめている
雪の華はその美形を
とどめることも叶わずに
ただ白い塊と成り果てる
清き水の流れさえも
怒涛に変えて
白鳥は真白の吹雪に ....
冬の夕暮れ 老人ホームの庭に出て
A {ルビ婆=ばあ}ちゃんと若い僕はふたり
枯葉舞い散る林の中へと ずんずん ずんずん 進んでく
「 A さん、目的の宝物がみつかりました・・・!」
....
冬の空のしんとした質感に
しなだれる肺のたおやかなこと
木枯しに枯れていく太陽のもと
不透明な雪の結晶となる重さを
熱く呼吸して火照る
湾曲している波に共鳴する
空との境界で
風 ....
朝になると
静かにそれを繰り返す屋根の波を
勝手に世界と呼んでいた
語る言葉はどこかに置き忘れて
少し笑う背中で世界に潜り込んでいく
息を吸えば吸うほど
体は軽くなっていくはずで
両 ....
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