夕映えに長く伸びた影の
手足のしなやかに動くのを
美しいと見惚れた
サッカーボールが弾むたびに
視線が鋭く光るのも
伸びかけの髪をかきあげて
おどけて笑う口元も
....
ここ最近夕方になると
白い雲は赤シャツを着て
どこかへと出かけてゆく
トンボが追いかけてみたけれど
地平線までが限界だった
彼はどこへ行くのだろう
お洒落な自分を
誰かに見せ ....
怒ったあなたの瞳に光るもの
稲妻だったらすごい
それはどんなにかすごい
刃のように空を閃かせて
雨に濡れ
雨に驚く人々の顔をくっきりと切り取る
それほどの鋭さで
稲妻 ....
教科書の世界に
自分は入ることができなかった
入口がどこにあるのかわからない
それでもさすがは教科書
わかりやすい標識と信号が
自分を中へ奥へと
自動的にぐんぐんと進ませてくれる
....
たとえ疲れている時だって
何かにつまづいた時だって
君の瞳は輝いて
じっと前だけを見つめている
そんな君の前に立つ時は
私も背筋を伸ばしていたい
生きていくのは楽じゃないと
君もいつ ....
ときには
顔を真っ赤にしながら
たくさんの風船を膨らませてきました
割れたものも
木の枝から離れなかったものも
見知らぬ空や海の彼方へと流れたままの
ものもあります
が
それは ....
何から何まで
犬の日々だった
私の瞳孔はつねに濡れていて
咽喉の奥はいつも渇いていた
風にさらされて 乾きすぎた手拭いのように
水に濡れた掌を求めていた
何もかもが
犬のようだった
....
いつの頃からそうなのか
わからないけれど
物心がついた時から
ぼくの家には屋根がない
どうしてなのと
親に聞いたら
そういうものだと諭された
友達の家にも
遊びに行くお店にも
....
空に連なる白い花々が
青い大河に咲き誇り
そっと揺れはじめ
新しい季節が
空から舞い降りてくる
ふうと風が吹くたびに
花はなびき
ふと手に届くのかと想う
我に返れば
その飾ら ....
おのれの呼吸が
一つの音であるということ
それは
あまりにも気づき難くて
ともすれば
日々の暮らしの意味さえも忘れてしまう
月の満ち欠けは
暦の通りに
全く正しく空に映るの ....
同僚の刑事が撃たれ
必死で犯人を追いかける
署内の刑事たち
寝る間も惜しみ
老いた身体をものともせず
みんなで協力して
ついに犯人を追い詰めた
ぼくはそこでテレビを消した
....
荷台に歌い娘を乗せて
進む先にカーニヴァル
陽に焼けた顔をヴェールで隠し
うつむいて旅の疲れを見せるジプシー
誰の顔にも笑みはない
荷台に歌い娘を乗せて
進む街にカーニヴァル
薄くぼ ....
陽ざかりに
影がゆれる
塀の上に
白樫が緑の枝をのばし
陽ざかりに
光がゆれる
そこに咲いている
荒地野菊の花
寡黙な額に
風が吹き
みつめる心も
そっと ....
あれ、
この花火どうしたの
おかあさん もらったの
今日はけんちゃんの命日だからね
買ってきてもらったんです
こんな暑い日だったの
戦死公報に載ってただけ
亡くなった ....
冥王星よ
君は一人じゃない
家族の中の冥王星
クラスの中の冥王星
会社の中の冥王星
合コンで冥王星
病院の待合室で冥王星
ファミレスで呼び出しボタンを押しても冥王星
mixiに ....
セミよ
そんなに急ぐな
さっきから
空を見上げてばかりじゃないか
お前の
自慢のその羽は
ただ
アスファルトを掻くばかり
セミよ
今なら見えるだろう
あれが星座だ
私も昔 ....
せっくすの意味を知ったのは、
煙草を覚えた日だった。
せっくすの女が吸っていたのを、
もらってはじめて吸った。
だけどはじめてせっくすしたのは、
その日じゃな ....
空が大きいこの町で
小さな命が生きている
一つ一つは小さいけれど
空に負けないくらい純粋で
大きな意味を持っている
空が大きいこの町で
小さな命が笑っている
一つ一つは小さいけれど
....
教えてほしい
あの空の青みの
ほんの隙間の翳りの中に
何を見いだし詠うというのか
たおやかに流れる川の
水底に沈む
ひとかけらの悪意を
掬って頬張った
その後の嗚 ....
スクランブル交差点を
行き交うちくわの中に
ぽつり
ちくわぶが混じっていた
バッタものだよ
言われて初めて気がついた
NIKOのロゴTシャツ
が吸った汗の染みへの ....
君は控えめに微笑む
今僕がここで笑ってもいいのかなって
君はそぉっと思いやる
おせっかいにはならないかなって
まだ
子どもの大きさしかない君は
その内側で
広 ....
人が集まるコンビニに
どこからともなく一匹の
野良犬がやってくる
ドアの横に礼儀正しく
来客の邪魔にならないように
座り込む
空を見上げる野良犬の
その眼はどこか悲しげで
世の中の ....
薄暮れて
眠り続けた一日が
黄昏に、朝と夜とを迷う視界に
君の小さい、窓辺に向かう後ろ姿が
棚引いて
まだ平原には届かないから
打ち寄せる波がこちら側を削っていくのを
た ....
曇り空に
夏が少し薄れて
鮮やかを誰かに譲った向日葵が
枯れた葉を恥じらうように俯いている
風に混じって遠い蜩の声が
髪を擦り抜けると
秋、と囁かれたようで
逝く夏に何か
何か ....
――Sに
ばらばらにされる
(君のせいで)
俺が歩く その先々で
俺は自らの破片をばら撒いてゆく
路上に
天井に
....
――Sに
よく見てみれば世界は逆に回っていた
老人は杖を失い 赤子は乳を失った
退化の兆しを感じ取って皿はふるえ
投げられた石は空中に留まった
世界の最初は奇蹟だ ....
語らう小鳥の 囁きも
野を渡り疲れた 風の旅行着も
みんなみんな小綺麗に 仕舞い込まれています
雨の衣服のポケットに
消えた森、そのものが すっかりと
畳み込まれているのです
だから ....
冷蔵庫から ほろ苦い
コーヒーゼリーを取り出した
冷風吹きすさぶ 一番上の段
甘いフレッシュの上で
体育座りしている
君を見つけたのは
午後3時
ああ、寂しかったんだね
今日は ....
よーい どん
合図のピストルを撃てば
電柱が走りはじめる
電線にとまっていた
鳩の群が一斉に
バカボンの口のような
夏の空に
飛び立ってゆく
これで いいの か
ざわわ
....
窓を開けると庭でねこじゃらしが揺れて
通り過ぎてきた時間を優しく撫でていく風
いつの間に同じ高さから空を見れなくなったか
なんて もう思い出せないほど遠くに流されて
昨日思い出に留まってい ....
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