シリウスが綺麗になったから
息子と一緒に
夜の海へ出かけた
星の匂いが鼻をつく
息子の手には
骨董レベルの携帯が握られていて
それは
息子の母親の持ち物だった
....
昨日 男が欲しかった
非常に発情しているのがわかるの、”らん”は左側から排出されていてよ。
けれども赤く、流れてしまった
あなたが早く来ないから、流れてしまった
お会いできるの ....
雲ひとつなく秋晴れの空
父の運転で越えていた峠も
いまならば
自分の運転で越えられる
アクセルの踏み加減でスピードを調節
ブレーキなんか踏まない
でも
思いの外カーブは厳しい ....
大きいも小さいもない
気づくか
気づかないか
ただそれだけの違い
見逃せば見逃すほど
きっと孤独になっていく
幸せはゴールじゃない
満点をつけることじゃない
野心家も負 ....
不意に訪れる眩暈のなかで
わたしの奥から
声 でも うた でもない 音 がする
無意識に産み落とした空のタマゴは
曇りの日に次々と孵化し
電子の情報に
右脳と神経を肥大させては
....
私が持っている鍵を使って
あなたの心に入り込む
でも今は
鍵穴が新しくなり
私の鍵では入れなくなった
私への想いがなくなった証拠
使えなくなった鍵は
捨ててしまおうか
私の ....
飲みすぎたアルコールとともに吐き出した
苦しみも 悲しみも 寂しさも
苛立ちも 憤りも何もかもが
それはもう呆気なく
それはもう大きな渦となって
便器の穴から消えてゆく
吐き出した ....
一、
せんせい、と
あたしの声が響くたび
澄んだ空気が
ゆらり
あでやかに揺れる
それに気付いて
目の奥のどうようを
れいせいな
おとなのまなざしで
隠すひと
その距離は ....
午後の輪郭をなぞる
コーヒーの湯気は婀娜っぽい
ブラックはもう飲めない
この頃は結婚式に呼ばれてばかりだから
フレッシュを二つ入注ぐ
深いマグカップに沈み混んで
滑って 昇ってくるのを ....
生きてるのが
怖い
死ぬのも
怖い
いつも穏やかに
笑っている僕
心が血を流し
かさぶたの鎧を
心が身にまとう
苦しい 辛い
誰にも言えない ....
やわらかな陽射しに顔を照らされて
ふと立ちどまる
それはあの人の腕の中と同じ温もりで
ぽっかりと空いた胸の空洞に気づく
子供みたいに駄々をこねて
一夜だけでいいからと縋ったの ....
メロンパンが破裂して
扉が開いた
向こう側には
名前の知らない海峡がひとつあって
多分自分もあっち側なんだと思う
それなのに僕は波音を聞きながら
こっち側でひたすらメロンパンの
....
あの海の家はどこにあっただろうか
夏の
暑すぎる昼下がり
そこで笑っていた太陽のような人びとは
どこに行ってしまったのだろうか
時というものが絶えることなく
いつも継続して流れてゆくとは
....
足を 踏み出せば
いつでも 闇に
落ちる 覚悟の
自制 が たりない
自制 が たりない
あたしを ここに
とどめる ものが
ない
あたしの 大切が
ここに しかない ....
それは
頑なな蕾
慈しみの雨にも
きららの陽射しにも
咲かずにあり
ひっそりと
花弁の色を思案している
いつかきみの唇 触れて
眠れる森の姫のごと
ゆっくり ....
準備運動は必要だよね
途中で足がつらないように
君と地球を泳ぎきるため
助走はやっぱり必要だよね
途中で失速しないように
君と地球を飛び越えるため
怖いときは目を瞑ればいい
....
ただ
ハコベの花のように
ひそやかな 誇りをもって
ただ
ハコベの茎のように
地を這う たくましさをもって
ただ
ハコベの葉のように
しんしんと いのちをもって
本日 ....
死ぬときはひとりでいたい
本当にひとりで
見守るものもなく
見捨てるものもなく
星が
星の瞬きが
気づかれないうちに黒く
黒く輝くように
かなしいとか
なみだとか
そんなも ....
『頑張れ』は
嫌われる言葉となって久しい
わたしは情けない人間である故
毎朝『頑張れ、頑張れ、頑張れ、、』とつぶやく
情けなくても
まだ生きなければならない
また
おいしいも ....
満月の夜 いつもは 真っ暗な空が
ぼんやりと光る
どこから 見ても 満月は 悲しいくらいに 美しく光る
それぞれの人の 気持ちを じんわりと 動かしていく
わたしの 気持ちは ....
君の知らない深い悲しみを
僕は背負って生きている
そして君も僕の知らない過去の残骸に
足をとられては涙を流す
この街のプラタナスも深まる秋の気配に
すっかり色づき始めたよね
....
呟いた台詞をどれだけ記しても
書き殴った言葉をどんなに叫んでも
僕の声は旋律を切り裂いているから
どうやっても詩になりきれないんかな
涙と汗は溶け合いながら
湿りきった風に運ばれていって ....
珍種の鳥を集めた
大学博士の庭の檻のなかに
クチバシがスパナアの形をした
虹色の鳥がいた
わたしは胸のかごの扉のねじが
どこかでゆるんでしまったらしく
風がふくたび
かたりことりと音 ....
真正面の三日月を眺めながら
帰りの坂道を登っていた
薄ぼんやりとしたその境目が
どこか僕に添うようで
しばらくの間僕はじっと
三日月を見つめて歩いた
するとやが ....
夏休の校庭で逆上がりの練習をしていた
鉄棒にぶつけた脛はどす黒く変色して
何故か分からないけど
鼻血まで出る始末だった
汗と鼻血が土の上に落ちて
どんどんと吸い込まれてゆく様を見ていた
....
枯れ落ちる
葉の上に声を震わせて
蒸散することのない深さ
やがて機能しなくなるであろう涙の透けた色に眩暈して
ああ雨の夜の崩れゆく{ルビ慟哭=どうこく}
スローモーションの叫ぶ先に
....
幾重もの等圧線の下で
雪虫たちは急いて冬を配り
息を白くするあしたは
ドアの外で待っている
羽根のように
踊り
うたう
白のひとひらは冬の鱗
北のまちでは
夏の半分と
秋は ....
なめればにがく
すかせばしろい
ふれてつめたく
おちてしみいり
にじんでくろく
つめたくきえる
とぼけたいろは
ふくまぬほうに
まぢったやみを
かいすいいろで
ごまかしたてて
ぐ ....
触れない唇
握らない掌
体中の
あちこちが渇くのです
潤して欲しいと
井戸を掘るのです
上手に
井戸が湧けば
わたしはきっと
すくわれる
井戸を掘るのです
時間す ....
生まれ変わったら何になりたい
と、問われたので
水
と、私は答えた
それは或る時
貴方の頬を伝う涙であろう
再びこの世に生まれる時に
貴方を抱く羊水であろう
今はた ....
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