人生を
長い坂に喩える人がいる
きっと僕もその長い坂にいるのだろう
どのくらいの地点かはわからないけど
どうして登るの?
と聞いてみたくて見渡した
登山家みたいな人が近くにいた ....
【運転室】
ミステリーツアーの
ほんとうの行先は
汽車の運転手さえ
知らない
行先はレール任せなので
運転手は楽譜を前に
指揮を振っている
振りをしているに過 ....
君の残した想い出は
遥か遠く浜茄子咲く北の国で
いつも優しく眩しいほどに輝いて
ここまでおいでと僕の名を呼んでいた
君の残した思い出を
僕は今超えようとしている
越えることなんて考 ....
ソーダ水の浮上する泡に
空想をのせていける午後
冬と呼べる景色でよかった
北に向いた窓を開けると
区切られた言葉が通り抜けていく
君の途中で
空の色とかたちを書き残す
嫌になるく ....
あのひとが、
白い部屋から、
退院して、
窓の向こうで笑ってる。
涙が出そうになる。
なにもできなかったけど。
ほんとうによかった。
つまづきなんていうけれど、
つまづいた人の ....
悲しみにくれるとき
いつも夕焼けを見つめていた
悲しくて涙が止まらないとき
いつも月が輝いていた
夕焼けの向こう側や
輝く月の世界に行きたくて
行けない自分がまた
やりきれなくて
....
私は尖っている
ある面はつるつるのまんまるなのに
いつも微笑んでいたい
という願いが
そこにはある
ざらざらと大きくくぼんでいるところもある
このくぼみは
がっちり滑らないよう ....
悪いのは手
あなたの
私を抱きしめた
悪いのは手
私の
背中を探しあて
ことばとは
たぶん違う生き物が
私の中で
惑う
戸惑う
力強く
さみしく
やさしい
....
バレンタインなんて関係ないねと
モテない奴らがひがんでる
そして俺もその一人で
この時期だけチョコなんか嫌いだと
デパートの前で心の中で叫ぶ
今は仕事もないので義理チョコももらえません
義 ....
日は{ルビ翳=かげ}り
見上げた月は幾分か{ルビ朧=おぼろ}で
乳白色の湯船から浮き上がる手は
もう
あなたの手か 私の手か
わからないくらいに
溶けていた
わからないだ ....
卒業写真には 彼は 左上で
蝋人形みたいな 無垢な顔で
佇んでた。
彼の おとうさんに見せてもらった
写真には 今まで 見たことのない
屈託のない 笑顔って やつで。
山田 ....
鏡の向こうは不思議な世界
何もかもがアベコベで
何もかもがヘンテコリン
引いても開かない引き出しは
押したら不思議
開きました
兎は時間を見逃して
ベットでスヤスヤ眠ってる
....
白日の世界に跪くわたしに
昏々と降り注ぐ言の葉は
もう
何も見なくてすむようにと
眩く光る
泣きたくはない
あの人の笑顔を焼き付けるため
でも
言の葉も 涙も
それを許してはく ....
やさしいあなたはわたしの何倍もやさしい
わたしはすぐになにもかもあきてしまってやさしくなんかないのに
あなたはわたしを許すとか許さないとかじゃなくただ
いろいろなことをやさしくこなし続けている
....
恋とは
自分にないものを
求めることなら
愛とは
自分にあるものを
抱きしめることでしょうか
「愛し合う」とは
言うけど
「恋し合う」とは
....
あなたはね嘘をつくのが上手よね
ホントはみんな騙されてるフリ
『どうしても』『今日だけだから』と君は言ったね
たぶん明日もおんなじセリフ
『ごめんね』と言われることがなにより辛い
お ....
ある人が君に言った
愛というものはダイヤの原石
諦めずに磨き上げなさい
今投げ出せば
唯の石ころ
と
そして君は
僕にこう言った
愛は綺麗で美しくなければ
誰も価値を見出さない ....
ふと思いついて、昔書いた詩を投稿してみま
す。一九九〇年から一九九四年ぐらいまでに
書いたものを、自分の中では「初期詩篇」と
呼んでいます(それ以前に書い ....
まるで葉っぱの落ちた木のようだ
風が吹くたびに
小さな声をあげている
ゆっくりと息を吐きながら
それでも溜め込んだ本音を飲み込んで
掲げた両手の先
どこまでも遠い空を眺めれば
....
悲しみを慈しむ
それは
生きてあることを悲しみ
老いてゆくことを悲しみ
病に倒れることを悲しみ
死に別れることを悲しむ
その悲しみに
打ち震える人を
慈しむこと
そして
....
宵闇は
切り子細工の紅茶に透けて
紫紺も琥珀の半ばでとまる
グラスの中では
流氷が時おり
かちり
ひび割れて
薄い檸檬の向こうから
閑かに海を連れてくる
壁の時計は
ゆるり ....
あんこの煮かたをおそわった
美しい母のそばにうろついて
台所で遊んでいた幼い頃に
小豆はたかいから贅沢ですよ
ささげを茹でてつぶしたあとで
木綿のふきんで皮を濾し
大きなお鍋にお砂 ....
なつかしい歌を
久しぶりに聴いたから
あの頃読んだ詩の一節を
ふっと思い出したから
永遠だと信じてた時間が
いつの間にか
過ぎ去ったことに気付いたから
絶え間なく変わり続ける ....
生まれたときから
親指が無かったのだと
その子はいつも
両手をポケットに入れて
両手を使わなければならないから
雨が降る日は嫌いだと
右利きなのに
五本そろった左手で書く文字 ....
伸ばした指先に触れた
温もりが薄れるたびに
寂しさが生んだ幻だと
自分に言い聞かせてた
何度目かの言い訳の後
振り返った道の向こう
通り雨に濡れた路面に
微かな足跡が続いてて
....
君の既視感を舞っているのは
紙製の蝶だよ
いちめんのなのはな と君は呟くけれど
此処はうち棄てられて久しい館の中庭
君が坐っているのは朽ちかけたベンチだよ
とうの昔に涸れた噴水の傍の
....
日はこの時ついに陰ることはなく
交叉点の信号が
青ざめて進めという
曲線に添った産声が
白い手で羽ばたき
円周率へ視線をおくり
目をふせた
ふせないで
みつめて
林檎の赤
....
書かれた言葉と
書かれなかった言葉を挟んで
あの日記は閉じました
喜びが込み上げてくる日には
書かれた言葉が読めるのですが
悲しみが込み上げてくる日には
書かれなかった言葉が読 ....
ひとつの了解からはじまる憂鬱。世界のすべ
ては青い色でぬられている。雨をはきだす雲
のありかである空、それも青ならば、雨その
ものも、青い水彩絵具にとけてふってくる。
人はみな、青にびしょぬれ ....
陽の当たる坂の上の
団地育ち
歩いて小学校に通い
バスで中学校に通い
自転車で高校に通う
川べりの大きな家の
女の子に恋をして
書いた手紙は
クラスで回し読み
団地の上の
貯水 ....
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