都バスの中から見ている
外はみぞれまじりの雨(とても寒い)
信号で止まるたびにエンストしている
86番のバスは日本橋三越行き
いつも右側の席
東京タワーがよく見えるから
その輪郭はあまりに ....
この子への あいのかたち
辿りながら 夢へ誘う
眠れ 眠れや
明日は晴れる
夢に見るのは
月の舟
耳に聴いて こもりうた
包んだその手 もみじのように
眠れ 眠れや
雨の降る夜も ....
切り取って
もう少し違うかたちに
貼り詰めて
色硝子の欠片たち
鏡に映った髪が
指先でもつれて
ささくれた爪が
余計に乱暴になるから
ひび割れが目立たぬよう
綺麗なステン ....
さよなら
とんがった優しさが
ふっている
まぶしいと言う
ブラインドの角度をさだめて
すきまから泳ぎだす朝
深く愛したものなど まだ
なかったけれど
よごれた壁の上に
....
人は何のために
生きているのでしょうと
涙する君に
指で一筋
零れる心を
そっと拭う
こんな僕でも生きていれば
一粒くらいでも
君の涙を
拭ってやれるから
そう
囁い ....
わたしが
うまれてから
なみだを
このてで
ふくまで
ちちははは
どれほど
こころを
ぬらした
ことだろう
いきていく
....
霜焼けが悪化して膨張して奇妙な色になった
自分のものとも思えない足を投げ出した
だけども履き慣れた靴を履き潰しても
元々地に着いているのかいないのかよくわからないで
「何処かに行こうとしている ....
生きている性質に,進むことを促すような
活動領域がどこかにあって
そこの何かごく小さな信号のようなものが
僕の進むことを前提にともっている,
そんな気がします。
そしてそこでは
誰かと ....
夜と昼間のあいだには
真っ暗闇の泪川
ほんの些細なひとことで
抜き差しならないドツボに嵌り
この頃の寒さも張り付き凍えてく
あまい言の葉に ほだされて
安眠毛布のクモの糸
....
幹さん、
どうでもいいですけど
高円寺のキャバクラで詩人っていう名刺配りまくるのはやめて下さいよ。
大将二号店で2本目のつくねをほおばりながらキムがつっけんどんに言い放った
どうでもいいけどキ ....
遠くながめる梅の木の
色をのぞかすふくらみを
君にたとえるぼくがいる
冬の風雪に身をまかせるあなた
雪は自然でぼくは不自然で
罪悪感の有無が自然不自然の境目かと ....
数学が苦手だって言うのに
もう少女ではないから
計算違いは許されない
髪を伸ばすこと
それは可能性
ダイエットコークの味を好きになること
それは目論み
統計では
きみの ....
遠くにおいてきた時間を
一つ一つ取り出して
今の僕に重ねてみた
懐かしさと共に思い出す
未熟だったあの頃を
自立の為に選んだ道
自律を願って歩んだ道
幼さと若さの間で
ひたすらに足 ....
空が飛んでいる
空が飛んでいるので全ての羽が浮上する
見つめることはいつだって透きとおる
見下ろせば ものの在りかはかなしい
重力の堆積が歴史で出来ているなら
ぼくらの言葉は足跡のように ....
その昔
刑場へ向かう道程で咎人はこの橋の上に立ち
己の最期の姿を川面に映したと云う
インチキな占い師に
「貴女の前世は罪人でした」
と 言われて以来占いはやめた
この善良な ....
深夜の洗面所に
たちっ、たちっ、
冷たい音がしている
さっき
閉めたはずなのに
音は止まない
たちっ、たちっ、
寂しそうなひびきで
それはずっと続く
どうにもならないね
....
街灯灯る深夜の通り
できそこないの自分には
ふさわしい
迷子の猫が鳴いている
宴を終えたサラリーマンが
鼻歌まじりにとおりすぎる
いつもいつもおもってること
秘密 ....
空がこんなに青いからって
自分を責めることはないさ
世間が眩しいからって
君がいないほうがいい
なんてこともない
握り締めた土くれには
君の跡が残る
降りしきる生死の中
涙 ....
わたしの背中と
あなたの背中のあいだに
まいにち
いっさつずつの
本をならべてゆきたい
楽しいおもいでも
悲しいおもいでも
みんなみんなすてきな表紙の
本にしたてあげるの
本がな ....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
罪を犯すと
耳が聞こえなくなる
いや正確に言うと正しく聞こえなくなる
誉め言葉もイヤミに聞こえ
相手の伝えたいことが歪んで聞こえる
罪を犯すと
目が見えなくなる
....
真夜中の毛布に隠れ
短い振動が
密かにわたしを呼ぶ
七十センチ横では
きみの見知らぬ連れ合いが
高らかに寝息で嘘を吐いている
幸福の整理券を
並んで手に入れたものの
本当は少し ....
右手で鉛筆を握れば
白紙に数多の糸が行き交う
複雑で繊細な
心の世界が姿を現す
左手で消しゴムを握ると
もつれた糸が消えてゆく
過ちも涙さえも
左手がくずに変える
右手に鉛筆を ....
あの人の
名前を呼びたくなったなら
音にはせずに
水に書くよ
岩に刻まず
砂に描かず
水に書くよ
すぐに流れて
この世から
思いは水底に
叫びは水面に
波紋は ....
ふたりは出会う
雛連れの野鴨憩う山郷の水面は茜に染まり
ほら手をつなご
これから暫くふたりして
同じ水脈を流れ行くのだから
ふたりのささ舟は
透き通る冬の気象 ....
ジェルソミーナ、いつも間違えてしまうぼくの踊りは
やっと世界中の王冠や宝石を集めて
きみに会いにきたら
きみはもう何百年も前に死んでいましただなんて
ジェルソミーナ
いつもきみの足を踏んでし ....
はるかあとおくうのお かぜのおむこおにい
きてきいのおおとのお
ちり〜ん
と
ゆうおじさんのリヤカーが通り過ぎる
ゆうおじさんのリヤカーには
ぽるしぇ
と書いて ....
一人では 歩けない
二人でも 歩けない
ああ、だけど
会いたかったよ、新宿
十代で家を出て
キャバ嬢とかやりたかった
紅茶の湯気ふわふわ
「通貨が統一になるんですって」と
パン ....
冷えた夜が
低地を這っている
これもまたもうひとつの
忘れられた夜であろうか
――あの人は
貴重な生を召し上がりました
何ひとつ 言い残すことはなく
混沌の角度で経験は薄まってゆく
....
明日は
遠くへ行こうと思う
太陽が眩しくて
だからといって目をつむることはない
登り坂は上を見るためにある
アスファルトの道は歩きやすい
子供の笑い声は音楽だろう
受け入れて ....
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