むっとするような草の匂いをかぎながら
僕は雨を待っているんだ
こんなふうに湿った空気の朝は
何だか楽しくてしょうがない
もういいかい
まあだだよ
ほら向こうで呼んでる声がする
....
これでいいのだ
なんていうと
いいことだけではなかったことも
思い出しそうだから
バカボンのパパよ
あなたは
いつも無表情なのに
端的な
その言葉の奥に揺れてる
瞳だけがあ ....
あした、
涙がかわいたら
海を迎えに行きましょう
果てのみえない
かなしみの
ひと粒として
あらわれましょう
雨が降っても良いのです
風が吹いても良いのです
....
俺は冥王星からやってきた
この地球に派遣された派遣労働者だ
とかく地球は理不尽だ
どこの会社でも俺の存在はぞんざいに扱われ
何度も解雇されたらい回しにされた
俺はそのたびに自分に言い聞かせた ....
花の都
水の都
霧の都
東の都
東京を愛することと、孤独を愛するということは
同一である
という意見に賛同しない
猫を愛することと、孤独を愛するということは
同一である
という意 ....
あれから2週間が経ったっていうのに
なぜいまも頭が膨れ上がってるのか
理由は自分でもわかっていて
そのうちのひとつは、トーキョー 打ち上げの席でもと子さんが話してた電車話が
私の旅路にふりかか ....
すこし涼しいね エマさんがささやく
たしかに風が吹いている 夜からの風だろう
もう七月で冬の足音がきこえてくる
いろとりどりの十字路 ここは見晴しがいい
少し背伸びをするだけで
100キ ....
もうだいぶ短くなった青鉛筆を
今日も必死に削っている
先を細く細く尖らせなければ
気がすまないんだ
そのくせ
極度の尖端恐怖症なものだから
どれほど尖っているのか
目で見て確かめることも ....
1.
すき
きらい
どちらでもない
ひとひらの
花びらを海辺にすてに行く
指先が君を呼びかけていて、長袖を捲ることが
できない
もう知ってるんだ
この先で
海辺の声 ....
ことばは 手段
伝えるための
深夜の国道は
暗く流れて
6車線 約50メートル
渡りきるのは造作ない
遠い信号が
赤に変わった
ヘッドライトが
右へ流れた
やすやすと
....
道路をわたった向いのコンビニの怠惰な
額の奥にひかりがともってる
「今とてもしあわせだよ」
何度もこの台詞を繰り返す
高速道路の壁を国産車が
ぶち抜いていく
アンデッドなボディーとソー ....
今は何でも許される時代だから、ここは誰でも受け入れる場所だから、だから、生きることは困難だと感じてしまうんだね、言葉について、僕は語りたい、言葉と、言葉が象る事のできるあらゆる事象について、とりわけ、 ....
人生をブッ飛ばしていきたい
でも車のように突っ走りたいなどとは言わない
車より人間の方がいいんだ
車は渋滞するからな ガソリン代も上がってるし
エコの時代って要は人間の時代なんじゃないか?
....
皆とサッカーをして遊んだ
ボールをまともに蹴ることなんて
高校の体育の授業以来のことだ
息をぜいぜい荒げながら
俺は必死に土の上を駈ける
全力疾走でボールを追う
だが日頃の運動不足 ....
オルゴールは卑怯だ
どんなに興味のないJポップも
いや時には嫌悪する曲でさえ
オルゴールで聴かされると何だか癒されちまう
職場で休憩室に行くとオルゴールがエンドレスでかかってるから
おかげで ....
あらゆるまがりかどの公園の
無人のブランコ
ばかみたいにゴミ箱の中身はちらかったまま
カラスが群れる
夜道切り分けて曇り空は進む
ガラス窓が割れて
流線型で情報が流れ込んでくる
ひき ....
{引用=ばたん――
ドアがしまるような
収穫の音がして、巻きあがる
走り去ったランナーの
一陣の風
よみがえる
まなざしの白さ、
青い息
ゆらぐ光彩に
ぼっ
と一点とどまる
....
*灯台
かすかにまだ
光っている
間違えたままの、
やさしい思い出
わたしの幸福な思い違いを
あなたは
そのままにしてしまったから
....
ペットに名前を付けるように
感情にも名前を付けたらどうだろう
俺は苦しみをポチと名付けた
ありきたりだがわざとかわいらしい名前にしてみた
そうすればこの苦しみの苦しみらしさがいくらでも和らぐか ....
熱い帯にタイダイの笑い声が響く
電気工事のおじさん
駐輪場のおじさん
建設現場のおじさん
交通整備のおじさん
ペンキ塗りのおじさん
たくさんのおじさん
設備工事の父さんも
あんな風にタ ....
先生
ボク帰って来ました
この教室に
円周角やら
関係代名詞やら
習った
この教室に
先生
あなた方が座っていた
デスクに
今
ボクが座っています
こんなにも
広かっ ....
突然放りこまれてしまった
病院の待合室にすわらされ
時計の針が無表情にすすむのを
昼メロのデジャ・ヴのようにながめる
「ママ ごめんね」
かすれた声の一言で
キミは幕開けを ....
誰も気付いていない
扁平な空と屋根の間に
ブランコがある
そこには
飛行機で行けないが
羽根をばたつかせても
到底届く高さではなく
梅雨にぬかるんだ地表と
レーダーに映る雨雲の間に ....
風がとてもつよいので
窓をしめて
新聞紙のうえで爪を切る
あれから、
手のひらを丸めるくせがついて
そのくせ伸びるのは
はやくて
パチン、パチンパチ、ン、
的をはずれ
飛び散 ....
静けさを測る術を探している。冷たさには限界があるのだけど、
静けさを測る術を探している。住宅街の、小さな公園の、真夜中、ブランコをこいで、こいで、鉄の鎖を軋ませて、泣いてしまいそうだ、どこかの家 ....
雨が抑えている
気持ちにふたをして
重くのしかかるのは
度の強すぎる眼鏡のよう
咳こんだところで
深く吸ったところで
するのはただ、土のにおい
しみてゆくしみてゆく
こころもぬれて ....
{引用=刻む秒針の 大時計の音が気になるので
夜中の階段を昇るのだ
光る猫や人形の目を避けるように
しずかに しずかに 足音たてず
針はとまる
真夜中に僕の亡霊は 音のないダ ....
あなたが小さく手を握った
私は小さく微笑んだ
あなたが小さくさよならを言った
私は小さくうなづいた
あなたが小さく振り返った
私は小さく瞬きをした
あなたは小さく微笑んだ
私 ....
暗闇の夢
暖かな夢
闇はやさしい
すべてを平等に包み込む
闇はやさしい
そこでは君を思う事も
そこでは青空を思う事も
みな同じ様に
溶かしてしまう
闇はやさしい
そこは ....
僕はタバコを吸う
煙はどこかへ流れる
夢の中で小さな花を手折った
夢の中では小さな花を吸っていた
甘い香りの先に少しほの苦い味がして
僕は花を「ぺっ」と吐き捨てた
花を捨てた僕 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106