詩を書くあなたは
言葉に恋をすることは
自由ですが
言葉と交際することは
禁止です
愛していることを
愛していると書いては
いけません
愛している以上に
愛を言葉で綴らなけれ ....
いつもよりも少しだけ
人の話に耳を傾けてみたら
少しだけ
人の温もりを
知るようになりました
いつもよりも少しだけ
花を見つめていたら
少しだけ
永遠というものを
考えるようにな ....
東西線の中野行き
隣に座った女は黒い服
携帯電話握り締めて
テトリス
俺もやるからテトリス
きれいに積み上げて整然と
端っこだけ空けて待つ
確信犯
華麗に消す
テトリス
終 ....
橋は斜めに延びている
狭い歩道には影も落ちない
月も雲もいない
何人かの顔がよぎる
数秒の会話が流れる
いくつかの名前が着いて来る
どれもが此処にはいない
昨日に在る ....
野辺のコスモスと
上を舞う鳶は
同じ風の中にいる
コスモスの花びらの反りと
鳶の羽の反りは
風向きのままに靡いて
一心同体
陽光の眩さにしかめる花の仕草も
鳶の眼の目くるめきも ....
四時三十六分
始発
どいつもこいつも
終着にむかっていきやがる
終着は、またどこかへの始発で
始発は、いつしか誰かの終着で
だれもかれも
途中で降りるのだろう
{ルビ可変電圧 ....
理由をお尋ねしても構いませんか
無用な物事に慣れてしまえば
あなたの哀しみと同等に
わたしも哀しいのです
涙の理由を
お尋ねしても構いませんか
夕闇のなかを
誰も彼もが急ぎ足 ....
むすびめに つまずいて ころんだ
ものずきに おなじみちをきた
きみも つまずいて ころんだ
そこで ふたりは むすばれて
あたらしい むすびめになった
ひかりの意志は、古い細密画の粗野を洗い、
陰影の微動を深めて、写実を濃厚にめぐらせる。
信仰の果てしない夢を、
高貴な光彩の眩しさのうえに、
振るい落として――。
古典はイスパニアの春を謳う ....
雨が降っていたので
花を買わずに
帰ってきました
色が鮮やかだったことだけ
覚えています
雨が降っていたので
コンビニのお弁当を
食べました
ラップを取るときだけ
なぜかわくわく ....
ブループードルを飼うことにした
青い物しか食べない
難儀だ
試しに、青い折り紙を置いてみたら
見向きもされなかった
旅に出た
ブループードルを連れて
青いものを探す旅
....
――すべての夭折を急ぐ者とそれを諦めた者のために
?
たとえば雨が降って
翌日には綺麗にあがって
その間にブレーキを踏んでから止まるまでの
少しこわい距離がかせがれて
僕た ....
海に憧れるやうに
幼い頃から
パンに憧れてきた
男がある
憧れは
日に日にふくらみ
パンのかうばしさは
街筋を流れて止まず
憧れは夢に
夢は幻に
幻 ....
いいか?
本当に勝つってことは
一旦どん底に落ちてそこからまた這い上がるってことだ
だからVの字だ
初めっから勝ちっぱなしの奴には
勝つことの喜びもありがたみも安っぽい
初めっから勝ちっぱ ....
少年は宿題をやらなかった
先生から言われた居残りは
いつものように嘘泣きすれば
みんなと一緒に帰れることを知っていた
交差点で友達と別れた帰り道
不自然に動くものが
彼を横切る
....
背の高いやせっぽちのぼくのともだちが
しろい坂道をくだってゆき
曲がり角を折れてそのまま
消えてしまう
そんな夢をみた
ぼくは追いかけなくちゃと
いっしょうけんめいころがるように
追 ....
木の蝶
歩道橋の手摺りに置いた
棒に のっかってた
口元 陽に さわり
生真面目な終わりから始まる
朝に 応えるはず
腕の中で 木に戻り
変えられた 前の顔
幾度も 聴 ....
象の飼育係をやめて
バスの運転手になった
象の目は悲しげだ
と言うけれど
乗り降りする人たちも
体のどこか一部が悲しげだった
遠くに行きたかったのだろうか
数頭の象が停留所にいた
....
お前の髪
蚕の繭だったらなあ
白くて細くてふわんとしてて
綺麗だろうなあ
俺はお前を紡ぐんだ
糸車を
カラカラ言わせて
それから織って
お前は美しいすべらかな生地になり
....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね
小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
秋の空気には
透明な金木犀が棲んでいる
陽射しに晒した腕が
すこし頼りなく感じ始める頃
甘く季節を騙す匂いは
思い出の弱いところを突いて
遠くにいるひとの微笑みだとか
風邪気味の ....
昨日の夜
ちゃんと確認すればよかった
空っぽのランドセル
学校に着いてから
気がついた
空っぽのランドセル
歩いている途中でも
軽いとわかっていたけれど
今日は体育の授業が多いから ....
秋がわたしをとおり越す
わたしはわたしを置いてゆく
いつのまにかわたしは
残されたものをふりかえっている
ずいぶんと昔が重なりつづけている
重なったところどころのすき間から
青いものが ....
何もできなかった
昨日の自分が悔しくて
今日も努力はしたけれど
結局は昨日と同じまま
何もできなかった
昨日の自分が悲しくて
今日も必死になったけれど
結局は昨日と変わらない
....
ほほを桜色に染めた
小町娘が夜道をすっすーと横切って
午前零時の散歩
{ルビ映日果=いちじく}の葉に反射する
コウモリの声
超音波時計に刻まれた
わたしは悲しみに冷静でいたつもりだった ....
ふと、ふりかえると
何本もあったハズの分かれ道が
すべて
自分の歩いてきた道に
繋がって
一本であったと気づいた
ふと、前を見ると
何本もの分かれ道が
もう繋がることはないだろう
....
ぽえむの国の
ぽえむの村に
ぽえむ君が作る
たくさんのぽえむ
いつでも作りたて
春はぽかぽか
夏はぎらぎら
秋はぽくぽく
冬はほかほか
ぽえむ君の家には
ぽえむを仕舞う場所 ....
?.
あなたを
あなたのすてきなところを
一日
大切にする
あなたを
あなたの汚れたところを
裏返して
日に透かしてみると
おかしな影ができるから
その影に指で ....
旅先で母親に背負われた赤子から
青梅を貰ってきた
長く握々されて熱くなった梅なんか
欲しくはなかったけれど
どうしてもやるというので貰ってきた
いらなくなったからじゃない
奴らは一番好 ....
あなたが優しく息を吸い
ふい と息の根を止めた時
私は とても幸福でした
流れる雲は川面に映り
青い空を魚は流れる
錯覚しておいで
この手の平の陽に
飛ぶ魚よ 飛ぶ鳥のように
....
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