オリオンのまばたきが
霞んで見える
蒼い夜の隙間から
一通の手紙が粉雪のように
宛先が書かれていない
差出人の名も書かれていない
薄い肌色の封筒
糊づけもされていないので ....
休み時間に生徒が漢字練習をしていた
なかなか漢字が覚えられないとぼやきながら
僕はそれを見守りながら
漢字はいくつかの漢字がくっついていることもあるから
それを手がかりに覚えてゆくのも ....
・
痣のある猫がいて
部屋の中に僕といる
・
ベランダで風に
煙草を吸っていると
くるぶしに柔らかい体が触れる
・
敷きっぱなしの布団に座 ....
詩を旅立ち詩にかえる
詩は私のふるさと
永遠に根づくかなしみと やすらぎ
旋律の青く燃える落日が私へしずんでゆく
私は水平線をそっとほほえみ湾曲する
ふっと行間に足をとめて
....
灯りを消して
毛布に包まりながら
朝、からいちばん遠い眠りについて
意識の上澄みに漂う
屋根を叩く雨は
僅かずつ肌に迫って
やがて水の中に
わたしを浸してゆく
雨音は
美 ....
近頃、世の中すっきりしないことばかり
それなのに火に油を注ぐように、また一つすっきりしないものが現れた
「糖質ゼロ」
どこがすっきりしてるんだ? 俺はちっともすっきりしない 釈然としない
糖質 ....
(天井の氷がひび割れた
その底の底に わたしがいる 息吹きだけは浮き 消えて
それまでの距離には かなしみが詰まって
砂となって流れ 降る)
深いところでお会いしましょう
眠れ ....
何を指して倫ならずと呼ぶのやら 今はあなたの乳吸うばかり
ラブホ出て逆方向に去るふたり 振り向く男 振り向かぬ女
男などいらぬと笑うプリマドンナ 今日も酒場でディーヴァをくどく
飲み ....
眠れない夜に
眠ってしまった店を想う
焼き魚が食いたくて
冷蔵庫の灯をまさぐるが
プラスチックしか見つからない
ジュースを転がす
傷んだ腹がないている
鍋焼きうどん食おうにも
....
飛ぶ鳥はとても軽いのだということを
わたしはときどき忘れる
飛ぶために鳥が捨て去ったものの重さを
わたしはときどき忘れる
鳥の骨は細く軽く
すきまだらけで脆いということを
150kg超 ....
これではない、
これではない、と言いながら
なにも指し示すことができず
しかしそれは確かにあるのだと言う
散り敷いた花びらかきあつめ
その手をかかげあげても
ばからしいと言う
見 ....
雪解けて東京くしゃみやかましく
春さえ逃げ出すこの始末なり
もつ煮込み屋で
黒ホッピーと
さんまを食べる
このはらわたをねえ
日本酒で食べたらおいしいんだよね
それだったら、日本酒、たのめばいいじゃないですか
そうだねえ
そうなんだけどねえ
....
父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはな ....
ちいさな姉さんたちが
あぜ道を鮮やかに歩いていく
カモミールとか
ベルガモットだとか
とても香りの良い会話をしながら
ちいさな光る粒を落とし
それを知らずに踏んでしまうと
しばらくの間、 ....
ホリデイ
青空にはためく白い洗濯物
私は音の出ない口笛を吹きながら
遠くに走る車のきらめきを見ていた
いつか見た潮騒のようだとふと思う
あなたはまだ帰って来ない
風が気持ちいいわ 春のよう ....
集められる限りの写真を集めて、アルバムにすればいい
一人部屋でページをめくり
かつてあった日々の思い出を愛せ
それらの日々をノートに刻み込め
言葉にできないことはみんな行間に遊ばせたまま
言 ....
泣いた日
左手が動かなくなった日
ボケットに突っ込んだ手を
先生に注意され
からかわれた手と
庇われたことが恥ずかしくて
泣かされた日
泣かされた日
いつも庇ってくれてた友達が触っ ....
小さな神様が
春の雨に打たれていたので
傘をさしてあげた
神様はありがとうを言って
釣竿を垂れると
雨粒の中から
虹色の魚を釣ってくれた
魚は苦しそうに跳ねていたけれど
自分は誰も苦し ....
形のないものを
型に入れてみる。
名前のないものに
名前を付けてみる。
新しい事にも
古い事との
関係を探してみる。
それとなく
秩序を求めて
曖昧という
自由さは落ち着かなくて
....
薬で眠る
あなたの一日は
たぶん
誰とも違う一日
ときどき
あなたは目を覚まし
ありもしない
歴史を説いて
目が合うと
もういい、とか
すまんのう、とか
もう
語り ....
身辺整理は着々と進んでいるのに
心の整理はつかないまま
あなたの言葉は
やさしく
残酷だ
身辺整理が着々と進んでいる中
今頃やっと気がついた
あなたの言葉は
額の中に向けて ....
夜を抜け出して
港は
沈んでいる
深い群青の空を支える影は
暗く黒く
タールを越えて
走る
錘など最初から必要なかった
この手を、離せば。
それでよかった
忘れるわけじゃな ....
ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている
手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる
春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何を ....
型破りの性格も
意外ともろい
パイのようで
十円玉は丸じゃなく
横からみたら
長方形だって
国語の先生
言ってたっけ
大きな体の
おっちゃ ....
もう、
どこからどこまでが地図だったかなんて
関係なくなって
美しいことをいうよ
きみはきみで
ごらん、
すれ違う人々の両手には、何か
約束のようなものがぶら下がっているね
....
カウ・ボーイがあたしに言った
「忘れ物だよ」
あたしは
忘れたんじゃない
わざと置いていったのだ
もう
いらないから
「よかったら
あげ ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな
もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
創書日和「月」 往還
月に巨大な鏡を置いて望遠鏡で覗いてみた
レンズの視界のなかで望遠鏡を覗きながら手をふるのは
自分がするよりも少し遅れて手をふる
2.56秒前の私
無数の少しずつ ....
ノックをしてみる
と、きちんとノックが返ってくるので
僕は待ってる
春になって数回目の風が吹く
見上げる空の青さも
鳥の羽ばたきも
風にさらされている皮膚も
本当は多分
言葉でしか ....
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