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手を合わし目をつむり
「みなさま
今日も一日 ありがとうございました
今日もこうしてお休みできます
ありがとうございます
みなさま
お休みなさい またね」
と夜の布団の中で声を ....
せかいはゆったりしている
小径にすぅと鬼やんまがきえるときも
ほの暗いひんやりとした木かげが
風に戦ぐ
秋の空高く深まる
せかいはゆったりしている
座椅子に ....
やさいをそだてる
くさとりをする
はたけの
ちかくの林で
うぐいすがないている
山は
さぁ雨上り
風に戦ぐ今日も
悔いは無し
ながめる
雲ゆく
鬼蜻& ....
風光る今日は
明日を
ずっと
すけたまま。
然れば
夭逝したその
影は日回りの
種といっしょにおにわへ
埋葬しました。それかあらぬか
見上げれば
懐かしく ....
草むしりをする最中
うぐいすが唱える
私は、
この一本に活かされている
むしる事により
今を(ずっと透けているのは闇といっしょ
私は秘密だ
むしって来た千草一本一本に感謝 ....
私はいつになく 私であった。
ぽっつり、と何者かが着地した
灯るように暗く冷え切った脳裡に
明滅する、えたいの知れぬ
記憶でみたされた浴槽に身を沈めれば
水平線で限られた空の
青い深さ ....
山岸さんは、
もう いない。
おさるさんに似た顔で
さようなら
もいえず
むねにちいさく根づいたきずが
うずくのである
おさるさんに似た顔で
いま
さようならをいおう
山岸 ....
詩を旅立ち詩にかえる
詩は私のふるさと
永遠に根づくかなしみと やすらぎ
旋律の青く燃える落日が私へしずんでゆく
私は水平線をそっとほほえみ湾曲する
ふっと行間に足をとめて
....
{ルビ箸立=はしたて}に
ひっそりと立っている お箸
いのちの橋渡しを行うもの
せつなさをとおりこして
うれしさがあふれそうな
いのちの輝きの
道のりを
真っすぐに
みおくって ....
風が鳴る
凍える魂を
ひき連れ去る寒月を
湾曲する星夜の岸を
鋭く細く鳴っている
{ルビ居炉裏端=いろりばた}の数え歌は
今宵も尽きることはなく
月影の枝が
障子に透けて心細くゆれ ....
落葉がそぞろに風にふかれ
雲は青く高い空をゆく
うらの{ルビ小径=こみち}の縁石に腰をかけて
杉といっしょにゆれている
夏の{ルビ遺言=いごん}は朽ちることなく
静かに実 ....
{ルビ空中線=アンテナ}に張ってある
鬼蜘蛛の巣が
霧雨にぬれて
{ルビ銀色=しろがねいろ}にゆれている
風を孕んだかなしみが
失せた振動鳴きつくす
ああ
空中 ....
朝日影にふくまれた わたくしの陰影が
ありのままの白い骨格で
よるべなく
この家に嫁いで来たのです。
その
わたくしが、
わたくしであるが故に、
わたくしを焼べねばなりません。
そ ....
とおくみつめる
あの秒針の刻む音が
きこえるほどの しずけさで
あやしくぼんやりとした曇天に
にじむ光の粒子を
私も刻む
時のまなざしは熱かった
始まりは、秋の縁側で
ぶらさがっ ....
雲
あんまり空が
低いので
私は泣いて みたのです
いいえ私は泣きません
ひとつも涙は零れません
とけてゆかない成分だから。
ひとり
あなたをきずつけぬよう ....
針のあなに
糸をとおす
磨硝子からにじむ
光のあわい
しずけさ
のおくのほうから声がする
……わはわをたまわる)
柔軟にしなう
わたしの呼吸をなぞるのは
失われた かなしみ
....
{ルビ石仏=せきぶつ}のこけむした肌が
しゃんわりと日に照らされて
青く反射している真昼すぎ
山山は遠く波打って青白くかすんでいる
地際にひとり
うっすらと真っすぐに立つからだ
ポシェット ....
ほほを桜色に染めた
小町娘が夜道をすっすーと横切って
午前零時の散歩
{ルビ映日果=いちじく}の葉に反射する
コウモリの声
超音波時計に刻まれた
わたしは悲しみに冷静でいたつもりだった ....
あわく光の閉じられた
空のもとを
一羽の紋白蝶が舞っていた
しばしそれは
重い熱風のあわいを
ちらりちらりと映えて
切れ切れに風を読んでいたが
霊園の奥深くへ とけていった
さて
....
は、真空の一点で凝縮し続ける無言する{ルビ性=さが}である。
仄暗い
道を歩いていると
星雲を繁茂する
一角で
ぽっかりとあいた
湿っている暗闇が
{ルビ濃紫=こむらさき} ....
とどかなかった、星の下
遠雷の近づいてくる夕べ
雲がますます色をなくし
このからだの重さに形をなくし
響くのは指先の細くなぞる唇の遠い約束
の紅さ
ずっと忘れずにいたのは
鮮やかに流れて ....
早朝の
夜が やっと明け始めるころ
眠りから覚めた
鳥たちが挨拶を交わし始めるころ
色白の
肌が青白く影を帯び始めるころ
私は、
私自身の気配にかすかな境界を感じ
縁側でぽつねんと ....
遠い
いつになく
ほそく笑む
青ざめている唇に
小指で すっと紅をさす
星は 、
籠の小鳥と目が合った
さみしい というわけではないけれど
痛むのはなぜ
こんなにも嬉しい朝なのに震え ....
ひとつ道を歩いている。
ひとつ道で立ち止まる。
ひとつ道で振り返る。
やはり、ひとつ道を歩くことにする。
なくしものはない。
はじめからもっていなければ
なくそうはずもない。
....
夕焼けに
うす紫に染まった
ほほにひとすじ
熱いものが流れて
小さな手のひらで顔をおおう
影が淡く
暗い血潮へ暮れてゆき
無器用な翼の
色調不明する鳴き声が、
空ろに響く
指の ....
濡れはじめた空が
歌をくりかえすのに
私はピアノを弾けないでいる
雲が沈み雨音が遠くなり
やがて射しこむだろう光に
伸びた髪をさらす
地上が反転する雫のなかで溺れる
鳥の影が風に波打つ
....
在る
始まって以来続いてきて
この枝の伸びやかな道道に
茂る葉の呼吸は瑞瑞しい
それも
小雪のちらつく昨夜の雲上の月も
陽炎のゆらめく送り火も
私を育ててくれる花娘
季節の ....
私は、何処へ行くのだろう
やらなきゃならないならない
お墓に入ったからって終りゃしない
だからってその後は知らない
失礼だわねぇ
カラスの伝導師
あっちむいてほい
眼鏡をかけなおす
夕 ....
日はこの時ついに陰ることはなく
交叉点の信号が
青ざめて進めという
曲線に添った産声が
白い手で羽ばたき
円周率へ視線をおくり
目をふせた
ふせないで
みつめて
林檎の赤
....
あの日の筆圧で
定着したインクが
原稿用紙の余白に
青くにじんでいた
その万年筆の字体は
水性の化石だった
硬質のにじみの層は
幾重にも連なったブレストーン
そこでは私の声もに ....
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