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八時、駅に
そういえば昨日はずいぶん言葉を素粒子に引き渡したな、
そう思った後、紛れてゆく私の煙
冷蔵庫の開く重低音
ただいま、
ソーリー、と軽やかにマルキューを見上げる外人さん ....
{引用=そんなことより私、空を
さかさまに見る方法を知りたいの}
少女のすっと透き通った声
は何ものにも染まらない唯一
瞳は映した空を綺麗に切り取って
私はあの子に、
あの子の繊細 ....
のこされた風の中
四月がやって来る
この思いをのこしたままで
新しい輪に入らなければならない
記憶を背後の倉庫に閉じこめて
残酷な月が始まる
すべての匂いや音や色が
われわれを呼吸困難に ....
ぼくは詩人
旅には様々な形があり
その目的は心の充足
今日もまた
朝の散歩をしていると
旅人に出会いました
彼はメモ帳を取り出して
いろいろな場所での
たくさんの思い出 ....
スプーンの背で潰した苺から
紅が雲に届いて夕焼けになる
静まれ しずまれ
桧扇を広げて
漆黒がそこまで来ている
上着の釦をもうひとつ閉めて
心して迎えよ
静電気をちりち ....
東京とは何だ?
諸君、東京とは何だ?
そもそも東京とはどこからどこまでが東京なんだ?
行政区画上の「東京都」が東京だという答えは
至極ごもっとものようで至極ごもっともでないような気がする
東 ....
くたびれた頭を枕にあずけて
今日をほどいていく
僕の一日の終わりに
ながれはじめるイメージはいつも同じ
恋しいひとの部屋までの家路
急な坂の上、五階の角の窓、
高みに近づいて行 ....
あたしたちは
そろそろ学ばなければならない
真実の愛とやらが
どんなものなのか
好きな人を思いやりながら生きることが
どういうことなのか
あなたは今
知らなければならない
不平を言 ....
今まで貴方がくれたもの
両手の指じゃ
とても数えられない
貴方がいなくなってから
私にくれたもの
貴方と繋いだ右手の指で
数えてみるよ
親指に
春に散った桜の花弁の ....
あの頃ぼくは若かった
世界を知っているかのように
ヒーローは間違いなく
ぼくの味方だった
太陽は
抱くべき
自然そのものだった
強く打ちよせる波を
いくつも
こえて
本当に大切なも ....
死から誕生までの、孤独な旅
あんたは今どこらへんに居るの
ジャックパーセルで
生暖かいぬかるみを歩く
レストインピース?
お祈りはしない
生まれ変わりも信じてやらない ....
ぼくは詩人
自筆で書く手紙というのも
心の温もりを感じさせてくれる
たとえそれが短くても
今日もまた
朝の散歩をしていると
郵便ポストに出会いました
旧型の真っ赤な円柱
....
ぼくは詩人
美しい感情は
時代を超えても
伝わるもの
今日もまた
朝の散歩をしていると
石碑に出会いました
あかねさす 昼ののどけき 草むらに
水の流るる 春のお ....
私は瓶の底で
静かに沈殿している
焦げ茶色の液体に{ルビ塗=まみ}れて
歪曲した夕日ばかりが
私の唯一の慰みになり
頑なに拒んだ日はいつだったのか
もう思い出せはしない
幾ばくか ....
ぼくは詩人
あれこれ考えることよりも
まずは自分ができることを
行動するのが大切
今日もまた
朝の散歩をしていると
農夫に出会いました
朝陽が昇るとともに畑に出て
丹念 ....
我々は喫茶店で屁をこいた
我々は人目も気にせず屁をこいた
我々は大々的に屁をこいた
我々は周りの人が吹っ飛ぶほど屁をこいた
我々は逃げるように屁をこいた
我々は外に出てからも屁をこいた
我 ....
月も沈みかける頃
目を開いた私は
黒い電気糸に繋がれた
冷たい機械に手を伸ばす
春独特の憂鬱な症状と
一週間前からこびりついている
心の霧に悩まされ
また例の機械に手を伸ばす ....
ぼくは詩人
感動によって心が動くのは
別に人だけによるものではない
今日もまた
朝の散歩をしていると
風船に出会いました
赤い風船
力なく
勢いもなく
地面に ....
墓標に刻んだ自分の名前に背を向けて
てのひらはいつまでもとどかないのです
生きることの意味を知らされないこぶしが
硬く握られたその先で照らして
夕日が水平線を越えて旅立つこの場所で
朝日 ....
藍色の少女は密かに夜の匂いを纏って
透き通った肌からは昨日が覗いていた
音もなく窓辺に降り立つと
そっと私の手に触れる ひんやりと
夜が私の体の芯に入り込む
裸足の爪先からは 夜が
生 ....
夕空を染めたニッポニア・ニッポンを知らない
雲は刻々と変わり稜線が滲む頃
ニッポニア・ニッポンは茶の間へ来た
貨物船に乗せられてたった二羽だけ
ニッポニア・ニッポン達は知らない
自分がた ....
濡れはじめた空が
歌をくりかえすのに
私はピアノを弾けないでいる
雲が沈み雨音が遠くなり
やがて射しこむだろう光に
伸びた髪をさらす
地上が反転する雫のなかで溺れる
鳥の影が風に波打つ
....
きのう
夢の中で
誰かが死んだでしょう?
ボクの夢の中で
毎日
誰かが死んでいく
君はそのことを知っている
それは
君が仕組んだことなの?と
おそるおそる聞いてみる
ひ・み・つ ....
久しぶりに居合わせた雨で、新しくなる
霞がかった乳白色フィルター
アルコールで剥れ、紅潮した肌のきめ細かい部分に触れると
はらはらと、なにかが散っていくのを感じた。
その体温によってあ ....
ぼくは詩人
人は人として
何かに与えて
何かを与えられて
生きていく
今日もまた
朝の散歩をしていると
1枚の紙切れを見つけました
ふとそこに書いてある文に
目がいく
....
踏みつけていた
いつの間にか踏みつけていた
{ルビ直線歯車=ラックレール}
きれぎれにされた
人生のように
強さだけを必要とされて
ずっとつながっていました
峠を越えるの ....
あまりに長い間ひとりでいたせいか
ある日わたしはふたりになってしまった
わたしたちはさすがに元ひとりだったので
顔も体つきも声も性格もそっくり同じだった
「さみしかったよね。」
「う ....
とほうにくれるところで
重ならないでいる
身体の温みの底で
遡れない時の残響が笑っている
空のような深い過程が
手と手を結びつける引力ならば
きみとりんごの木の下まで歩いて行って
飼って ....
どんなに遠くを見つめても
そこは一面のブルースカイ
「青」は
けしてきれいな色じゃない
少なくとも
けしてきれいなだけじゃない
無邪気に微笑んで
悲しみを忘れるために見上 ....
夏の日 帽子を残して
水平線の先が見たいと少女は
夕焼けが水面を染める
裸足で砂を踏みしめると
体温によく似ていることすら
知らないまま
空との区切りが曖昧だから
触れてはいけな ....
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