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昨日哀しみを突き放し
今日の瞼は何も隔てない
地表を渡る細波を
裸足でなぞり
葉の無い枝のように
四方へと手指を広げている
数羽の鳥が羽を休める
屋根の上には
ソーダ色の空が
....
ひとりで歩く
なんでもない冬の日に
公園に行き
ベンチに腰かけて
砂場やブランコを
眺めていたりして
そういえば春の頃には
ここにも桜の花が咲いていたなどと
ぼんやり思ったりして
い ....
十六歳だった
終わったあと
ひとつになったんだね、と囁かれ
雑誌の読みすぎだとおもった
このベッドの下に隠れてるなにかかしら、とか
制服がしわしわになっちゃった、とか
私ははじめてで ....
情緒に問題あり、と
言われた、三者面談で
帰り道、お母さんが
泣いていた、自転車の
荷台で、情緒の意味を
分かりかねていた
テンイヤーズオールド
西日のまぶしさだけ
息が詰まっ ....
すなおな円の中に
さかなや鳥や
そしてほ乳類を集めて
食べる
それぞれの
交差する部分で
わたしらは健康を保つ
それは罪深いことではない
ラベルには
聖書のことばのようなもの ....
水の中に両手を
そっと差し入れ
泳ぐ魚の影を
そのくねりを
掬ってみたいと
思うのです
光と私はいつでも
とても遠い場所で
落ち合うけれど
必ずまた会えることを
知っています
....
雲は
空のことが好きなのだ
ある晴れた日
どこからともなく
雲はやってきて
やがて空のすべてを覆いつくし
ひとりじめにした
そして泣いた
泣いて泣いて
涙がかれたら
雲はあ ....
ぼくがいなくなっても
さみしくないように
きみのまくらもとに
ちいさなかみさまを
おいておくよ
あるばんにだれにも
はなせないことがあったら
ちいさなこえで
ちいさなかみさ ....
ぼくらの足裏には磁石があって
方位を引きずりながら暮らしている
北とか東とか南とか西とか
ちゃらちゃらと引きずりながら暮らしている
引きずった後にはたくさんの花をこぼしている
それを美しいと ....
何がプレミアムなのかも分からずに
モルツを口に運びます
くだらない形容詞が世の中に溢れて
肝心なことが言えずに今日も終わる
たった五文字の言葉の中にも
行間が絶え間なく滑り込んで
最後 ....
(夕火の)
雨がふっている
多分、あの崖に植わっていた木の枝
くすぶっていた赤や黄は
ゆうやけが
いや葉っぱが
お互いを見ながら
しばらくのまどろみを
一日のしめくくりを
見つめ ....
黒い道がのびている
静かな{ルビ轍=わだち}が寄りそうように走り
道の上には白い雪が
粉砂糖のようにやさしく降り置いて
灰色の空には切り裂く翼もなく
肌を刺す冷たい空気ばかりが動く
....
あいつが吠えてるよ
母親に毛並みが嫌いといわれて
吠えてるよ
妹の庭で吠えてるよ
姉の美味しいご飯を大好きな
僕の優しい言葉が大好きな
首輪のとれたあいつが
父親に寝相が悪いといわれて
....
灰色に曇った窓の雫を
つ、となぞると
白い雨は上がっていて
弱々しい陽射しの予感がする
こうして朝の死角で透けていると
ぬるい部屋全体が
わたしの抜け殻のようだ
だんだんと色が濃 ....
しわしわの祖母の指を見る
指のシワはそのまま五線譜のようにのび
窓を抜け
空の彼方まで飛んでいった
飛びつづけた時間の
縫いとられた時間の
針と糸の通った縫い合わされたところ
日々の ....
いつもなら
真横から朝日を浴びる時間に
ライトを点灯させた車が
飛抹をあげて通り過ぎていく
ふいに
まだ夢が続いているような
不安にかられる
クレーンを折り曲げた重機が
ごうごうと ....
母は
今も悔やんでいる
父が逝き
毎日
毎日
こんなにも悲しいのに
泣けないのはなぜだろう、
と
私もそうだ
父の
いるべきそのあたり
ふすまを背にした
低い食卓
....
彼方の灯火を目指して
星が時間を登っていく
宿題を忘れた子供のような顔で
君が僕から目を逸らす
様々な哀しみと喜びの選集を
投影しながら窓枠を
低速で横切る薄い雲
ガスレンジ ....
*
みずいろのさかなを
凍ったうみで
凍ったうみの
その下で泳がせている
気泡の、結晶
つめたい手
掬うことのない
うたがう事もないさ
たとえばわたしたち
ストレスにまかせて
....
寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
明日のための『今』を食べる
『今』を吸収した体は少し古くなり始める
古くなる体を抱えて、明日の続きに怯えたり、期待する
明日の続きは死へと確実に繋がっている
一つの歯車が錆始める
きゅるきゅ ....
君は
よわくて
その選択は正しい
うまく隠れすぎて、呻く
君の声が聞こえたときには遅かったのだね、そして
そうさせたのはたぶん私だ
君は
わがままで
その選択は正しい
魔 ....
ありがとうを言い忘れて
今日もぼんやり青空を見る
さようならが言えなくて
今日もぼんやり夜空を見る
君に伝えたい
コト
いっぱいあるんだ
明日の朝
誰もいない原っぱで
手 ....
とうりゃんせ と唄われた
神社の裏手
一本の老樹が
わずかに肩をいからせながら
両手を広げ
しどけなく枝先を垂らす
関所と謂われたこの地で
何のためらいもなく
敷きつめられた白 ....
豊かさの中で
ぼくたちは泣いている
ほしいと思ったものが
いつでも手に入るから
いつでも捨ててしまう
持つべきものがなくとも
誰かが持ってきてくれる
便利さだけでは
豊かに ....
きみに会いに行く
本当だった
列車に飛び乗ること
それも盲目ではなくて。
灰色の雨に流され
こころの小石が転がる
舞い散った落ち葉を踏みしめる音は
きみの泣く声に似ているから ....
森のなかを流れる
チェロのように
日々が穏やかであればいい
雲母の放つ
光りのように
心地よく剥がれる断面を重ねて
生きていきたい
うまく思い出して
うまく笑う
どんなと ....
もしもここに
うつくしい空き箱があったなら
お風呂のように入って
外を眺めよう
風の吹く
外はやさしいように見える
口笛も吹こう
あの懐かしい歌
箱の片隅には
ヒイラギが落ちてい ....
わたしは夜を求める
濃紺の空と赤い星を求める
きみは夜を求める
藍の雲としろい月色を求める
ふたりが求めた夜の中で
風見鶏は廻ってゆく
流れ着く先を知らず
また
愛情、の何かも ....
わたしって
よく道をたずねられる
どこかやさしげにみえるのかな
近藤さんの朗読した「夕焼け」って作品大好きで
繰り返し読んだりしたけど
登場する娘さんのように
「やさしい心の持ち主」なんか ....
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