すべてのおすすめ
これではない、
これではない、と言いながら
なにも指し示すことができず
しかしそれは確かにあるのだと言う
散り敷いた花びらかきあつめ
その手をかかげあげても
ばからしいと言う
見 ....
もつ煮込み屋で
黒ホッピーと
さんまを食べる
このはらわたをねえ
日本酒で食べたらおいしいんだよね
それだったら、日本酒、たのめばいいじゃないですか
そうだねえ
そうなんだけどねえ
....
父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはな ....
ちいさな姉さんたちが
あぜ道を鮮やかに歩いていく
カモミールとか
ベルガモットだとか
とても香りの良い会話をしながら
ちいさな光る粒を落とし
それを知らずに踏んでしまうと
しばらくの間、 ....
ホリデイ
青空にはためく白い洗濯物
私は音の出ない口笛を吹きながら
遠くに走る車のきらめきを見ていた
いつか見た潮騒のようだとふと思う
あなたはまだ帰って来ない
風が気持ちいいわ 春のよう ....
集められる限りの写真を集めて、アルバムにすればいい
一人部屋でページをめくり
かつてあった日々の思い出を愛せ
それらの日々をノートに刻み込め
言葉にできないことはみんな行間に遊ばせたまま
言 ....
泣いた日
左手が動かなくなった日
ボケットに突っ込んだ手を
先生に注意され
からかわれた手と
庇われたことが恥ずかしくて
泣かされた日
泣かされた日
いつも庇ってくれてた友達が触っ ....
小さな神様が
春の雨に打たれていたので
傘をさしてあげた
神様はありがとうを言って
釣竿を垂れると
雨粒の中から
虹色の魚を釣ってくれた
魚は苦しそうに跳ねていたけれど
自分は誰も苦し ....
形のないものを
型に入れてみる。
名前のないものに
名前を付けてみる。
新しい事にも
古い事との
関係を探してみる。
それとなく
秩序を求めて
曖昧という
自由さは落ち着かなくて
....
薬で眠る
あなたの一日は
たぶん
誰とも違う一日
ときどき
あなたは目を覚まし
ありもしない
歴史を説いて
目が合うと
もういい、とか
すまんのう、とか
もう
語り ....
身辺整理は着々と進んでいるのに
心の整理はつかないまま
あなたの言葉は
やさしく
残酷だ
身辺整理が着々と進んでいる中
今頃やっと気がついた
あなたの言葉は
額の中に向けて ....
夜を抜け出して
港は
沈んでいる
深い群青の空を支える影は
暗く黒く
タールを越えて
走る
錘など最初から必要なかった
この手を、離せば。
それでよかった
忘れるわけじゃな ....
ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている
手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる
春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何を ....
型破りの性格も
意外ともろい
パイのようで
十円玉は丸じゃなく
横からみたら
長方形だって
国語の先生
言ってたっけ
大きな体の
おっちゃ ....
もう、
どこからどこまでが地図だったかなんて
関係なくなって
美しいことをいうよ
きみはきみで
ごらん、
すれ違う人々の両手には、何か
約束のようなものがぶら下がっているね
....
カウ・ボーイがあたしに言った
「忘れ物だよ」
あたしは
忘れたんじゃない
わざと置いていったのだ
もう
いらないから
「よかったら
あげ ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな
もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
創書日和「月」 往還
月に巨大な鏡を置いて望遠鏡で覗いてみた
レンズの視界のなかで望遠鏡を覗きながら手をふるのは
自分がするよりも少し遅れて手をふる
2.56秒前の私
無数の少しずつ ....
ノックをしてみる
と、きちんとノックが返ってくるので
僕は待ってる
春になって数回目の風が吹く
見上げる空の青さも
鳥の羽ばたきも
風にさらされている皮膚も
本当は多分
言葉でしか ....
神様がホームに立つと
いつのまにか
列車がやって来て
旅は始まる
次の駅は
あなたです
芽吹きの季節とはいえ
冷たい風が菜の花を揺らし
川面を颯爽と走る
光が流れていくのを
ただぼんやりと見ていた私は
纏わりついた髪をすき
静かに歩み始める
荷物は案外少なかった
....
昨日のために
誓いをたてよう
むかしはどこだ、と
きみが寂しく迷うとき
ここだ、とぼくは
立っていよう
延長線というものに
なじみきれない若さとは
なによりもかなし ....
あの古い家の二階の窓に
いつか見た雲が流れてゆく
雲はいつもあの窓に吸い込まれ
戻って来ない日を数える
そっと指折りをする
窓ガラスに昼の陽がさして
辺りはぱっと明るくなった
物 ....
くしゃみをひとつする、と
私たちは地球儀から滑落して空に溺れる
あの日グラウンドから送った影は
手をつないだまま鉄塔に引っかかっていて
捨てられたビニールのレインコートのようだった
バス ....
窓の外から
パトカーのサイレンの音が
聞こえる
僕は少し硬い
メロンパンを
かじりながら
洗面所の蛇口をひねると
先端からサイレンが
溢れだして来た
1秒と1秒の隙間に
入 ....
玉葱の味噌汁に
なみだを一滴入れてみたものの
塩加減は少しも変わらず
だれも悲しくなりませんでした
風の強い庭先に鳴く野良猫に
思いつきで名前を呼んでみました
ずざ、と塀を駆け上がる音 ....
わたしを定義するもの
今朝齧ったトーストの歯形
わたしを定義するもの
会社のデスク
わたしを定義するもの
そこに転がったボールペン
わたしを定義するもの
配達員に捺したハンコ ....
昼に見上げた薄い月の
その不確かな存在感とよく似た
獣が私に住んでいる
恐らくそれはずっと其処で
私に気付かれる事を
待っていたのだろう
それにしても沈黙は余りに長く
お互いの黒 ....
新しい雪の降り積もった
静かな屋根やねが
水平な朝に焼かれて
私の底辺をもちあげる
増幅する光の波が
うずくまる私の手をとり
青い影を洗う
そうして
裸にされてゆく、わたし
....
風になり、花になり
ずっとそばで―――
今日は街に雪が積もって
めったにないことだとニュースでも騒いでいました
わたしはそのことが少しばかり怖くて
あなたの手を握ったのです
やわらかく ....
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