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ねぇ見て 不思議よね
こんなにちっちゃいのに
ちゃんと爪もあるのよ と
満ち足りた母親の顔で彼女は
小さなこぶしをを開いて見せる
アキアカネが飛び交う夕暮れに
生まれたから 茜
はい ....
人間が
犠牲の上で生きるように
世界は
戦争の上に幸福を創れる
そう独り言じみて呟き
少し
自虐的に笑って見せて
貴方
虚ろな目を伏せたから ....
泣きながら
見上げた雲は果てしなく
二人の影を映してる
空の青さが辛い日は
君のために歌を歌おう
さよならと
微笑む君の細い肩
翼が生えているようで
....
小さな小さな小人に語る この火の行方は何処へと?
小さな小さな小人が語る 行方などボクたちが知るはずはないと
勇気と希望と赤く波打つ血潮とちょっとの向上心
おまけにカルシウムの豊富な ....
腐った葡萄を投げ捨てろ
国道あたりに投げ捨てろ
トラックの車輪ではじけて
アスファルトに染みこんで
どす黒くかたまってやがる
(ああ、デラウエア・巨峰・ピオーネ!)
....
世界は みずでできていると
きみは言ったけれど
肝心のきみも やっぱり みずでできていたのは
きみが死んで 五日経って ようやく思いだした
(そのとき みずが流れた)
深夜 人は大 ....
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた
そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう
「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
膨らんでゆく不安を感じていた
知らない人とすれ違うたびに
増してゆく孤独があった
遠のいてゆく誰かの背中に
思いつく限りの名前を呼んで
立ち止まらせたいと思ったのは
それが優しさだ ....
電池が切れた。
電池は切れていた。
もうずっと前から、
電池は切れていたんだ。
嘘を付いていた、
まだ動くから。
切れてない、
演技していた。
怒る ....
若いって
苦いと
同義だよね
字も似てるし
と口に出したとき
悲しいって
美しいと
同義だよね
と言った
君を思い出した
空は平均的に青い
各駅停車の鉄道がはたらいている
ひとの数だけ
想いの数だけ
星空のなかで
各駅停車の鉄道がはたらいている
天文学には詳しくない僕たちだけれど
きれいだね
しあわせだね
このままでい ....
一度知り合えば
他人で無いのである
言葉を交わし
笑顔を交わし
優しさを交わし
友だちであることを否定せず
互いに食事に誘い
互いの部屋へと導かれ
互いの心へ招かれ
....
そしてまた世界は
からっぽに明るくなる
このいたずらな明るさの中では
何かを見分けることなど出来やしない
事象たちが書き割りのように
意識に貼り付く
歩きたい道を見いだすことも困難なの ....
もちづきの ひかりやさしき はるのよい
たたずむみなもに ふりおりし
つきのこどもの くらげやゆれて
ははをおうてか なみまにみゆる
きらめくしぶきも はるいろみせて
たえまなく ....
「本を読みなさい」
その人はそう言って
夕暮れて図書館が閉まるまで
わたしの隣で静かに本を読んでいた
映画を観なさい
音楽を聴き ....
小さな球体のうえに
ひとり立っている
ほんのすこし歩くだけで
一周してしまう
表面は平坦で
どこにもなにもない
踏んだ部分
がすこしだけ窪む
歩いた軌跡が窪んで見える
窪んでいな ....
膝をたたみ 目を伏せて
思い出すのは
折りたたまれた空に見つけた夏のかけら
黒髪が 風を誘った雨上がり
わたし ここで猫が飼いたいの
....
わたしは
わたしは わたしの魂を石にします
わたしは
わたしの 魂の石を
ひとつ ひとつ せっせと そらに詰め
いまや そらは 綺麗な オオルグレイです
その全てが ....
強い信念があれば
幼子の指一本で
巨人を倒すことも出来る
二機の飛行機が
大国の象徴を滅ぼしたように
しかしその信念は歪んでいたために
多くの生命を無駄に奪い
....
あの日を境に
世界は明らかに下り坂に入ったんだ
たとえばさ
えらい人が逮捕される時ってあるでしょう?
あれね
時代劇の捕り物みたいに、突然いっせいに取り囲むってことは
実は ....
わたし、という曲線を
無謀な指が
掌が
少しの優しさも無くなぞる
書院窓の向うでは
秋の長夜の鈴虫が
交尾の羽音で月の影絵を滲ませて
こっちにきて
こっちにきて、と ....
心臓を 下さい
何処かに置き忘れたのです
シナプスを飛ばして 過去の駅
遺失物預かりの四角い顔は
どうして揺れることがないのでしょう
同情して下さい なんて
云えないのだけれど
....
男がケンタの二人掛けテーブルに座り
何やら絵を書いている
風体には似つかわしくない童話の挿し絵
雰囲気には似つかわしくない
どこまでも明るく優しい印象の絵
そんな男の斜め後ろで
僕 ....
戒められた過去
犬が鎖をつながれて
インドの山奥で僧が吼える
今を捕まえることの
いまいましさ
いらだたしさ
いじらしさ
いいさ
厭わずに
生きていくこと
居住まいのつつましさ
....
寂しがりやの人格は
寂しさを乗り越えるためのもの
生まれてきた日
愛に溢れていたことを
ただ思い出すだけ
臆病な人格は
おそれに立ち向かうためのもの
小さな手足をして ....
せっかく外に出たのだから
妻と娘に土産を買って帰りたかった
二人が泣いて喜ぶようなものではなく
小さな包みのもので構わない
ほんの少し甘いお菓子で
お土産買ってきたよ
あら、ありがとう ....
ずしん
と
頭の上に何かが落っこちてきたみたい
どうすればいいか
わからなくて
押しつぶされそう
地面にめり込んでしまいそう
でも
どんなに
形を変えても
絶対に
潰れたり
壊 ....
夏の夜に生まれた私は
こんな嵐の中で脱皮する
いつか描いた理想を胸に
古くなった皮を脱ぎ捨てる
嵐の後に残されたもの
私はこの秋というひと時に
精一杯の愛情をかき集め
....
水瓶は水を
湛えたまま夜空を
平然と飲んでいる。
少年は身を
踊らせて蛇口を
ひねり自らの水瓶座を
満たそうと考える。
蛇口は夜を
錆びさせた年月を
経て少年を
飲んだ鉄の ....
飛ぶ夢を見たことがある
動物園のダチョウはすっかり砂にまみれていて
それはつまりダチョウの習性であって
その目的は害虫を防ぐことだ
そんなダチョウに翼があることは
どうにも不自然 ....
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