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いまにして思えば、いつも扉があった。

あの夜、鍵が開かない扉を見つめ、
電灯が射す、コンクリートの壁を覚えてる。

誰にも触れられたくなくて、
扉の前に、本棚を移動させた夜。

 ....
枯葉

風に抜け落ちたその羽を一枚一枚引き裂いて
枯葉で紡いだその色は一体どんな景色を描くのだろう

知りたいような知ってはいけないような
たまにはそんな背徳的な感慨にふけるのも悪くは無い ....
それは儚さを連れて・・・


感情を越えて向き合う
『無』の世界で、
どこまで愛せるのか。

経験も役立たない
その瞳も、その声も。

どちらが先に逃げ出すだろう

思いを ....
世界のすべてが橙に染まり
この世ではないまでに
あなたの顔も
わたしの指先までも甘く
飴色の光の一部なのに
すべてはあたりまえの日々の一日の
夕暮れに過ぎないのに
記憶のひとつに ....
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鳴いている 
鳴いている

あれは赤ん坊ではありません
あれは 初夏を迎えて
どうしようもなくなった

あれは 猫ですよ

家々の窓 ....
風が吹けば流れが変わるだろう。

高気圧がそのうち低気圧を押し上げてくれるさ。

だから、あんまり気にすんな。


今の時代が狂ってるんじゃない。

いつの時代だって狂ってん ....
取っ手のない扉を前に、
僕らは立ち止まった。

誰かは、そっぽを向いて。
誰かは、泣き始めてしまって。
誰かは、殴り始めた。

殴り続けている。

僕はそれらを見て、何もしていない。 ....
穴を掘る

沈んでしまえるほど
掘りたいのに

ところで
もう覚えていない
あっちもこっちも忘れたという人が
川岸で待っている
らしい

どうか
思い出さないでね
そうしたら ....
暗闇の夢
暖かな夢

闇はやさしい
すべてを平等に包み込む

闇はやさしい
そこでは君を思う事も
そこでは青空を思う事も
みな同じ様に
溶かしてしまう

闇はやさしい
そこは ....
十年後の僕が 笑っているために
いま僕は 別れを選ぼう

十年後の僕が 笑っているために
いま僕は 寂しさを選ぼう

十年後の僕が 笑っているために
いま僕は 悔しさを選ぼう

そし ....
姉は鏡を持って出てきた
お母さんは?
と聞くと
買い物に行った
と言った

彼女は看護士をやっていて
だから、医者とは絶対に結婚しないそうだ
まだ、結婚に可能性のある姉が
希望をひと ....
公園の木々は
真っ黒な影を映しだし
セミの鳴き声が
コンクリートに反射する
コンビニまで全員ダッシュ
ラーメン屋から野球中継が漏れてくる


この汗は熱気のせいじゃない
自分でもよく ....
ありがとう
僕らの朝食
光あふれる幸福な食卓に
小型の爆弾は落ちた

ばらばらになって美しく輝く体を
ひとつひとつ拾い集め
元に戻していく
どちらのものかわからないところは
昔のよう ....
私待ちきれなかったの
あの頃の情熱はもう私にはないけれど
あの頃のときめきは
今でも私の中に生きているわ

また私の好きな季節がやって来て
あなたと出会った頃を思い出したの

鮮やかな ....
優しい人になるのは難しいのに
優しくない人になるのは容易い

眉間に皺寄せて不機嫌そうに言い放てばいい。


優しい人になるのは難しいのに
優しい人のふりをするのは容易い

その顔に ....
世界の殆どは

僕の知らないこと

世界の殆どは

僕には理解不可能なこと

だけど

世界の全てを知る必要も

全てを理解する必要もないんだ

世界のほんのひとつまみさえ ....
 
海辺に残した
叫び声を抱いて
自分を疑い 受け入れる。

うまく吐き出せないまま
膨らんでいく
重い重い「愛」と言い聞かせ
鎖に近い感覚で。

壊れる前に手を離せるほど
器用 ....
同じフロアの同じ間取り
南西向きの小さなワンルーム
好きなひとの去ったベッドに横たわり
ひとりの男の死を想ってみる

駅前のスーパーで買い物を済ませ
近く有料になるとかのレジ袋をぶら下げ
 ....
静かな森の夜
美しい花々の庭を通り
白い砂利道を歩いてゆきますと
古びた像の前へさしかかり
ひとすじの風が
私の耳に何かを運んできたのです

はっきりとした意識はありませんが
ぼんやり ....
熱を受け止めたアスファルトに
裸足で触れる。

それは ほんの少し生温く
でも 夜の風には逆らえず
この体温を奪うように

冷たく冷たく、
消えてしまいそうなほど。



 ....
すこし昔の話をしよう
僕らがまだ幼くて
あまりに子供だった時の事を

覚えてるかな
手のひらにのせた楓の葉を
引き裂き 引き裂き
空に舞い上げた日の事を
母さんが好きだった桜の花を
 ....
そぐわないものに心惹かれるのです。

アスファルトから伸びるたくましい雑草や、
青々と茂り視界を遮る街路樹や、
花束の中で枯れてしまった一輪の花に。



その景色に溶け込んでいない存 ....
伝えたいことを一気に打ち込んだら
何て書いてあるのか解らなくなった

変換キーを押すたびに
簡単なセリフが難しくなってゆく

それでも送信する

不思議と
何かを伝えた気になり
不 ....
艶めかしく
雨に濡れた髪

差し出された謝罪の言葉と赤い傘


どちらも受け取らず

ただ
あなたを誘惑してる
濡れた髪


言葉も傘もいらないの
抱き締めてほしいだけ
 ....
おまじない

君の名前を書く
君の名前を書く
君の名前を三度書く

そうしたら

嬉しくなって

なんでも叶う気がしてきた





 信じられる

信じられる ....
おとなになるから。
もう泣くのは止めるのだと
きみは言う。

ぼくたちはまるっきりこどもで
お互いの身体に恐る恐る手を伸ばしながらも
やっぱりこどもで

おとなになりたいのかと ....
はじめは
音もなくただ
切り取られた絵を
見ているようだった

気付けば
あたりいちめん
降り続いていた
ほそく長い銀色の

むせ返す空気を
土に
留めておくように


 ....
僕は宇宙を持っている
体の中に宇宙を秘めている
其処には地球があり
空があり 大地が広がっている

季節が巡り
花が咲いては散る
風が吹いては止み
波が荒れては穏やかになる

川が ....
{画像=080622022551.jpg}

今日もまた
窓硝子に映った自分を見て、
少し微笑んでみせる。

いつもの挨拶
いつもの仕草、

駅前の喫茶店の指定席、
リングノートに ....
楽しい時間を名残り惜しんで
さようならと家路を辿るその途中
柔らかくなったあたしの心
朝日を見た瞬間固まったんだ
あたしの居場所は此処じゃないよって
そんな言葉が胸の中で ....
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