くすんだ青いタイルに
ステンレスの浴槽
不純な鈍い銀に湯気
小粒の泡に満たされる壁
足は真っすぐ伸ばせない
狭い角ばった湯舟が
都会のビルの林の奥で
私を静かに待つオアシス
窓 ....
その奥にはいつも
僕がいた
誰かの家があって
誰かのように
そこで暮らしていた
その奥にはいつも
T字路の
道がふたつあった
僕はその部屋にいた
時々わからなく ....
はじめての出逢い
それは父親に肩車されてのこと
ガラスの向う側で
愛らしそうな顔して笹を食べていたっけ
何時でもいるのが当たり前
そんな存在でもあったような気がして
パンダってまた ....
波線の午後を
すりぬける腕
指の大きさ
夜のまぶしさ
花に埋もれ 花となり
花を生み 花を摘み
深く鏡を被る人
無数の火の穂の歩みの先へ
冬の浪の浪の浪へ
着 ....
わたしの棲む場所を流れる川に
水はない
誰かが
橋の上から捨てた言葉を
灰色のさかながついばんでいる
*
夏の暑い日、わたしは
忘れてしまいたい過去の過ちと ....
080513
水色の空に雲が流れ
時間が止まっているようにも見える
体育館では
子供たちが遊んでいる
にぎやかな声に
忘れかけた記憶 ....
080510
生まれたばかりの赤ん坊
歳を喰った赤ん坊
仲良くならんではしゃいでる
これから通る寄り道は
怖いお化けが威張ってる
拳骨 たんこぶ 雛あ ....
激しさの夜を覚えているかい?
立ち止まる君はうすい雨に濡れていた
月が照らしてた
灰色の月がそっと
流れゆく雲は魚の群れのよう
風の音は映写機のようにまわり続けて
吐く息は花のように咲 ....
残像を組み立てていました
それは最果ても永遠も知らぬ 孤独な作業でした
自分の醜悪さと隅っこに残った光 それだけが材料だったのです
それで あなたを 作れると 思っていました
思い出の ....
一週間後に脳の手術をする
八十八の祖母の部屋に
慰めの言葉もみつからぬまま
顔を出そうとした
{ルビ襖=ふすま}の隙間から
すべての恐れを一時忘れた
安らかな寝息が聞こえた ....
沼に沈み
泥を愛した
苦しく重いこころを
抱きしめたまま
窒息する森
痺れた月光
吐き出せない砂利のように
時の流れが喉に詰まる
翳りの中の黒い影
どこにもいけずにたゆたって
....
円型劇場を模した半円状の空中庭園
切り取られた空も等間隔に並ぶ樹木も
思わせぶりだけど何の意味もなくて
ただ造形の美しさだけを求めたもの
こんなところで超芸術に出会えるとは
それが証 ....
時雨れて 灯る
電飾の街に
密かに流れている 音楽
それぞれの想いに
灰にむせぶ
軒の低い 並びに
人 人は傘に身を寄せて 通り過ぎ
雨足に歩道は すっかり
足音と ....
いつもじとじと湿っているこの街が
珍しくからっとしている
空に雲はなく
赤裸々に青を露出させている
そしてぼくは手帳の予定をなぞる
風は穏やかに通り過ぎ
なにごともない
なのに
....
迷いや憂いが
くもらぬように
目から
胸から
耳の奥から
にごりに満ちて
澄み渡れ、
春
愛するべきと
かなしむべきと
つつしむべきと叫ぶべきとに
....
080509
神経質な男がいた
体温計の目盛りが
37℃を越えたと
大騒ぎする眼をなだめ
再測定を促すためにも
新たな予兆が期待される
男は毎夜壁を抜け
....
そして 奴らに
その カルマ 刈らせて・・・
あなたにも彼にも
この世の生存の月・日のカルマを
刈っていただく
私のカルマ あなたの 父の 母の 子の カルマ
組織としての ....
お愛想だと判っていても
みょうな期待を持たされてしまう
口ぐせなんだよね
未来と繋がっているようで
繋がってなくて
この連休の天気予報みたいに当てにならない
悪気なんて無いのだ ....
風に乗せて飛ばす花びら
薄紫色の想いを込めて
勿忘草の空へ問いかけるの
憶えているかしら 花の色
風も季節もあの頃のまま
ただあなたの心だけ変わったの
ねえ時を止めて
おとぎ話をこわさな ....
砂で海を
中和できますか
青で水色を
中和できますか
さみしさには孤独
私は黙る
何時間も何時間も
ずっと黙る
フラスコの水 そそぐみたいに
時間を私たちに{ルビ ....
最後の /色
残されたままに/
/ひとつの ....
紙の資料と液晶の画面を見比べながら
音のない空間で独り言を繰り返す
大概が自身への愚痴でしかなく
誰かに聞かせる類とは言い難い
大型連休の中日とはいえ
どうせ家に居てもやる事もなく
約 ....
海岸線のガードレールでもなく
尾根を越えていく高圧線でもない
届こうとするものは
いつも不完全で ただ
どこか、まで続いていく
アルシオネの円周でも
火星が結ぶ軌道でもない
繰り返す ....
ワディ,
その涙を、舌で拭うのは僕の喜び。
涙の味は変わらない。午後も、夕暮れ時でも。
だから、泣きたくなったら教えて欲しい。
その涙を、舌で拭うのは僕の喜び。
それは、僕だ ....
近くの。通勤の途中にラブホテルが3軒、軒を並べてるんだけど。
まわりがふつうの住宅街なのでおかしな感じだけど、もとはといえばこのあたり、細い路地の入り組んだ下町だったからね。もともとからあるんだ ....
.
雨を遮る為に差していた傘を
あなたに突き刺した
雨水と血液が混ざって
傘の先端から私の手元に届く
傘をまた開こうとしても
あなたの骨にぶつかって開けない
私の両手は真っ赤
頭か ....
人身事故開脚
あなたなんでバレエ
電車の中で眠って
あなたなんでドア
辞めても辞めても連結する車両
ふと目を覚ますと汗だくだくで
額を拭う
何かが剥がれる
あなたなんで肉 ....
「伸ばしたときには
すぐ先の庭で
私のしたいが
転がることでしょう
時に、唇は
鼓膜を
突き動かすために
震えるのだといいます
背後に広がるうみ ....
小学生の頃、父と釣りに行った
昼過ぎから夕方まで
魚は一匹も釣れなかった
はら減ったべ?
タバコを吸いながら父は
僕にそう聞いた
きゅうにおなかが空いてきて
おもわず
....
長い間待ち望んでいた瞬間が訪れる
受付の看護士さんに案内され
病院らしい匂いのする待合室の長椅子に
わたしはひとりで腰掛けていた
手術自体はあっと言う間ですから
こころにメスを入れる ....
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