「ばかものよ!」

なんて言い切れるなら良いのだけどね

「もしかして」

そんな枕ことばで思いの丈をごまかしたり
まるで何事も無かったかのように
飼いはじめたばかりの小鳥の世話を焼い ....
ただいま と思いながら両手を下に広げる
林檎畑は収穫のための作業で忙しい
陽があたるように実の回りの葉を取るため
晴天の日曜日 実家に帰る

草を分ける土の道 人の歩いた道
風にそれる 緑 ....
辺境を目指して隊商は
何も遮蔽物の無い太陽の炎の先を歩く
必要以上に熱い砂の上を
ただひたすら駱駝とともに
テクテクのテクテクのてくてく
歩いて歩いて歩いて歩いた

目的地はバスラ
ロ ....
この世のうわずみを
あらかた舐めてしまった

僕は

もう

面白がらなければ
何も面白くないし
欲しがらなければ
何も欲しくない

この世のうわずみは
どれも同じような ....
(私はいつも仰向けで寝入り
 決まって仰向けで目を覚ます)

その日天井のしみは、妹のクラスメイトの顔だった
昼下がりに学校を早引けしたきり妹は姿をくらました

(私はいつも仰向けで寝入り ....
女を抱きたい気分でもなく
ただ、見ていたい
風がセピア色
入道雲の思い出
「バニラスカイ」を見て
あなたはどう思った?
彼女の言葉を思い出す
力を失った男が
荒野をさすらう時
相棒は ....
カウンターの背の高いスツールに腰掛け
グラスに注がれたバーボン
氷のゴツゴツした表面を覆いながら滑り落ちる
琥珀色の液体にジッと
視線を這わせ

すでに結露したグラスを捧げ
グビリと ....
かたくなな心を
少し開放して
ほら風がふく
あなたのからだに触れてくよ

あなたが罪に泣いて
苦しむ気持ちは
話さないでいいよ

全部話すだけがいいってことじゃないよ
全部ってなん ....
私は想う
あなたと出会う
その事実を
あなたの意味を

これから
私は失っていく
例えば友を
痛みを

そのとき
私が還れるために
北極点のすがしさで
あなたが

たとえ ....
赤い月夜の森の中を
恋人達が無言に行く
凍った大気と闇の道を
二人は抱き合って行く
抱き上げられた女は
男の肩に頭を預け
柔らかに目を伏せて
その温かさに耳を着け
胸の鼓動を感じている ....
 
 
髪に触れる、鮫
独白の跡
カレンダー通りに呼吸する
日々に疎いものだから
 
冷たい泡と泡の間に
ぼんやりとアスファルトの道路
小便の臭い
蚊のような肩幅
 
バス停 ....
沼田城址公園の猫

その猫はチャトラ
顔は大きいが痩せていて
バランスが無い。
愛想が頗る良いが、下品ではない。
飼い猫にしては痩せている。
野良であろうか がっついてる。

のっそ ....
いつも銅像の姿で座っていた 
認知症の婆ちゃんは、ある日 
死んでしまった爺ちゃんを探して 
杖を放り出し、雨にずぶ濡れながら 
駅までの一本道を、ずんずん歩いた。 

最近、壁の前に立ち ....
光りをなくした
名もない星たちが
うつむいては 化石のように
眠っている



ちゃんと笑ってあげたら
隙間に触れることだって できたのに
平穏という残酷な家の灯りに
夜の積み木を ....
京成金町の駅看板
その間のアーケード
寂れた一角に
金モールの看板

ケバイ電飾に縁取られた
ストリップ小屋
ケイトさんの薄汚れた
衣装とすらりと伸びた両足の間に
はげかかったおやじ ....
<スクリュー・ドライバー>


時間のネジを緩めたら

傷ついた過去が星空になる

空間のネジを緩めたら

縺れた風景が花園になる

無色透明のネジ回しで

日常の窓枠を ....
立ち止まるひと
立ち止まらないひと

その違いってなんなんだろうね

わたしなんか立ち止まらないひとだと思ってたのに
こんなとこに5年間も立ち止まってしまっていて

指先器用でギターと ....
 もうふた月ほどたつだろうか。わたしは毎日、すこしずつ家財を捨てている。家財、といっても、どれもさまつな――そのほとんどは夫と共有して、それなりの思い出がつまっているのだろうが、もはやさまつとしかいい .... 過ぎてゆく時間に
恨みさえ覚えて
「焦らないで」
君の言葉に耳も貸さずに
駅のプラットホームから
飛び降りるチャンスを伺っていた

こんな夜空が
あったんだ
月の出る
星の夜が
 ....
{引用=ほろほろとくずれはしない鍵の化石があなたのからだをひらいています
記憶は銀河のように 白い、黒い乳房のあわいをすり抜ける
あたたかな指先であなたの軌跡に限りなく薄い爪痕 ....
耳の奥で聴こえる
パンキッシュなガールズソング
なぜだか
涙が出て
止まらない

十五夜
白い月
草のチクチク
土の匂い
流れていく雲
秋の風

君が僕を見守ってくれてるって ....
連休の飛石に
ぽつんと取り残された
ニュートラルな朝
激しい雨と雷鳴に
追い立てられるように
夏は逝った

あまりに唐突に
ぽろんと吐き出された
肌寒い空白
断末魔の雨音と
 ....
若い女性に人気があるクレープを
男子高校生たちは売ろうと決意した

クレープは売る前に
クレープは包むものだ

経営観は強気の攻め一本
結果については勝つか負けるか
の二分法
若気の ....
レモン色のチューリップが
それは雨天のせせらぎであって
顔は飛沫(しぶき)をはじいていたのです

あなたは最初の花ですか
植物図鑑のはじめですか
あなたは「赤」のはずなのに
あなたの夢み ....
川の岩盤を流れる水は
岩盤の裂け目から
襞の入った白いレースのカーテンとなり
直下の岩盤に落下した水はまた元の流れとなり

水は岩肌を滑るように流れ
そのぬめぬめした岩底には
泡一つ遠目 ....
僕は、それを、思います
それ、は、空、を、思います
空、は、雲、が、浮かびます
雲、は、遠く、に、流れます
遠く、に、心、が、向かいます
心、が、きしり、と痛みます
きしり、と、君を、思い ....
用を足すだけなんだけどね

うら寂しい公園の片隅にあるのは決まって便所ってやつで

おおむね和式の便器しかなくて
紙なんか無くて
げげげのお友だちなんかの手が暗闇からぬらりひょん

べ ....
 
 
現代詩手帖を
ツタヤで立ち読みした

 イチローが
 内野安打を打つたびに
 子どもが一人死ぬ

というような、うろ覚えだが
そんな詩があって
胸を打った

その後
 ....
 
 
土手に生い茂る草と草の間に
誰かの忘れて行った眼が
うずもれている

眼が見てきたものの記憶は
その中には残っていない
ただ、かつて前にいる人の涙を見て
自分も涙を流した気が ....
ぼくはこどもの老人ホームみたいなところにいた

親と暮らせないこどもは

この世に多いような気もしていたし

周りがそんなふうな子ばかりだったから

そう思っていたのかも知れない

 ....
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