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目の前の何でもない風景は 
独りの画家が絵筆を手に取れば 
真っ白なキャンバスにあらわれる 
一枚の美しい夢になる 

たとえばそれは 
{ルビ陽炎=かげろう}揺らめく夏の坂道を 
杖を ....
黄昏の陽は降りそそぎ 
無数の葉群が{ルビ煌々=きらきら}踊る 
避暑地の村で 
透きとほった風は吹き抜け 

木々の囁く歌に囲まれ  
立ち尽くす彼は 
いつも、夢に視ていた 

 ....
初めてあいさつに行ったあの日 
「箸にも棒にも引っ掛からん奴だ!」
と言われ互いにテーブルを平手で叩いた 
嫁さんの父さんが 

同居を始めて数日後 
仕事から帰り 
下の階で勉強する僕 ....
 今夜は、僕が特に親しみを感じる詩の友が集う忘れ得ぬ日なので、僕が最も大切な{ルビ女=ひと}と出逢った{ルビ縁=えにし}の糸を{ルビ遡=さかのぼ}ってゆくことで、人と人の・・僕と彼女の出逢いの不思議を .... いつも銅像の姿で座っていた 
認知症の婆ちゃんは、ある日 
死んでしまった爺ちゃんを探して 
杖を放り出し、雨にずぶ濡れながら 
駅までの一本道を、ずんずん歩いた。 

最近、壁の前に立ち ....
夜道に伸びているのは 
棒っきれの姿で立ち尽くす 
私自身の、影でした。 

深夜の川のせせらぎだけが 
無心のうたを囁きながら 
何処か見知らぬ明日の方へ 
流れてゆくのでした 

 ....
指紋を眺めると、そこに宇宙があった。切 
株を覗くと、そこに宇宙があった。時計を
見上げれば、秒針の音が絶えず響いていた。  
日常の風に紛れていつも周囲に渦巻いてい
る、それぞれの宇宙。肩を ....
婆ちゃんが三途の川を渡ってから 
いつのまにやら9ヶ月 

日曜の朝早く目覚めた僕は 
思いついたように動き出し  
あまりの遺品の多さに 
ほったらかしていた
戸棚の奥から 
次から ....
夏の夜風にあたろうと 
歩いたいつもの道影に 
黒い{ルビ塊=かたまり}が、ひとつ。 

四つん這いの蛙はぢっと 
夜闇を、睨みつけていた 

翌朝歩いた{ルビ同=おんな}じ場所に 
 ....
工場には 
一つの巨きい機械が常に作動し 
ベルトの上に運ばれる 
「商品」は次々に仕上がり 

( 巨きい機械を組織する 
( 無数の小さい歯車達は 
( 涙を流す、暇も無い・・・ 
 ....
カウンターに 
二つ並んだ 
赤と白のワイングラス 

君は言う 
「はっとりさんは、孤独なの・・・?」 

僕は言う 
「詩人は皆、寂しがり屋なのかなぁ・・・」 

君は言う 
 ....
僕は今、多摩の乞田川沿いにある喫茶店で、 
この手紙を書いています。時計の針はすでに
正午を廻り、歓びの時が近づいているのを感
じます。木目の壁に掛けられた額縁の中の水
彩画は広い草原で、若い ....
母校の玄関前の 
階段に腰かけ 
近所の青年達がキャッチボールをする 
{ルビ人気=ひとけ}少ない校庭をみつめる 
夕暮れの刻 

瞳を閉じれば 
22年前の夏 
陽炎の ....
初老の母ちゃんを乗せた 
旅客機は 
赤ちゃんを産んで間もない 
姉がいる富山を目指し 
羽田空港の滑走路から 
大空へ 
飛んでいった 

定年をとうに過ぎた親父は 
警備の泊まり ....
くたびれた足を引きずって 
いつもの夜道を帰ってきたら 
祖母の部屋の窓はまっ暗で 
もう明かりの灯らぬことに 
今更ながら気がついた 

玄関のドアを開いて 
階段を上がり入った部屋の ....
今月の「ぽえとりー劇場」のオープニングでは、 
一年前に世を去った詩友の快晴君に 
生前Ben’sCafeで会った時にもらった 
ホチキスで束ねた詩集から二篇の詩を朗読しました。 

 ....
「 いってきます 」 

顔を覆う白い布を手に取り 
もう瞳を開くことのない 
祖母のきれいな顔に 
一言を告げてから 
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く 
散歩日和の道を歩く 
 ....
PC画面の暗闇で 
林檎が独り 
浮かんでいる 

紅い皮の傷口から 
白い肌を晒しながら 

( 昔々、楽園にいた 
( アダムとイヴを誘惑した 
( 私は紅い林檎です  

 ....
私は今日も、顔を洗う。 

両手で覆った顔を上げて 
目に映る何でもない日常が 
常に真新しい(今)であるように 


  * 


もう会うこともない 
ある人が 
いつか何 ....
今迄に
幸せのボールを取り損ね 
ベンチ裏で独り、涙を手で拭い  
辛酸を{ルビ嘗=な}め尽くしてきた 
君よ 

思い切り 
空振り三振すればいい 
被ったヘルメットが 
吹っ飛ぶ ....
どうやら僕は
今迄の思い出を 
大事にしすぎたようだ 

部屋の中は 
まだ終えてない宿題みたいな 
山積みの本  

ポケットの中は 
札は無くともささやかな記念日の ....
夜道に光る自動販売機の横に 
「TRASH」と黒字で書かれた白いゴミ箱が 
暗闇の丸い口を開けていた  

空っぽのペットボトルは棄ててもいいが 
棄ててはいけないものもある 

旅人の ....
「 よいしょぉ・・・! 」 

どしゃぶりの雨の中 
三人の男は 
橋の欄干にぶら下がり 
川へ落ちそうな独りの女を 
心を一つに、引き上げた。 

(ソノ時彼ハ、ジーンズノ腰縁ヲグィ ....
「免許を取るには、年齢位の金がかかる」 

誰かさんが言ってた通り 
33歳にして33万という金を 
母ちゃんは惜しげもなく貸してくれた 

二俣川で筆記試験に受かり 
初めて免許を手に ....
「オクターブ」という 
ぼくの素敵な詩友の本 

表紙を照らす 
オレンジの陽だまりが 
不思議な熱で 
夏風邪に冷えたぼくを 
温める 


頁を開くと、追悼詩。 


若 ....
「腐った花を捨ててきて!」 

主任が言うので部下の僕は 
ぐらじおらすのうなだれた 
大きな花瓶を両手に抱え 
流しのある部屋へ入った 


  かちゃり 


背後から入って ....
三日後にわたしは 
三十三年間着ていたわたしを脱いで 
風の衣を着るだろう 

その時世界の何処かに響く 
あの産声が 
聞こえて来る 

その時空から降る 
透けた掌と差しのべるこ ....
輪郭のゆがんだ 
{ルビ朧=おぼろ}月の見守る 
灰色の夜の家々 

屋根に置かれた 
{ルビ梯子=はしご}の頂に危うく腰かけ 
{ルビ襤褸=ぼろ}着を纏う煙突掃除の少年 

ほっぺた ....
一週間後に脳の手術をする 
八十八の祖母の部屋に 
慰めの言葉もみつからぬまま 
顔を出そうとした 

{ルビ襖=ふすま}の隙間から 
すべての恐れを一時忘れた 
安らかな寝息が聞こえた ....
人々の行き交う夕暮れの通りに 
古びた本が 
不思議と誰にも蹴飛ばされず 
墓石のように立っていた 

蹴飛ばされないのではなく 
本のからだが透けているのだ 

聴いている

時 ....
渡 ひろこさんの服部 剛さんおすすめリスト(72)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
白いキャンバス- 服部 剛自由詩411-8-14
涙の遺言_ー野村英夫への手紙ー_- 服部 剛自由詩511-2-11
甘酒の味_- 服部 剛自由詩411-2-7
結婚披露パーティーで読んだ手紙_- 服部 剛散文(批評 ...7*10-10-23
旅の始まり_- 服部 剛自由詩610-9-28
月夜の道_- 服部 剛自由詩6*10-2-16
ひとつの宇宙_- 服部 剛自由詩5*10-2-3
祖母の家出_- 服部 剛自由詩609-10-25
蛙の亡骸_- 服部 剛自由詩6*09-8-28
イデアの国_- 服部 剛自由詩809-5-15
孤独ノ方程式_- 服部 剛自由詩209-5-11
結婚する詩友への祝辞_- 服部 剛自由詩709-5-4
空の白球_〜母校の校庭にて〜- 服部 剛自由詩309-4-6
幸福の食卓_- 服部 剛自由詩1809-4-3
遺影のまなざし_ー四十九日前夜ー_- 服部 剛自由詩2009-3-10
風になった友からの伝言_- 服部 剛散文(批評 ...509-2-26
海に還った祖母に捧ぐ_- 服部 剛自由詩3509-1-24
林檎の転生_- 服部 剛自由詩408-11-18
(_秋の日の断章_)_- 服部 剛自由詩508-10-22
Ball_Palk_Dream_- 服部 剛自由詩308-9-30
Freedom_Song_- 服部 剛自由詩32*08-9-22
(_無題_)- 服部 剛自由詩408-9-5
いのちの綱_- 服部 剛自由詩908-9-1
免許を取れた日_- 服部 剛自由詩27+*08-8-26
ジムノペディ_- 服部 剛自由詩10*08-8-12
まりあ像__- 服部 剛自由詩308-7-18
風の衣_- 服部 剛自由詩2008-7-8
煙突掃除の少年_- 服部 剛自由詩4*08-6-29
祖母の寝息_- 服部 剛自由詩108-5-11
詩人の肖像- 服部 剛自由詩11*08-5-2

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