草食べて帰ってきたら
ご主人がすてきに見えた
台所で皿を洗う
健康スリッパを履いたご主人の
もっちりしたふくらはぎに
すりすりしてみる


   あっ、おかえり


なにかこわく ....
星の洪水で空が溢れそうな夜
私はまだ穢れのない身体と共に
あなたの衣服を織りながら
あなたに添うことを思います

機小屋の周りには村人が火をたいて
私が逃れられぬよう夜通し見張り ....
花かんむり
シロツメクサの匂い

透明色
ソーダ水の水面の波紋

むせ返る夏を
不器用に泳いで
よろめいた夕暮れ時に涙

びーだま、の

陽炎のアスファルトで
かなしい音を立 ....
春へと続く回廊は
まだ細くて
差し込む光に
白く歪んでいる
三月は
足裏を流れる砂の速さで
大切なものを{ルビ攫=さら}っては
あやふやなものばかりを
残してゆく


  いくつ ....
午後の教室
一番後ろの席で
眠りとの間に揺れていると
ずっと遠くの方に喧騒が消えていく
穏やかに舞う埃が
知らない間に袖に張り付いて
一緒になって光合成していた
金曜の午後

ノート ....
指先はあたたかい
たぶん、その、ほどけていく瞬間まで
写真の空は記憶よりも鮮やかで
古い団地の隙間から
見上げるのはたくさんの
呼吸のない、窓

手のひらに
折りたたんだ空
に、記載 ....
風の吹かない店内で プロペラが回る
喫茶店の隅っこ 私を優しく包む 木目の世界
雨漏りの音がする夕暮れ 待ち人来ず
軋む床の下からは ガタンゴトン
地下鉄の音がする
洗い物を洗う
皿を重ね ....
誰もいなくなった教室に
少年が忘れ物を取りに戻ってきた
いつもの教室は
いつもとは違う匂いがした
別に急いで帰らなくてもいいのだが
教室の中の空気を乱すのを恐れた
駆け足で自分の机に向かい ....
3月のつぼみをほどかぬよう
小さく軽くノックする
唇をつけるほどにのぞきこむ
私のこころ乱すほどその姿美しく
手の平で包んで奪い去ってしまいたいと言ったのなら
快活にあははと笑うだろう
君 ....
(また、お出かけなんだって、つまんない
保育園で唯一娘のことを
好き
と言って遊んでくれた友達は
先月突然、家庭の事情で引っ越してしまった

この町にも
あの町にも
ひしめく家並み
 ....
汚れのない響き 細かく震える音
その弓で 僕の魂も奏でて欲しい

唇に そっと指をのせてみたい
僕のタクトで 思い切り鳴かしてみたい 


ベートーベンも ワーグナーも きっと君に惚れて ....
きみをひらくと
なかから ちいさなきみが
ぽろぽろと はだかのままで
たくさんの 砂金のようにこぼれて
たくさんのきみは 少しはずかしそうに
ひざをかかえてる

 ....
{ルビ微睡=まどろ}んで、乗り過ごすうちに
春まで来てしまった

0番線から広がる風景は
いつかの記憶と曖昧につながっていて
舞いあがる風のぬくもりが
薄紅の小路や
石造りの橋や
覗き ....
明け方の空を見てしまった
月がだんだん白んでくる

 あぁもう少しで消えてしまう・・・

そう思いながらベッドにもぐりこんで


あぁそうか
眠れないのはキミに逢っていないから
思 ....
ボクはずっと見てた

キミが狼に食べられるところを

笑ったよね

キミは笑ったんだ

狼が口をあけた瞬間

知っていたんだろ?

そこに寝ているのはおばあさんじゃないって
 ....
確かにこの街にいた
お口を使って生きていた
わたしのねえちゃん

お口を使うお仕事

テレアポ
アナウンサー

明日の天気をお知らせします
晴れのち曇り
北風強く
ひゅうひゅう ....
現場、吉祥寺
マクドナルド井の頭公園店、店舗改装におけるはつり、解体作業。
ともに働くおっさんたちは寡黙だし
公園には猫や水鳥がいる
10時と3時の休憩にはそこに猫をさわりに行く
 ....
東京特許許可局
俺はおまえを許可しない
おまえのような早口言葉は到底容認することができない
おまえだけじゃない
赤巻紙青巻紙黄巻紙や新春シャンソンショーにも伝えておけ
ふざけるなって
おま ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく

 夏の朝
 影に縁取られた街路
 やわらかな緑の丘
 乾いたプラットフォーム
 きらめきに溢れた ....
街路樹に抱きついて愛情をほしがる
そうしておまえは湯豆腐が食べたいって言う
俺は冷奴が食べたい
おまえの肌のように白く冷たい

交差点がわめき散らしている
スピーカーつ ....
シンバルたたけ、おさるのおもちゃ
目玉をぐりぐり回転させて
前歯をぎぃぎぃむき出して
シンバルたたけ、おさるのおもちゃ ピッ

ピッ。コンビ二の緑の制服を着たきみは
手際よくカゴから商品を ....
始まる
始まるよ
パレードが

人を愛し
言葉を生み
血を
絶えることない血を伝い
パレードが始まるよ
笑ってる
笑ってる
いじめられっ子のあの子も
 ....
 広い空の見えない街角
 電線に雀が止まってさえずる
 地を這いつくばる俺達をどう見ているのだろう
 
 擦り切れて勢いのなくなった魂は
 春の暖かな太陽を切望している
 透き通るよう ....
もしもキミと出会っていなければ
忘れる事が出来たとしたのなら
今とは違う路を歩んでいたでしょう
時に神は試練を与え
何かを試そうとしているかのように

止まる事を許されない日々に
もうき ....
朝起きるとボスだった
眉間に深い皺が刻まれていたが
特に不満があるわけではなかった

煙草をつまんで深々と吸い込む
ブラインドはない
のでカーテンから覗く
何ということのない休日の朝が広 ....
いつか君の病気が治ったら
どこにでも行こう
そのときまでに俺は
いろんなところを見ておくから

いつか君の病気が治ったら
カンパイしよう
缶ビールでいいよ
もう薬はいらない ....
風に乗って流れ聞こえるピアノの音

集中力が途切れて
ふらふらピアノの前へ
「お前は俺を惹きつける何かがあるのかい?」
そっとピアニッシシモで呟く

破れたスリッパから
グロテスクな肉 ....
背中がまがっているよ
葉巻が落ちたよ
おじいちゃん
手を 貸すよ
おじいちゃん

買い物のビニール袋が
たくさんだよ
おばあちゃん
手を 貸すよ
おばあちゃん
 ....
あいかわらず武士だった
参代する日でもなかろうに
女房殿に渡された温かい包みを抱えて
坂を下ってゆく

*

何やら人垣ができていて
たいそうな{ルビ賑=にぎ}わいである
隣の女房が ....
ファスナーあいてるぜ
ビーズのドレス
子羊は
オーストラリアで死んで凍えて
この白い皿に乗って
おれたちの血肉になる

あたたかいから
おいしいから
たくさん ....
渡 ひろこさんのおすすめリスト(2910)
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