吹割の滝
……とある蛙

川の岩盤を流れる水は
岩盤の裂け目から
襞の入った白いレースのカーテンとなり
直下の岩盤に落下した水はまた元の流れとなり

水は岩肌を滑るように流れ
そのぬめぬめした岩底には
泡一つ遠目からは見えず
落下するとき初めて泡立つ
ただ岩肌の凹凸に沿って滑るように見えながら

百年二百年……
千年二千年……
いや九百万年前から延々と続く創造

気の遠くなるような年月
昼も夜もその造形を少しづつ
しかし、確実に変えて行く
次第に上流に移動する滝

利根川上流の奇観の
創造過程は
ただ思い巡らすだけで
見ることはできない。

一瞬を見ることはできても
経過を実感できない
それが事実という
それが真実というものだ。

※川底は溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)
気孔が減少し密度が高くなったもの

レンズ状の黒曜石など


自由詩 吹割の滝 Copyright ……とある蛙 2010-09-22 10:22:58
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