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夕暮れの
透明な指
そっと肌に
真紅は滴り
鮮血の痛み
残し 泣く
美しい 指先
奏でるピアノ
夕を呼び込む
楽譜に三日月の痕
冴え冴えと闇に堕ち
さめざめと ....
胸のボタンを外すとき
あなたの狡猾な指先を思い出す
背後から不器用そうに
それでいて
未来に待ち受けているものを欺くかのように
(それなのに忘れられないのは
部屋の灯りを消しても
情念の ....
夜の底を穿つ水音
眠れぬ魂のノクターン
聞いているのは無欲な死人
潰えた昨日を懐かしむ
夢路の扉は閉ざされて
明けない夜の牢獄で
呻いているのは咎人ばかり
その頃 ....
かすかな破裂音を立てて
冬眠中期の蜥蜴の夢は中断し
ブロック塀の上に捨て置かれた
白いビニール手袋が
道行く人を時折驚かせる
ゼラチンあるいはグミ状のものが
生成するのはまだ先のこと
....
{ルビ都会=まち}のなかで
電線に絡めとられた満月がわたしを見下ろす
おまえは自由なのだとでも言いたげに
「ほんとうのしがらみは見えないものなんだよ」
とつぶやいて
蛍光灯のした ....
雨のけむりがからだをぬらし
その刹那の一滴一瞬
服の埃が舞い上がり
微細な雲母のわずかな浮上と
急激な沈下がおこる
ひとつひとつの粒子たちは
街灯のかがやき
店の明かりをすいとり
....
私の中で歌っていた
リズムはもう死んで
あとには振子とぜんまいが
解体工場の鉄くず同然に
ゆっくりと瞬目しながら
光の中に溶け出していくのだった
....
夜の母校に忍び込んで
安い酒を飲みながら
グラスを窓から落として割る
黒板に一筋の白線
暗闇を引き裂く流れ星
先生、わたし正しい答えなんて、大人になっても分かりませんでし ....
細胞すべてが気づいてしまって
指の先から砂になる
寒さの合間で魚を逃がすと
私の鬼が ホウ と鳴く
息をするのは喉でない
呼吸をするのは肺でない
青い一つが ....
1.永遠の序章
(総論)
一人の少女が白い股から、鮮血を流してゆく、
夕暮れに、
今日も一つの真珠を、老女は丁寧に外してゆく。
それは来るべき季節への練習として、
周到に用意されて ....
叛滅への秒数を
やや秒数を擦り散らす
無く深き穴の底辺よ
吹き込んだ衷心
偽った哄笑共
殺伐
血塗られた靜刃
ただ
只一度だ
空裂を澱みの感触に
掻き毟れよ君
望 ....
暗闇のなかを片輪の百足虫が走る。
背中は凍りつくように冷めたい。
十時が一番うつくしい、君、
髪はながいほうがよい、
鏡は嘘しかつきようがない、
だって彼には腹というものがな ....
太陽が丹前の雲をぬぐうようにして
南まどのガラスを黄色に染める
きょうは北風のご機嫌がいいのだろう
プロムナードの並木のかげもあざやかだ
....
天蓋に 日 月 輝きあり
静かに 佇む 汀に 潮騒
天空に 漂う 色彩のうず
甘露の 滴り 綺羅に染む
濃い靄 明るい気息の賛美歌が
輝く海から 立ち昇り 漂い広がる
汀のあたり ....
はみ出した所から全てが始まった
海に浮かぶごみの中に紛れ込んだ
君宛の手紙を運ぶビンはもう
壊れきったままのものでしかなかった
それくらいいいんじゃないか
突然 ....
青くかわいた微笑が枯れている
丸められた角を
階段とする
素数が熱せられながら
現象をのぼっていく
さようならは一度きりであって
すがすがしい光ならば
いつであろうともやわらかく待っ ....
雑踏が、病死した町に流れる。空想上の子供が、まるで、のた打ち回ったような、町の静けさとあいまって、生死の雑踏である。全てが合掌のようにも聞こえるので、町中の老人は、神の頂で、天を打つ。
病死している ....
今夜この街の二十万のベッドの何割かの上で
愛が倦み、愛が生まれ、愛が壊れる。
ベッドは一つの水準である。
ある部屋のあるベッドに潜り込もうと
住民たちは昼間、さまざまに図り
汗を垂らし、涙を ....
心なんて要らないなんて嘘だ
残酷なまでに全てを詩にして
いつかきっと人を殺す気がする
そしてその死でさえも詩に
***
君が私に抱かれる事を望むなら俺は厭わない
ただ君はわかってい ....
青い硝子
浮かぶ絶望
夏の
向日葵
白い
白い光
僕が仰ぐ
黄色い花弁
風 揺れて
遠い記憶
鳥の
白い
骨
千切れた
白い
雲
....
鬼だ
「捨てられた」と
呟いた口からは牙が
「苦しい」と
抑えた胸は垂れ あばらが
涙があふれた目は
赤く濁り 血の涙が
「あなたに触れていたい」と
願っていた手は ....
名を呼べばいつでも来てくれる
君を犬だと思ったことはないけれど
ヒールの靴底で君をなじる至福
浴槽のなか 向かい合って足裏で君の頬を叩く至福
偶にね、
運転中の横顔見ながら噛み付きた ....
戦後まもなくだろう、
捨てられたガスマスクが
赤黒い錆を纏って
川の中で佇んでいる
傍らに
まだ新しい
マイルドセブンが沈む
ささくれのある人差し指で
水面に
彼の鼻先に
つぃ、と ....
ふりしきる雨
雨してしまう
雨の
冷たい
季節
星夜
の
さく{ルビ夜=や}
の
雨
の
下
影もなく
灯る
灯台の夜が
流体にひそみ
その吐息にふれれば
はち切れて ....
そうして 又 やって来た
そうだ 今日という 現状の
悪行を 必ず 果たしたという
確立が 天秤に かけられ
多くの 雛人形の 影 が
見て取れる
俺達である という 現状は
生死に ....
人が死ぬ時
その人には
何が見えているだろう
もしかしたら
もう
何も見えないかもしれない
世界の時間
が
ゆっくりになって
身体が
ゆっくりと
....
柵の外には自由が溢れているのに
何故か人は柵の中で生きる
ちょっと跨げば乗り越えられるのに
誰も跨ごうとはしない
自由の身になることを恐れ
しがらみから解き放たれることを拒絶し
狭い柵の中 ....
紫色の光が
車のフロントガラスを突き抜けると
冬の夜を始める
光は焦点へ集まり
紫は黒に変色し
やがては海を創り出す
緑と赤の点滅が
眼球のレンズを通り抜けると
冬の夜を始める
....
一
さあ、食べるんだ )))
黒いベルベットの目隠しが
君の自由を、覆い
与える匙の 潰しイチゴ。
――甘いだろ?
海のように ただ果てしなく拡がる、
波打つ絹の ....
*
遠くでぼくらが病んでいる
十一月の夕暮れに
落とした財布は
世界の意味にすっかり濡れて
もう使い物にならない
ちょうど
開かれることのない
窓の高さで生きる
ぼくらのよう ....
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