きらら
構造

雨のけむりがからだをぬらし
その刹那の一滴一瞬
服の埃が舞い上がり
微細な雲母のわずかな浮上と
急激な沈下がおこる

ひとつひとつの粒子たちは
街灯のかがやき
店の明かりをすいとり
それでも多量の粒子が
たたきつけるものだから
あそんでいるかのように
何度もなんどもくりかえす

これら結晶のたぐいの
物理現象としての振動にすぎぬ
感情構成は
人やけものと違っているから

東高円寺の駅前で
なかまと数千頭身以上もはなれた
孤独のさなかに笑みをうかべ
ただへばりつくだけの機会を
千年の恋人のように待ち

みちゆく車の音波振動で
分解してゆくわが身をたのしみ

あるいはペンキの塗装にまぎれこみ
表面張力に踊りながら
固化してゆくことに
無上の興をいだいている

ぼくのかんがえをつたえる
微弱な電気信号は
ほんのわずかなミクロンの単位で
肌の表層につきささった
それら雲母を

蒸気や電磁そのもので
微動させるということにきづかず
ぼくのかなしみにへばりつくことを
たのしんだ微細な粒子をたしかに
全身の表層でおどりつづけさせ

数億光年先の灯火のような
ほんのわずかな光で
彼らなりのやさしさで
くっきりぼくの輪郭のみを
うつしだそうとしていたのだ


自由詩 きらら Copyright 構造 2006-12-03 21:20:33
notebook Home 戻る