エス
朽木 裕

名を呼べばいつでも来てくれる
君を犬だと思ったことはないけれど

ヒールの靴底で君をなじる至福
浴槽のなか 向かい合って足裏で君の頬を叩く至福

偶にね、
運転中の横顔見ながら噛み付きたいと思ってる

皮膚の薄いその首筋 やわらかであたたかな耳朶

無理強いはしないよ 君は籠の中の鳥
でも羽根はもがない 無抵抗は趣味ではないので

もっといい声で啼いて泣いてないて
私が心底ぞくぞくするくらい

そのためなら私きっとなんでもする
もっと困って痛がって悦んで

もっともっと愛してあげるから


自由詩 エス Copyright 朽木 裕 2006-11-20 22:58:57
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