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遠くでぼくらが病んでいる
十一月の夕暮れに
落とした財布は
世界の意味にすっかり濡れて
もう使い物にならない
ちょうど
開かれることのない
窓の高さで生きる
ぼくらのよう ....
母さん
ぼくの血は
あの鳩の眼よりも
薄い色なのですか
すでに色褪せてしまった繃帯が
風になびくのです
母さん
ぼくはまだ
あのデパートの屋上で
迷子のままなのですか
いまでも ....
群青の
真っ直ぐな鉄道が
光っています
螺旋を描いて
鼓膜は くるくると 遠のきます
正午の意味に満たされ 初めて
私は 渇きを 知りました
――それは あなたのための――
心の底 ....
寂しいぜ
ミノフスキーの宇宙を
透明なカラス(それはガラスでできた凍えた烏)
が 堕ちてゆく 真空のなかを
音もたてず 堕ちてゆく
(のを義眼でみつめる)義妹は
バスにゆられる
寂しい群 ....