だいたいは同じ形の
だいたいは同じ色をした
少しずつ違う大きさのものを
中心から外へと
奥に
手前に
はしを重ねながら互い違いに
重なりと重なりとの間隔は
徐々に広げながら
....
夏の正午に駅が沈む
誰かが思い出さなければ
なくなってしまうかのように
向日葵が咲く、その近くで
若い駅員が打ち水をしている
息づかいは聞こえなくても
肩を見れば呼吸をして ....
{引用=
球体の遠心力が
技巧的な楽器の音のようにかき消えていった
技巧ではいつも歯が立たないのだから
やめておけば、と僕は
それにいった
それは歯をむき出して僕に反抗して
怒りに狂って ....
シナプスたちのように、うごきあい、点滅する
地上の生きた星たち
今日もどんなかんきょうにあろうと
かなで合っている
それを聴き入ったのは
目をとじれば
誰もが知らない顔の乗る移動の
車窓 ....
◆仄暗い図書館で凡ての文字が魔法のように、炎となった。本質的に材木(materia)を意味する材質がではなく、その本質が燃え上がっているのだ。だが、この幻視は、幻視が見せる炎に照らされてしか見ることは ....
{引用=
木洩れ日おちる
春の小道
端はにゆれる
野の草の
やわらかな
つややかな
風撫でる 葉先
(絡めた小指)
}
陽射しが 美しい絵画の色彩を奪っていくと言う
....
叶わなくてもけして
忘れられない
行方を失ったものばかり
歩道のコンクリートブロックに
しみこむ、缶コーヒーのこぼれた汚れ
途中で読みあきた文庫本にいくつも挟まれたしおりの
とどかない、そ ....
ぼくはずっと眠っていた
家並みの混んだ路地の奥
細い電線が空に絡まる保育園の
二階のしわくちゃな布団の上で まんまるに
ぼくの夢の上を白茶けた紙飛行機と
たくさんの紙の砲弾が行き来した
....
どぶみたいな雲のせいで
この世界には青空がない
手相占いによると
あれは雲なんかじゃなく
俺の因果が産んだ
ハイブリッドな霊だそうな
裏切った友人の
騙した女の
流した水子の
虐 ....
100220
空中回転に慣れすぎて
ひひひと笑う暇がない
朝日が昇りきった時刻
輪郭が伸びをして
すっくと立ち上がり
出かけた後に
影の ....
二月二日は猫の日でした
嘘です
ほんとは二月二十二日
にーにーにー、ほらね?
でもこれも、信じました?
今日は何の日
一年は
いつも誰かの命日ばかりで
今日は何の日
歴史 ....
{引用=
「で、例のA印刷さんの件なのですが」
と、病人が自分から語りだしたので
僕は面食らってしまった
まだ日の高い午後のはじめの市立病院
5階の、清潔な部屋で
病人は自分から口を開いた ....
季節の変わり目は
不思議と あいまいで、
みあきた建物たちの
街色は、いつもの
寡黙のまま
昨日とのくべつのない
今日を数えながらも、
オリオンをあとにしたら
きみを探し ....
あたまがおかしくなるようだ。
あのうたはもう、ひびかない。
こころが遠くにあるようだ。
手を伸ばしても、とどかない。
空回りするそらの向こうに、
今日も見えない星が出ている。
目が腫れるまで
言葉をつぎはぎして
しんぞうとのうみそを
縫い合わせておきたかった
調和と統合と平和の
マルの中で
哲学から解放されたかった
天地がひっくり返って、
宇宙人が攻めて ....
{引用=もし、もしいつか自分が子供を持つことになるのであれば
まずはじめに、土を踏ませてやりたい}
親鳥のもとを離れ旋回する羽は
ふわりふわりと人の波に襲われ
海は、海はまだかと
空は、 ....
私は立ち止まらない
この道を行くと決めた
匂いの蒸せる深森の内を
怪しげなけものみちであっても
感じるままに行方を選ぶ
暗がりを畏れて
夜は月を探す
闇の海原は私を奪ってゆく
私は ....
{引用=
ハルが鳴く
寂寞とした夜が明け
やわらかな陽射しが
小さな籠をみたす頃
デジタルのアラーム音に
携帯のモーニングコールに
沿って響く
心地よい声が
目覚めを誘う
....
深夜の冷たい台所で
古くなった冷蔵庫が自分で自分を解体していた
もう冷蔵庫であることに
いたたまれなくなったのだ
時々痛そうにはずしたりしながら
それでも手際よく仕事を進めていっ ....
ああっ、そういえば昨日だったんだよね
意図的に忘れてた訳じゃないし
これって何なんだろうね
「どうしてなんだよ!」
面と向って尋ねられたとしたら何て答えるべきかな
えっとさあ…
....
ひかりの反射を免れて曇り空の跡
つめたい水を浴びて閉じてゆく肌と
つめたい川に隔てられた母子
幾度も破かれては繰り返す眠りのうちに
再生されてゆく喉
結末の骨より吹きすさぶ逃げる月の速度 ....
悲しくても
涙は流さない
ショートしてしまうのです
すべてのプログラムがイン・プットされているなら
それでよいはず
機能を十分に果たせるように
あたしがいる、冷たい手をしたその指先に ....
黒ずんだ木の床にそっと頬をよせる
インクと機械油の匂いが染みついた床は
使いこまれた年月を
なめらかな感触でつたえてくる
古い印刷工場をリノベーションしたと
誰かが言ってたっけ
そ ....
冬の畑の渦巻き模様
雪原に融雪剤の渦巻き模様
美瑛三月の雪原の丘
たった十日の早い雪融けへ
スノーモビルによる散布
美瑛の美しい起伏は
パッチワークの丘
四月柔らかな陽光の中
....
あついあなたを貪った
わたしはもっとつめたくなった
月はいつだって
最適な摘み取り方を教えてくれる
誰かの白を滴らせるあなた
もう見当たらない
わたしの赤はどこですか
破瓜の夜はどこ ....
庭の中では
わたしは園丁です
剪定ばさみ片手に
いろいろ切り詰めてまわります
あおあおとした小枝
みずみずしい若葉
手を入れるべき季節というものはありますが
どれも好きなだけ伸びても ....
すきですきでたまらないもんだから
ちかづきすぎてこわしてしまったんだって
でもすきですきでたまらないもんだから
こわしたところにしるしをのこしてきたんだって
おうさまはなんにも ....
「花火」
行列を作って
並んだあの時
僕と君は
話をしながら
とろとろと進む列の
後をついていった。
僕は君に相槌を打ちながら
とろとろと進む速度に
正直イライラしていて
....
みずすましが
水を滑る
虫の比重は
水より軽い
あなたの舌が
私を滑る
あなたの声は
水より軽い
あなたの中に
潜ろうとする
私の比重は
水より どちら
あなたの浅 ....
銀のトレイン
夜を切り開いてゆく
その中で
静かな
穏やかな
フィルムをめくると
繊細な彫刻が並ぶ草の原
その中に
招き入れられる
きみは愛されている
きみは感じるままに
い ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74