角砂糖ひとつ分のダリで歪んだ
そんな私の記憶の個室
父が一杯の水を差し出す
母が一輪の花を差す
それがかつての始まり
最後に望む光景
角砂糖ふたつ分のダリで歪んだ
そんな私の記憶の個 ....
眠らないバスにのった
眠れないぼくは
あの野性化した雲といっしょに
あかるい夏の海辺をどこへむかっていたのだろう
写真でみただけの
マリアナ諸島の鮮やかなブル ....
頂点を仄青く明滅させる三角形が
部屋の片隅に居る
銀のお手玉をしながら
華奢なアルルカンが宙を歩いて過ぎる
星のいくつかが
音符に変わり また戻る
硝子瓶がひとりでに傾き
グ ....
雨が光のように鳴り
つぼみの冠を流れおちる
隔て 隔てられ 近づく咽
咽の上の咽
震える糸
不安を呑み
さらに渇き
片目を閉じる
降るものは降る
....
瑠璃色 空がはぜる
祈る子の贖罪がおわって
世界に太陽を取り戻した
水面に満ち足りて
みなぎる光を
トンボたちが拾っていく
きらめいて
またふりまいて
運びきれない
....
夏の朝
水蒸気の味
浜木綿の花が
手を繋いで作った
輪っかから
ヤマトシジミ
ヨロヨロ
飛び立つ
夏の雲
薄荷の匂い
忘れかけていた
青臭い記憶が
鼻先で弾けて
夢遊病者の影
ジワジワ
溶 ....
バラ色にエンジンが燃える瞬間に奇声と歓声が同時にあがる
崩壊してく高速ビルのなかでする最後の咳き込み
粘膜がいてーよちきしょー
あんなにぴんとしてすでに完璧に完成してたのに
それをうわ ....
{引用=
「おはよう、
せっせとお弁当箱に昼食を詰める
この世界のなんらかに収まりなさいと
話しかけてくる忙しげな背中
通学路に捨てられた雑誌には
艶びかりする牡牛の角と蛙の屍
女の子の ....
水で出来た線路の上を
指列車がやってくる
わたしは道路の言葉で話しかける
指列車は親指を振って応えてくれる
空から墜落しそうになっている空を
真夏の工場群が
かろうじて支え ....
産まれ生き苦しみそして死んでゆく
たった一行闘病短歌
日赤の病棟入り口掲示板
嘆歌とあって朝顔も書く
これからは口語短歌の詩人です
出来損ないの痛みを堪え
銀色に輝け外科 ....
私がとても遠いのだと思っていた人は
すぐ目の前にありました
なぜならその人は海だったのです
必要とあれば向こうから
そうでなければひいていきます
私がどんなに駿足でも
どれだけ望みを握 ....
曇った硝子窓。
向こう。
記憶。
ブランケットで身を包みながら、探し物。星屑、蜂蜜。水煮の缶詰。
そして、おやすみなさい。の、声。ため息、一つ。
あたたかい事から思いだしてし ....
小学校から帰って
叔父に自転車の運転を習う
家には大人用しかない
「両足がとどかないよ」
「おれだってとどかないよ」
叔父は自転車のサドルから腰をおろして
片足しかとどかない姿をぼくに見せ ....
{引用=
夕方の交差点にあふれだし出会う
苛立のつぶては骨までずぶ濡れにして
肩の汗に流れず浴室は
からだの痛みと感情の軋みをうったえる場所
真夜中につぶやきをひとつぶひとつぶ垂らし ....
風の中に飛び込んで
空を泳ぎ切る
湧き上がる入道雲まで
真っ青な空間を
かきわけて
辿り着く
遊びにきた子供らの声だけが聞こえる
足首に触らないでください
時につれ
舞い散る ....
言葉を叫ぼうとする祝日に
疲れた労働者の体を
不満の心の内側から
メロディとして歌う
校庭の中に集っている
サッカーの試合を
傍観していると
母校がやられた感じだった
速いシュート ....
きみは ぼくの かおをして
ぼくの きらいな ことをする
毎日 付き合う こころとことば
ぼくらはきついお酒を注ぎ合って
ぼくのつくるものときみのつくるものとが
似て重なって重苦しい
....
吹く風よ微笑む人の面影よネム絶え間なく船出の風情
朝ごとにアサガオその名に天国を青さに空を映して地上に
花、柘榴。タコさんウィンナ血の味を実に成す前に朱色地に散る
鬼の木は{ルビ ....
ダイエット目的にはじめたジョギングだったはずなのに
夢はホノルルマラソンなんて張り切っている
フルマラソンって42.195kmも走るんだよね
あの子の精神構造ってどうなっているんだろう
....
{引用=
真っ白い砂の中に混じる小石をじゃりと鳴らしながら、薄闇に光る下弦の月明かりが照らす平地を、真っ直ぐに歩いていく。そのうちに見えてくる、ゆるやかな勾配の坂道を登ったところにあるバス停で、 ....
たとえ私がいなくなっても
いつもと変わらぬ朝が来て
食卓を囲むことでしょう
悲しみは寝ぼけ眼の向こうに置いて
それぞれの宿題を鞄のなかに押し込め
忙しく顔を洗うのです
十一次元もあ ....
}羊水(春)
コイン・ロッカーのコインが着地する
その音を聞いて
呼気をつきはなす
わきまえてなまえを呼んでも
まだないのだから
うぶごえをあげる
こっちへ来なさい、
と あな ....
ここは雲の真底すずしい風が吹くじきに全てが雪崩れ落ちて来る
夕映えのお天気雨が東方の空高く架けた主虹副虹
緑から朱へまた赤からまた青へ 光と水のクロマトグラフィー
美しい挿絵のゲーテ ....
アリスはそこへ乱暴に投げだされ
黒い瞳に大粒の涙をためた
やがて朽ちてゆく散らされた意味の
灼熱に乾いたサハラカラーの砂漠の丘に
一面、蒼く鮮やかに咲く魔の花の
雑音交じりの夢へといざなう、 ....
昔たってそんな昔じゃない昔
筑豊とかの炭鉱では女のひとも坑内で働いていたらしい
上半身裸で乳房丸出しの腰巻き一枚
薄暗く蒸し暑いヤマの奥底で
気の荒い男衆に混じり
掘り出したばかりの石炭 ....
連れ去られてゆく私の腕は
細かく打ち震え
振動し
ひとところに落ち着かない
手を引っ張るのは誰?
月が欠けてゆくにつれ
私の不確かさが増してゆく
共鳴していたものが
隠されてしまったか ....
うだら
うだら
無人のコインランドリーの中
一台のうずまき式洗濯機が僅かばかりの汚れものを乗せて夜の住宅街アクセルを踏んだ
5分間
区間内の街角を回遊するツアーバスのような
....
{引用=頂点はさらに、高さを増す。塔の上に塔を
重ね、そのようにして時代はいつも、賑や
かに葬られていく。足元には、無数のメタ
セコイアが植えられ、手をのばして、空を
仰いでいる。道は、休むこ ....
わたしにはみずこがいる
それにいつからか名前までつけている
ときどきゆめにそのこがあらわれる
ベランダでげんきよくはねてあそんでいる
あぶないからと注意しても
わたしをなめているのだろう
....
時計の断面が落ちている
側に誰かの置いた花束がある
初夏の陽射しは影をつくり
わたしはわたしの影を
地面に埋めていく
勝者などいない
敗者だけの戦いが終わったのだ
イワシの缶 ....
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