人当たりの良い夜風に浮かれて
ゆうらり裏道をそぞろ歩く
コンクリートの余白から湧き上がる
若すぎる命のにおいに
甘い吐き気をもよおしながらも
どこにも辿り着けない足取りで
高層ビルを迂 ....
彼女は無防備に笑う
笑っているように見える
僕はそれが羨ましくて
弟が居ることを少しだけ恨む
一人っ子の彼女と彼女の両親の
三人の生活を僕は想像できない
考えてみれば僕は
四 ....
あなたが残して行ったもの
俳句を連ねた小さなノート
表紙がぼろぼろになった聖書
漱石の「虞美人草」と
若山牧水の歌集
壇の上の 薄い写真の中の
やわらかな微笑み
かつてあなた ....
遠くまで続く
薄紅色のアーチ
やわらかな風
さくら舞い散って
ぼくは走り出す
トンネルの向こうに
キミがいる気がして
待っててくれる気がして
全力で、
走って
走って
高架下の日陰が心地好く感じて
雑草にそびえ立つ鉄塔を虚しく見上げた
蔓の絡まる赤錆びたフェンスの向こう側には
ひび割れたアスファルト上の秩序が腕組みするだけ
車通りが少なかった夕方の国 ....
ざわめきが形を成してゆく
宇宙のものまねは
不安のものまねに似ている
さくらはこの世を化粧する
そこかしこに銀河
そこかしこで爆発している
この世を歩いているの ....
滲んだ太陽に
土手までのびた茜色
わたしたちは 何に染められたんだろう
もしも、の空を眺めていた
鏡みたいに、
あるいは透明な
空は、夕暮れ
おしげもなく跳ねる、金魚にま ....
その横顔は
花びらのようでした
春風が、ふわり
いちまい
また、いちまいと
面影を其処此処に
舞い散らせます
花吹雪が、ゆるり
上になり
下になりながら
音階を柔らかく
....
朽ちた木屑のかさなりを
踏みふみ
つづら登る春の里山
行く先々を導くように
萌える山吹
ふとした足元に
大人しくうつむく
鈴蘭の白、きみどり
ひとつひとつの
光りの具合を確かめる ....
うれしい
やっと気づいてくれたのね
ずっとずっと待ってた
言葉がとどくのを
あたしのことは知ってたよね?
何度か来てくれたもの
今の あなたにも幾つもの痕跡があるものね
....
爪を立てないようお気に入りのレギンスを下ろしながら
一瞬の冷たさに身震いなんかして
いまどき珍しいよね
ウォシュレット付いていないなんてさ
ちろちろと可愛い音させるのも粋よねとは思いつ ....
暮らしは
繰りかえす旅のようだ
ひとそれぞれ
いろんなことがあるから
近くにいる
いつも顔を合わせている
さしだされた風、渡っている
悲しませたくない
....
目が覚めたらもう八時。寝坊しちゃった、やっばー。
急いで歯磨いて、顔洗って、着替えて、髪の毛梳かしながら、行ってきまーす。
「あら、朝ご飯いらないの?」
「いらなーい、もうそんな時間無いし、 ....
唇は
春だった
柔らかくて
惨たらしかった
前髪は
夏だった
煩わしくて
あてどなかった
耳たぶは
秋だった
満ち足りて
素っ気なかった
鎖骨は
....
この魂桜花に捕られ何にせん
風吹いて桜咲くも良し散るも良し
若者よ真の思想の明快さ
春のドライブ
空は晴れ桜の季節今日われら幸せのドライブに出てゆく
まったくに車は走らぬ鯖街道心は躍る陽のあたる道
さしてもの用もなきなり休日を三方の鰻「源よ門」にて
タンポ ....
Re:プラネット・ホームにて
地球に宇宙が墜ちて来た
次世代の呼吸の仕方を思考して
マリービスケットをかじろう
私はあなたの二酸化炭素
緑葉体を頂戴よ
宇宙一 ....
君を想い 眠れぬままに
星をかぞえた
寝静まった街で
君の美しさを描くため
僕は画家になりたい
描き尽くせぬと知りつつ
窓灯りのように君を包 ....
ポピー
オレンジ色と言う言葉
ラベンダー
むらさき色と言う言葉
スズラン
確かに白い鈴が鳴る
忘れな草
小さな小さな花弁の黄色は忘れない
....
冷んやりした部屋の
窓際に椅子を置いて座る
裸電球に照らされた
オレンジ色の壁に
魚の形の滲みが付いている
じっと見つめていると
風が梢を揺らす音に混じって
足音が聴こえてき ....
つつましやかな紫煙の残り香が
わたくしの肩の辺りをただよって
広いような
また深いような
みずうみの表面へと消え
それはやがて
春と同化していくのでありました
からすの兄弟を乗せた小 ....
固い蕾が座っている
春の陽射しのなかで
凛として震えている
パッと咲けという人が
最近はとみに多くなったけれど
慌てなくてもいい
はずだ
じっくりと根を伸ばし
ゆっくりと綻んで ....
皮膜を張った空に
午後の白い陽は遠く
道は続き
かつてこの道沿いには
古い単線の線路があり
そしてこの季節になると
線路のこちらには菫が幾むれか
線路のむこうには菜の花がたくさん
....
山育ちの私が
山のない街で生活をする
心には山型の穴が
ぽっかり空いたまま
当たり前にあった日々が
遠くなっていく
この気持ちを
誰がわかってくれようか
竹やぶ輝くきらきらん
おじいさん竹切り驚嘆
小さき姫現る忽然
大判小判もどんどん
家屋敷豪華絢爛
大事に育てる過分
かぐや姫の美貌 皆賞賛
三人の男持ち込む縁談
姫突きつける難問 ....
何の為に生きて
何の為に死ぬか
分からないまま
死んでゆく
一万年後には
誰も私の事を知らない
一億年後には
人類は存在しない。
宇宙から見たら
人間なんて
砂粒にも満たな ....
匂いがする
花の匂いだ
こいつの名前知ってる、と問いながら
ごくしなやかな動作で
友達のしめった手が
その花のくきを折った
(売店でなめたアイスクリーム)
錆びねじ曲がった標識に ....
aciddrop
霧雨が降ってきて、網戸の外はキイロのクレヨンの油の匂いがした
カラスアゲハの交尾細工の秒針がカッチカッチ音を立てていた
「私の弱みに 付け込んで、犯してください」
....
例えばこの手の中に拳銃があるとする
リボルバーの中には1発の弾丸が込められているとする
そうしたらその拳銃を
一体何に突きつけたいのだろう
前から一撃が欲しかった
総ての苛々と ....
浅い眠りの飛び石づたいに
今日の岸辺にたどり着いた
非武装地帯の朝焼けは紫色
ただれた雲が東から順番に裏返る
もう少し痛みが和らいだら
着古した戦闘服を洗濯しよう
レンズ豆 ....
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