{引用=
紙上に佇む
痩せ細った枯れ木
磨り減ったペン先がつけた
掻き傷の隙間に
深く根を張るインクの滲み
どこに行くとも
なにを残すとも
示さぬままに
埋まってしまった行の終わりの ....
共になり三十二年の今朝の庭紫陽花咲きて陽はうらうらと
夫たちよ妻を愛せ六月の今日の聖句を心に置きて
水無月の妻と語らうこの日々の瞼に浮かぶ蛍が二三
{画像=100613231219.jpg}
{引用=
黄昏たちの回廊
夕闇に漂う影が伸び
遊び疲れた風がぬける
....
雨が似合う日に
とっておきの
憂鬱を着て
雨が似合う道を
お気に入りの
傘をさして
雨が似合う花に
こっそり
逢いにいく
雨が似合う人には
なかなか
なれそうにないけれど
もう雨は
嫌いじゃ ....
100612
晴れたので
トロンボーンを吹く
トランペットだと
昨日の人が泣くのだ
夏が来たと騒ぎだし
夜の石を捜し出す
晴れたので
....
白線の内側に下がってお待ちください。
白線は自分で引いてください。
内側と外側は自分で決めてください。
白線の外側を
一匹のシオカラトンボが横切っていく
軟らかくて
....
眩むように
ひそやかで
賑わうように
うら寂しく
微かに浮き立つ
輪郭を描写するような
凝縮された時間の果ての
雪洞にも似た夜の入口に導かれ
僕は
記憶の中、
遠くか ....
海の向こうから来た手紙
躊躇わない見慣れた文字が、
心に触れるのです
確かに
生きる意味があるように
昔を思い出す、力が湧いてくるような
元気でいらっしゃるのですね
少し怒りっぽい
....
むかし
落ちていた石ころが
月になりたい
と泣いていたので
僕は
星にならなれるよ
と笑った
石ころをつかみあげて
力いっぱい遠くへほおる
すると
涙が尾を引いて
石ころは帚 ....
{引用=――わらべうた}
空は晴れていました。それはもう、
実にみごとに晴れわたっていまし
た。僕(子供)は逆上がりができ
なくて、学校でみんなから笑われ
て、からかわれて、そのせい ....
ゆれる
歩道橋で
ぼくのからだは
空を見あげた
光の
ふやけたところから
いまにも
だれかが降りてきそうだよ
ち ....
ローテイトする空気
ツンとした金属
それが君
つい触れてしまいたくなる
そびえる金属の塔
不可思議
早巻きでみる植物のように
私は蔓を伸ばし試みる
君への動脈
ツンとした金属
....
宇宙へ打ち上がる星になりたい
ジェットエンジンなんていらない
魂を燃やして空へ
真っ直ぐに飛んでいく
塵ひとつ出さない
空を見ない人は気付きもしない
僕の旅立ち
{引 ....
誰も見たことのないお話を求めて
君はいつも私の前から姿を消すの
取り残された私は腹を立てて
誰も見たことが無ければお話など成り立たないよって
君の枕に向かって囁き続ける
誰も見たことのないお ....
六月にはなにも書けない
上昇し続ける温度と
いつでも雨を隠しているような
湿度に
脅かされて
六月にはなにも書くことが出来ない
消化出来ないものを胸の内に抱えて ....
駅のホームで手を洗う洗う顔も
しがみつくという感覚は燃した
俺は幸福すぎる一人のパパだよ
コンビニの弁当はもういやなの
小さな庭が欲しい朝顔ジョウロ
つるの巻き付く行 ....
鬱陶しいものが
わたしを柔らかく包んで
膜を作っていく
ほんとうは嫌だけど
鬱陶しい膜を
破ってしまって
鬱陶しい液体に
塗れるのも嫌だから
鬱陶しい膜
を我慢する
たまに
ぷち ....
{引用=まるでスワローテイル
君はいつも強がってばかりで
悲しいことを悲しいようには言わないから
いったいどれほどの悲しみが
君をそんなに強くしてしまったのかを考えてみた
そんなある ....
それだけ、(よ) ほしいも
のは生みだせるから スト
ロウを分別して頂戴。しゃ
かいの授業でならった で
もわたしの目には噛んだ跡
がそこいらじゅうにあって
、昔いたらしい怪獣の記憶
を ....
電子レンジに入れないでください。発熱しても
心配ありません。DO NOT FOOD ひとといて、
熟れるようよ、と言った瞬間 切断面を錯覚し
て 覚めやらぬ夢をCT にかけた 飲 ....
幾つかと問われればただ指を折る
頃を過ぎてもただ指を折る
背伸びをし過ぎた私の深い爪から
こぼれ落ちる魚
夜の底の青
水面をすくう
静かに、丁寧に
どんなに気を配っても
波紋は広がる、 ....
ここが僕の新しい寝床だ
うず高い廃家電のベッド
人懐こい重油の匂い
腹の虫をアジる革命のような
焼き立てパンの香りも
まさかここまで追ってきやしないだろうから
もう安心して唾液を胃に刺せる ....
待ち合わせの家電量販店の駐車場は一階にあってひんやりと埃っぽかった
ここから公園が見えた
きのうここにドライヤーを買いに来た
公園にたくさん咲いた桜がここからだとライトアップされて銀河のように見 ....
忘れてしまった
君の声は
天使の羽根になって
触れたはずの
君の髪は
星空をすうと流れて
あの頃の時間は
ガラスの破片となって
静かに波の音だけが聞こ ....
牛です私決めました出産ですお立ち会いのもと牛です私牛です出産です決めましたお立ち会いのもと出産します牛ました私です決めました私牛を出産します。
産まれました
白と黒の牛は仔牛と呼ば ....
昼下がりのデイサービス
じっちゃんが起きてきた
暇さえあれば人の顔見てボソボソと話し
私の傷心に塩を塗りに来る
飽きたら違う人をみつけては
渡り鳥みたいに群れに加わる
....
{引用=
緩やかな咀嚼が
下痢を引き起こすことなく
幾何学によく似た
紋様を作った
ここは
水面
水面下は、見えない
緊急の事態には
コールボタンを押し
だれかれかまわず
助 ....
変質
劣化
腐敗。
没落
退廃
形骸化。
解脱
虚無
歪曲性。
無常
残留
ノスタルジック。
そしてひとは
忘れさってゆく。
晒されて。
この悲しみはひとにやさしくなれる
いちど別れた女となんねんかぶりに会った
肌をふれあわせる以外のことを夜通しした
この女は最愛だったが
ふたりで制度のなかにくるまれることはなか ....
宇宙から地上へとのびる滑り台を滑り降りて僕らは生まれた
あまりはっきり覚えてないけどあの光景をもう一度見たいから
僕らは長い時間をかけてより高い宇宙への階段を登ってる
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74