猫が伸びしてあくびする。
それを見ていた子猫も
ふぁ〜あ
子猫のあくびに
母猫
ふぁ〜あ
子猫が虫を追いかける。
前足交互に
しゃぁーっ
しゃぁーっ
そのあと、子猫は肉 ....
・
幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....
{引用=
盆がすぎ、まだ青々と立つ稲の 鈴花が
まだ咲かぬのかと歯軋りする歯は黄色く毀れ
甘みが乗らなかった梨の実をもぎ
浅く掘った穴に震える足で踏みつけていく
「来年はがんばれよ」 と ....
消えていくもの
たちまちに消えてしまうとわかっているものだけがいつも
うつくしくて
それだから口を噤むしかない
かたってはならない
冒してはならないことばかり
何もかもが足りていな ....
なにか物足りない
一生懸命な女が好きだ
そとに出さなければ
かくし通せるせつない気持ち
でもこれは仕事だから
公共性のないことは言えない
通せない
悲しいとき
貫くべき ....
{ルビ孫生=ひこば}えを育てている
木を植える男たちが植えた木は大きくなって
全てまた切り倒されてしまったので
孫生えの世話をしている
伸びすぎるとまた伐られてしまうので
折々に切りつめ ....
Tさんと僕との距離は引き潮の朝の波打ち際の音
繰り返す君の名前は永遠に波間に揺れる太陽みたい
波に浮く空き缶目掛けて釣針を投げ合うようなぼくらの会話
粒と波波 ....
暖簾靡いて
初秋を告げる
静寂の下
淡い酸味を懐かしむ
この青空はあの日と変わらず
期待を寄せてチャイム待つ
理由もないまま急ぎ足
畦道の花が愛おしい
掌ほどの綻び
ふふふ、 ....
秋の日に魚遡行して運河あり
鉄筋の錆びて曲がれる捨てた街
雑草が茂る空き地に蝶遊ぶ
明日を30回数えた午後
空からたくさんのきのこがふってきました
私はそれをとてもきれいだとおもいました
きのこは
隣に住んでいたハイカラなおじさんを連れて行きました
私はおじさんはもう見 ....
ひとの悲しみは
心と身体で感じて
はじめて分かるものだ
あたまで理解しても
思えているかは分からない
ひとの悲しみを聞いても
いいことを言わないようにしている
....
いろはにほおずき くちづけしたね
緑のこころはあかい頬だった
いろはにほしくず ながれておちて
二人のなみだと彗星だった
いろはにほのぐれ ゆうやけこやけ
あなた ....
3分間で出来上がるカップ麺はあるけれど
3分間で出来上がる世界など存在はしないだろつ
もしそんなものが存在していたら
もうインスタントワールドは
たちまち売れてみんなが神になる ....
今日は飲ませて
だって星が泣いているから
ワインで酔わして
首に綱つけて
どっか行かないように
見張っていて
涙が流れ
一つの花が終わった
一日だけの夢を見せてくれた
詩人になれ ....
夏の夕暮れ
散歩する僕を突き放すように
雲は遠く空を覆っている
沈んで行く太陽に照らされて
黄金色に光っている
あたりには
雨の匂いが満ちてきて
遠くから雷鳴が聞こえる
....
朝焼けは随分きれいで
青紫のしじまに黙りこくり
そっとアクセルを踏み込む
見慣れた速度で
過ぎていく風景をやり過ごす
少し肌寒くなったようで
エアコンのスイッチを消した
仄かに燃えて ....
見通しのいい場所で
感じないのは何故だろう
グッバイガール
細い月はハイヒール
運命はやはり
あると思うんだ
遠く遥かなものに
励まされてきた
君は近くのものに
励まされ ....
一つと同じ数字の無い
IDが張り巡らされた部屋で
ネクタイにポロシヤツと
不揃いのフアツシヨンで溢れ
「昼白」や「電球」等の細長く
不揃い色の蛍光灯が敷き詰められる中
冷え過ぎる空調に
....
あいしてる、
あいしてるよ
今日はいいたいんだ
いつもはことばにすると
びっくりするくらい
縮小されてしまうけど
ちょっとだけでもいいから
きみに見えれば
いいと思った
8月 ....
夏になりきれないままの陽気
心地よさを感じさせる風が流れる度に
何故か懐かしい記憶が駆ける
まるで実りの薄い穂先を満たすよう
年月という重さはまだ
温もりを保てない水の底にあって
語りかけてはくれ ....
「始」
新たな枝の方へ折目正しく曲ろう
幼い葉っぱにいちいち名前をつけよう
選んできたのはいつも自分だから
勇気を転がしながら歩き始めよう
「発」
....
テーブルの上に置かれたマカロンは
食べるのがもったいなくて
子供の頃大切にしていて使えなかった色鉛筆のよう
ピンク、みずいろ、きいろ、きみどり
思い出せる色はぜんぶ淡い
金魚すくい
浴 ....
浜辺の犬がこちらを見ている
トタンの屋根を抜けて私は
君に寄せていく
同じだけ離れて
君は黒い目でかしげる
私は砂の城をこえて
水平線を臨む
幾重にも絡まって ....
変らぬ旧友
変らぬ自分
変らぬ町並み
変らぬ心
変った名前
変った駅
変った建物
変った畳
変らぬ
親心
変らぬ
気持
最後の
別れ
最後の
食事
田んぼの道ぬけて
山ひとつ越えて市街地に帰った
藍いろの街のひかり
遠くからだからかやさしい眺めだ
あのひかりの中でぼくは
ハードルを下げたまま生きているひとを
....
うすく流れる明け空に
寝返りをひとつ
隕石とか堕ちてこないだろうか
僕は僕の人生を
いいかげん
供養してあげたい
逃れようのない角度で
刺し込む朝は
強制ですか
それとも、任 ....
きみをわかつ
やんわりとつつみこむ
きみをこきゅうする
きみでこきゅうする
よるをわかつ
あぁかいほのおでわかつ
こきゅうをりかいする
かんかくでりかいする
まんじゅしゃげはて ....
欄干のすぐそばでゆれていた緑の長い葉を
頭上でちぎって歩くと
いつの間にか橋は終わっていて
下り始めるその道のはじめに
モリヤ商店はたっていました
コーラを買ったり
買わない店の奥の暗 ....
緑の旋律 てのひらよりこぼれおちて
レティナに舞うすべての形 曲線 肌の白さ
優美で華奢な少女というニセモノじみた絶対
ひとつの奇跡のようにひらく花のような軽さ
笑い声泣き顔 細い指薄い瞼 ....
木の葉落ち風語るを聞き
光のために木の葉みな手を広げ
幹 黒々と明日を夢見ている
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