揮発する夏の底で
胸が かなしみに沁みてゆく
青と白と銀の空
見あげても見あげても
{ルビ眩=まばゆ}さは
かなしみの純度を高めるばかり
向日葵のあざやかさが目を
降りしきる蝉の声が ....
氷、と書かれた布製のものが
海からの風にそよいでいる
大盛の焼きそばは皿いっぱいに広がり
けれどできる限りの表面張力によって
その外形を保っている
去勢されたばかりの犬が
日陰で餌の ....
誰もいない家の
ベッドに一人横たわり
イヤフォンを耳に入れ
励ますような
君の唄声を聴いていた
窓から吹き込む夜風に
カレンダーはざわめいて
{ルビ捲=めく}れる暦の隙 ....
何処までも続く涯の無い青空の下に/
何処までも続く涯の無い青空の下に埋もれたまま
彼は独りぼっちで数と戯れていた
無数に飛び交う数字と記号を捕まえては空白を埋めて行き
それが正しいかどうかを確か ....
君が信じているものを
僕も信じられればいいのに
今はまだ、同じ景色の中にいる
冷たい雨に包まれている
すぐに泣いて、いつも困ったけど
最後の最後で強いのは君だった ....
波が足下に打ち寄せる
私の足場を削ってく
疑えば
何もかも離れてゆくよ
波が足下に打ち寄せる
私の土台を削ってく
信じれば
必ず報われるとはかぎらないけれど
波が足下に打ち ....
朝つゆをあつめて咲く青空は
あまりにも健気で
ついつい
キスしてしまうほど健気で
青色の涙のなかでも
太陽の煌めきを忘れない強靱な精神も、また、健気で
ぼくは
またも
深夜
じんわり ....
群青の
天空見つめ
はっとする
あの日と同じ
月の微笑に
吹き付ける
風に心を
たなびかせ
愁いを飛ばそ
ひらひらひらと
ビブラート
きかせ ....
くじけた気持ちが満ちてくるのは
自分が気難しいせいだ。
軟化した脳で考えさせ
萎えた手で持つこと
折れた足で立つこと
遠くなった耳に聴かせる
衰えることを許さないかのように
若さ ....
三日月みたいな太陽だと
月が割り込んできただけじゃねえか
三日月みたいな太陽か
戦争なんかもそうなのかな
エゴの上にネーションがあって
ネーション同士のあいだに
ふ ....
何かを手にするその度に
何かを落としてしまっていたみたいだ
ちょうど溢れ出たばかりの滴
儚いものだね
大切だったはずのものでさえ
いとも容易く流れてゆく
手に ....
なにやら窓の外がやかましくなった
「今こそ」とか
「ともに」とか誰もが叫んでいるような
ここにしゃがみ込んで久しいし
一見自由そうで実は窮屈な姿勢にも慣れっこ
目を瞑っていれば何が起 ....
夜明け
目が覚めかけて
うとうとしたまま
窓辺に寄る
朝の蒼が
とても深くて
ぼくの眠りを
追い払っていく
わかっているんだ
イマジンみたいな世界は
どこにもな ....
君は覚えているのか?
天と地の間に宙ぶらりんになりながら、横目で見たブランコの鎖を。
その色合いを、その時の風の香りを、その感触を。
君は覚えているのか?
十五年前の今日に食べ ....
きっとね、
あなたがそこで生きていていいという理由がないのとおなじくらい
あなたがそこで生きていてはいけないという理由もないのだから
そこで力強く繰り返している心臓の鼓動をさえぎらな ....
たいせつなことは、
キミがそこにいてくれるということ。
キミがそこでボクをかんじていてくれているということ。
キミがそこでいきていてくれるということ。
つまり、
きみがそこ ....
私はどうやって来たのでしょう
甘い香りに誘われて
無数の刃に追われて
広く遠い空を目指したか
眠り川面を漂ったのか
振り返ると山はきれいに潰れ、海はきれいに埋まっていました
....
笑えばいいじゃない!他人じゃなくて自分のことを!
帰宅したら猫がまとわりつく以下、
猫しかまとわりつかない
愛されコーデを選ぶ時点で愛されている
咥え煙草と言葉遣い、ギャル見てあら ....
雨のむこうから
無造作に青空
緑のつややかな木立の陰から
ほら 少年たちが
幾重にも幾重にも生まれてくるよ
君の髪を肩をすべるように
きらきら きらきら
光たちが降りこぼれるよ
逃 ....
生きるも地獄
死んでも地獄
辛いだけの世の中を
思いのままに駆けてみて
精一杯に生きてみて
やるだけやったら
その後は
野に首(こうべ)を垂らして
大地を枕の
野垂れ死に
野に ....
井の中の蛙を掌にのせて
珍しそうに眺めながら
「大丈夫だよ」と彼女は
うわのそらでつぶやいた
程好いぬくもりにとろけて
居眠りしていた蛙は
「大丈夫だよ」という言葉を
うっかり「好き ....
煙草に火をつけ一口目、輪っかができた。
たまにやろうとしてもできないので、珍しくて目で追う。
ゆるゆると大きく広がりながら登っていく輪っかが「出口」のように思えて、形を壊さないようにゆっくりと左手 ....
もう何年君のそばで本を読んでいるのだろうか?
もう何年君のそばで寝ているのだろうか?
もう何年君のそばで食事をしているのだろうか?
僕は無口になって黙々と食卓に向かう。
僕は無口になっ ....
夕暮れになるといつも
彼は施設の外に出て
離れた更衣室の入口に
ランプをつける
施設の外の暗がりに
一日の仕事を終えて
疲れて戻って来る人を
(おつかれさま)と
迎え ....
あたしの目の前で「あ゛ー」と叫ぶアホ面女
あたしゃそれがむしょうに腹立つんだよ
あんたらを涼ませるためのあたしだってのにさ
あたしが必死こいて回してるの知らないんだろ?
あたし ....
結局また苦しいことになったが
少しタフになったのか
心臓がしめつけられるようなんだけど
まだわずかに心に余裕がある
もう駄目なのかもしれないと思いつつ
建設的なことを考え ....
人は忘れる生き物だから
私は今 精一杯 貴方を愛すよ
口付けて抱き合って
貴方を想って泣いて泣いて泣いて
貴方に想われて泣いて泣いて泣いて
人が生きてるって尊いって思う
等身大の自 ....
どうしたことか
僕は立ち止まり周囲を見渡した
ひっそりとした青の空間
生温い生命が近くで息づくのを察知した
ここはずっと前にも来た場所だ
その瞬間、絶望に落っこちそうな気持ちが
決 ....
心は死んで あいつは
墓の中で薄れながら しんなり笑っていた
電車は定時にきっかり訪れ
我々の事情も知らぬまま また
また 繰り返す
毒を盛ることなどや ほか 様々なこと
を 試みに ....
人が生まれて、生きはじめる。
川が生まれて、流れ始める。
人生の区切りがあって、馴染んだ人と別れ、新しい人と出会う。
支流への分かれ道があって、今までの流れと別れて、新しい流れに入る。
....
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