夜勤明けてひとりで酒を酌む
やなことはやらないでおこう
きっとあのひとは許してくれるから
太陽がしらけた空にひかる
暗い空に光っていればいいのにねえと
稲垣足穂的につぶやいても
太陽はあく ....
出口だらけの迷路で
みんな迷子です
終電が出発したら
それでも全部、扉を閉ざして
新宿駅の外観を知りません
面影すら忘れてしまったひとの
忘れもしない言葉
普通でいるために、目を閉じ ....
別れのない日などなかった
夢の覚めない日もなかった
真夜中の貨物列車の車輪の響きが
テノールのビブラートの余韻となった
日々に慰安が欲しいと言ったら
スプラウトは笑い、シルフが慰 ....
雨をひらいて いくつもの声のその中へ
飛び込んでいければいいと思った
軒下からしたたる雫が はねて、
とりとめない心に降りかかる
泣いているの、とたずねる人の
声がしたような気がして
振り ....
あなたが見るあの人と、私が見るあの人とは違う人なの
体はひとつ
でも関係ないよ
だからね、心に入れた刺青をタバコの熱で燃やしてしまおう
日向
欠伸をしている わたしの
弛緩したくちびるに
消防士が侵入をする
繊細な内臓
大音量のなかで わたしの
太陽が鎮火した
焦げ臭い
拒むきみを探るゴムホースの舌
ちろちろと ま ....
君のことを描くたびに
ひとつずつ言葉を失っていった
すっかり軽くなった水彩箱には
たったひとつの「ありがとう」が
隅にこびりついて震えている
―――ありがとう。
それだけで ....
とりとめのない
思考と
アスファルトの固さ
ふみしめると
わたし、強くなれるかな
求めすぎていて
この空に
目に見えるだけの、青に
この広い空で
はばたいてみたい
なんて、ね
....
緑は異なる緑に侵され
世界は二つの緑に包まれる
緑は黒に蹂躙され
黒は赤に染められる
赤を散らして光が減ると
対立する黒は耐えられず
世界は透明になる
そ ....
言葉がどんどん
自分を裏切って
荒野で
一人ぼっち
ぽつんと
足をかかえて
待っていてくれた言葉だけを
つかんで
抱きしめろ
欠点はね、
やさしく撫でられたら
十分なのです
無理をして語らないでください
いろいろな角度から
見つめないでください
寄りそうだけで
よいのです
見渡せば ....
神様の存在は
哲学的な
透明な
冬の日のかなしみ
午前のひかり
埃くさい言葉たち
その反語たち
神様の存在は
哲学的な
透明な
十一月のから ....
今私には娯楽が一つもありません。
間違えました
今私には娯楽が一つしかありません。
それは詩を書くことです。
間違えました
それは詩に似た何かを書くことです。
そして、 ....
夏子が中学生だったとき
気になっていた同級生の男の子と
二人きりで映画を見に行くことになった
男の子が誘ってくれたのだ
そのころダウンジャケットがとても流行っていて
夏子もダウンジャケッ ....
書き起こすべき信頼できる白い紙が要った ペン先も
尖らせる紙でなく 存在感の無い筆が進まねば
と 作者は目を閉じた
身軽に 身軽な 子供の歩みを
憶えている所から深く探り出して
....
吐息が
しろく曇るのを見ると
少し、安心できる
わたしの日々は
ほぼ偽りかも知れないけれど
熱だけは、進もうとする熱だけは
たしかに思えて
安心できる
いつだっ ....
色が変わった
私の知っている水色が
少しずつ重なって
ことばのないまま
深くなる
いつも初対面のような
四角い空気にくるまれて
私の水色が消えかかる
色が変わった
夕 ....
冬、このくらいの青い夜
腹痛も心地よく
冷たいハンドルを握る
俺も弱いんだよ
すこし自由に吐き出した
あれは宵の明星か
やさしい気持ちは
はがゆい脱力感と変わ ....
だれかを傷つけたり
SOSを聞けなかったり
たいせつなひととはいつも
まずい別れかたばかりしている
ひとは事実ではなく、言葉に反応する、
二年まえいったセミナーで覚え ....
ゆるやか日々が過ぎてく
屋根の上を流れる雲たちが
東の空に向かって
飛び込んでゆく
この手のひら
空にかざしてみる
あの頃
夢に見たコト
どこかに忘れていませんか?
....
目が覚める。手に握られていた、ゴミのような紙。領収書。宛名は空白だった。枕には涎が着いている。アルコールの匂いがする。カーテンから光が差す。胃に違和感があった。消化不良だろう。布団から起き上がる。水 ....
ひとり夜を歩く
頭上には
ペガススの天窓
自分の足音が
なぜかしら胸に迫る
何を思えばいい
何を どう思えばいい
道は暗くしずかに続いている
心をどこに置けばいい
心をどこに ....
ウィスキーの
琥珀色の
その向こうに
浮かぶ世界を見ていた
一瞬の絵のように
今日の一日が
そこにあったのだ
ちびちびと飲む
ぴちぴちと
魚が跳 ....
ウメ (忠実)
天神様の細道で大事な人を
繋ぎ止めようとしただけなのに
どうしていつまでも付き纏うのか
やたらと匂い過ぎる言葉達よ
スイセン ( ....
或る大学教授
「神話みたいな世の中なのです
私たちが生きた証も
いつかは神話に変わるのです」
すべて実際のことが本に記されてるって云うの?
或るビルの清掃員
「いつか地上に戻れると ....
都心の環境に適応した結果なのか
ビニール傘を主食とする
巨大なナメクジが発見された
乗用車にひけをとらない大きさ
そんなナメクジの駆除にのりだした一家は
土曜の夕方から準備を始めた
マカロ ....
終わってしまったはずなのに
密閉した重い蓋の透き間から
かすかにに甘くたちのぼる
胸の底 荒野の地中から
かぐわしい薫りはゆるゆると漂い
真夜中の片すみにうずくまる
そ ....
コオロギの 声につつまれ いい湯だな
コオロギの 声につつまれ ポッカポカ
コオロギの 声につつまれ 夢心地
草の原 生命かがやく 虫の声
虫の声 生命みちゆく 草の原
秋雲も 晴 ....
廃校の探検隊だぼくたちは廊下がミシンと鳴るアンダンテ
イチゴにも砂糖をかけるアキちゃんが横目で見ているスターバックス
算数が誰より得意なユウくんは今日も釦を掛け違えている
....
{引用=
末摘花
}
何が、愛されたのだろう
美しいという言葉も
華やかなものも
この手にはないのに
{引用=
末摘花
}
夜に耐える
想う人の背中が ....
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