紅い月が
ウインクしている
おれたちの夢が
海をわたってゆく
{引用=
1. カスタネット
}
紫陽花の花という花がてっぺんまで匂いたち、その色目も日に
日に濃くなっていく有様を窓から見ている。雨粒がはらはらと
落ちて窓ガラスにもかかる。風があるのだ。 ....
突然放りこまれてしまった
病院の待合室にすわらされ
時計の針が無表情にすすむのを
昼メロのデジャ・ヴのようにながめる
「ママ ごめんね」
かすれた声の一言で
キミは幕開けを ....
閃光
永遠なんてものはないから
今が愛しい
*
優しく風が吹く、
僕はそれを背に受けて、走り出す、
追い風を受けながら
加速して行く
風を感じなくなる迄
加速して、
風と並んだら、
風を孕んだら、
今度は一気に、
向かい風を生み出す位に ....
身体の中で潮騒を飼っている
辞書はそれを焦燥や憂鬱や歓喜などというが
潮騒はそんなにもシュハリ、と
姿を変えるものだろうか。
生まれて初めての始発に乗った。
どうしてだろうかとは考え ....
さよならより速く
季節が訪れたら
離ればなれになんか
ならなかったかもしれない
さよならより速く
奇跡が訪れたら
僕は君について
涙を流すことはなかったのに
さよならより速 ....
光の中を走っていたら
太陽が消え闇の中
暗闇を宛てもなく歩いてみたけれど
いつまでも続く闇の中
女はいつしか闇に慣れ
もっと痛みを、と闇の中を突き進もうとした
突き ....
噛み合うことのない歯車のように
孤独は在り続ける
カラカラと輪っかの中を駆けている
小さな身体を懸命に動かしても
輪っかは空回りするだけで
前に進むこともなく
ただ同じところを回り ....
あなたが見上げている
タクシーの水面、を過ぎていく雨のスピードに
わたしたちは削り取られている
飛び去ってゆく、見知らぬパーティー
灯に濡れたアスファルトの急流
きらきら、きらき ....
あぁ 今日もまた 鳥かごの中から世界が見えるよ
ほんのちょっとした、ありふれた病気
なのに体が思うように動かない
心には沢山の傷がついて紅い血を流してる
きっと助けて欲しいのに ....
ケンカして さよならしたね 意地っ張り
百年経ったら キスしよう
タンスから わたしの写真 眺めては
涙してると おばあちゃんから
一度だけ 空のメイルが 届いたよ
返信しない 返信 ....
結婚はチューインガムのようだ
と誰かが言っていた
口に入れると
はじめはほんのり甘い
恥じらいまじりの
恋の香りに満たされて
交われば交わるほど
恋の甘さに酔いしれて ....
雨がしとしとと降り 家の中がじめっとするこの季節が 私はあまり好きではない
肌にまとわりつくようなべたついた じめじめした感じが
絡み合う男女の一時を思い出させるからだ
「好きだ。愛して ....
そう 光の紋、水の模様が
見たかった
ゆらぐ 光の縞に 体を潜めて
水の色 雲の陰
私のゆがみ
私のまるみ
私のいびつさ
けれど、実は 私も水
息を呑んで光を泳ぐと
実は ....
痛みを知ることがなかったら
この愛おしさに気付くこともなかった。
ありがとう
私を好きになってくれて
どうして伝えたいんだろうね
未来は
自分の中にある
それは一瞬
輝いていた星砂、だったから
{ルビ現在=いま}に立っていても
ときどき砂にまぎれて
きらきらと見えてしまう
....
あのひとの住む一丁目に
背を向けて
眠る習慣
隣にある二丁目が
うらやましい
私の住む三丁目は
海沿いにある
教室で
「俺、海が好きなんだ」
という会話が聞こえ
うろたえて ....
物心がついた頃
私の首には、細い紐で作られた長い首輪が掛けられていた
その時の結び目は確か、みっつ
毎年、誕生日に紐が切れる
だから毎年結び目が増える、ひとつ
そして毎年、少しずつ短くな ....
けれども胸は 青く傾斜してゆく 怯える意識には
透明なふりをする思惟が 蔓草のようにからみつく
窓の外では 涙のように 果実の落下がとめどなく
そのさらに遠く 地平の丘の上では 二つの白い塔が
....
空に目を上げるとあなたのにおいがした。
わたしの棲む場所を流れる川に
水はない
誰かが
橋の上から捨てた言葉を
灰色のさかながついばんでいる
*
夏の暑い日、わたしは
忘れてしまいたい過去の過ちと ....
埃に塗れたガラスに映る
くたびれ果てた繕い笑顔
二日酔いで始まる月曜日
やるべき事が頭を巡る
子供の声とエンジン音とが
交互に僕を追い越していく
皆一様に行くべき場所へ
望む望まぬの ....
完璧な国は自分たちの不在を手繰り寄せる手繰り寄せる
長方形に彩られた空中のキャンバス
空想の呼吸
でんぐり返しするとカレンダーが捲れる
進む車はすべてを引き摺り下ろす 尿道結石
両足を抱えた ....
音のない世界に堕とされた
何も響かなくて消えてゆく灯火
どこに在るのだろう
私の声
指の間を滑る空気が冷たい
捕まえられない糸が
後ろへ虚空にまみれて
闇の中に筋となって
消えて見 ....
山のあなたの空遠く
はっきりはっきり目が覚める
布団を押し上げて
燃えてしまっている
あなたが幸いではなく
きがかりだ
何の関係もなくきがかりだ
そう
そういうこと
きがかりだ
み ....
・
眼を閉じるとそこは
金木犀の香る秋のベンチで
横には
もう何度も思い出しているから
びりびりの紙のようになってしまった
いつかの君が
黙って座って煙草をすっている
周囲がいやに ....
ふらふらと
京都から帰ってきた
またウイスキーを一瓶、
一気に飲み干して
そうだな
俺は俺を殺したいのだと思う
今はそんな夜
また見たいな ....
心の中では頑張れって言っている
でも言うだけで
無意味な質問を繰り返しては
自分を嫌いになっていく
鏡に写った自分は
いつかの自分よりも歳をとっていて
素直さだけ忘れてきたかのように ....
瞼が世界の彩度を盗んでしまったんだ
春風が私の温度を奪ってしまったんだ
目覚めの銘柄は“拍手”
ネオンが傍で瞬いたら郷愁
喉仏 刺してゆけば善い
一瞬で貫くのに然したる迷いは無い
....
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