すべてのおすすめ
そこは陥没した土地の底だった
ふしぎにあおぞらに囲まれ
馴れ馴れとSiraketa鳥のとぶ低地
新しいだけがとりえのその土地に
湧き出る雲は白くて尽きないのでおそろしい
すうすうすうすうゆく ....
梅雨明けを待てずに
空は青に切り開かれて
ホウセンカの種が飛び散る
新しいサンダルが
小指を破って
滲んだ痛みは懐かしい夏
種の行方を見つめ
きみがいない、
そんなことをふと思 ....
死んだ人々の霊が
自然の事物に宿るように
僕に忘れられたものたちは
自然の事物となるのかもしれない
僕が忘れてしまった
初めてプールに入ったときの記憶は
山道の苔となって
ひっそりと生き ....
安東{ルビ史継=ふみつぐ}(二十六歳)と
高柳ロワ(十六歳)は
バレエを通じて知り合った恋人同士
「ロミオとジュリエット」のように
悲しい物語は持たないけれど
「安東とロワ」と呼ばれて ....
ある日、
(傘を忘れてしまった
朝焼けに焦れた視線が
日影の後ろ姿を おいかけていった
風光は二度と再び帰ってこなかった
....
雨がひらき
匂いは昇る
あたたかく 甘く
光になる
白い歯車
心をまわし
雲の映らぬ涙になる
手のひらの空に繰りかえし
現われては消え 叫ぶもの
二分きざ ....
そうさらあ さらそわあ
さおわあ するるるるう
すふぃいいおお おおううう
しょうほう
さはああ そふううおおお
おおうう るらるうう
ふうち くうち
じいい ひゅうおおお
うんじゅう ....
31
世界が坂道と衝突する
アゲハチョウの羽が
誰かの空砲になって響く
内海に
大量のデッキブラシが
投棄された夏
遠近法のすべてを燃やして
子等は走る
....
気の抜けた
サイダーみたいな夏
梅雨は
まだあけない
何年ぶりだったろう
母のうでの中で眠っていた
幼いころに 暑がっては
アトピーの背中で いら立つわたしを
そうっと うちわで仰いで寝かせつける
記憶が 優しかった
起きたときに
とても
....
誰も知らないその庭に咲く薔薇
朝一番の雨に濡れた赤い薔薇を求めて
僕はたどり着いた 足をひきずりながら
かぐわしいその香りを嗅げば幸せになると
ただひとつの愛を得られるとずっと信じていた
....
アスファルトも
道沿いの木々の深緑も
白く
光る
午後二時
時間の底に響き続ける
セミの
鳴き声
汗をかきながら
自転車をこぐ私の隣を
....
この草のにおいを意識し始めたのは、
いつからだろうか。
翳る当為が、こおりのように漂い、
透きとおる幻視画のような混濁のなかで、
きみどりいろに塗された、切りたつ海岸線が浮ぶ。
冬の呼吸 ....
つきと金星のあいだに
カチャリと流れていったものが一瞬をすぎて
それは未来のような行方で
幸せとか苦しいとかというものと別次元
何もない世界のもとにある、わたし
すべての動作や感情を ....
君を連れていこう
この 干上げられてゆく都会の
最後の楽園へ
マンションに包囲されながら
奇跡のように生き残った
ちいさな田園のそばへ
君を連れていこう
この 干上げられてゆく都会の ....
朝霧の蒸発してゆく速さに
子供たちは
緑色の鼻先をあつめて
ただしい季節を嗅ぎわける
くったり眠っている
お父さんのバルブを
こっそりひらいて
空色を注入する
うん、うんとうな ....
カッパカッパラッタパラッパラッパウンパッパ
パラソルデルソルシオモッテコイ
しっかり夏売り出し中、でも
パラッパラッパと雨降る梅雨日和
気の早い百貨店では
夏じまいセールだって
冷 ....
夜明けとともに
目的もなくふらふらと
外を歩いてみる
そこの夏は冷たかった
葉の上の雫に触れ
その一瞬にしかない冷たさは
手のひらの中で
やがて消えてゆく
川のせせらぎの音も
....
夜はせばまり
夜はひろがる
粒と浮かぶかたちと唱と
妨げを泳ぐ轟きと尾と
波の終わりとはじまりに
砂の言葉と花火があがる
水からひろいあつめた羽と
貝のかたさの音のつ ....
21
カレンダーを見ると
夏の途中だった
日付は海で満たされていた
子供だろうか
小さな鮫が落ちて
少し跳ねた
恐くないように
拾って元に戻した
22
フライパ ....
干されるのを待っている
真白な空じゃなくてよかった
げに太陽の一方照射
くだ、さい
元気ジュース
もてあそべるならいくらでも買いたい
くしゃみをしてもねっころがり態
黒くならないの、 ....
惜しまれながら死んでゆく英雄に憧れる
使い回されてとっくの昔に錆びついた
安っぽいヒロイズムが大好きで
磨り減ったラバーソールで歩き回る
機嫌悪いときにメールをすりゃあ
「私がメール嫌い ....
少し遅れて咲いた花 細く白い後ろ姿
ポロポロ雨に打たれます
静かに沁みていきました
鋭利な雨に打たれます
窓の外は晴れていても
傘はポケットにあったのに 落ち ....
青い血で書かれた水曜性は、
{ルビ万年青=おもと}の実となって赤く結ばれる。
ある、いは、いつになく遠く静かな空で、ある。
店員が しきりにすすめてくる
玄関先に どうかしら
と自分に問 ....
飛行機を知らない人と轍を踏む
想像よりも柔らかい轍だった
この先に飛行機があるんだよ
そう言うと向こうは深く頷いた
生まれたときから教えられた通り
正しく騙せば
一族は末永く恵まれる
....
かぶとの木と呼ばれていた
通学路沿いの
道から少し滑り降りて入る草薮の中の
真ん中がくり抜いたようなくぼみのある木
樹液が蜜のようで 夏にもなると
かぶと虫や ....
07/07/20
使えない自動販売機、
起動困難なPCの上の
水を張ったボールに
七味唐辛子を振りかける
水道水にも色が付いて
透明なまま静まり ....
ころころころころ
マルはアスファルトを転がって
横断歩道で欠けて
花びらの形になった サクラの
ひらひらひらひら
春はどこですか
一番遠ざかった季節ですね
ひらひらひらひら
....
11
ジャングルジムの上で
傘の脱皮を手伝う
またやってくる
次、のために
海水浴の帰り道
人の肌が一様に湿っている
12
ピアノを弾くと
鍵盤がしっとり ....
楽しいときほど
思い出してしまうのは
あなたと過ごした夏が、きっと
あまりにも輝きすぎていたから
あいたい、と
そんなき持ちに自分の笑い声で気がついた
だって二年前、あ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155