ホウセンカ
銀猫

梅雨明けを待てずに
空は青に切り開かれて
ホウセンカの種が飛び散る

新しいサンダルが
小指を破って
滲んだ痛みは懐かしい夏

種の行方を見つめ
きみがいない、
そんなことをふと思う

  汗に汗が絡んで
  さかなより自由に泳ぎ
  かなしさも
  気づかぬふりで
  恋という名前を盲目で殺した夏

赤い花弁で
ゆびさきから染まっては
愛しい横顔が弾ける、
わたし

  てのひらを合わせて
  祈っていたのは
  同じあしたと信じて
  せつなさを愛情と呼んでいた

宿根の赤はそこらじゅうに漂って
さようなら、という文字が
こころで弾けた

ホウセンカ





自由詩 ホウセンカ Copyright 銀猫 2007-07-28 22:36:47
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