閑散としている通りの端に

 通いなれた立ち飲み屋がある

 店主の女将さんは愛想がよくて

 ついつい飲みすぎてしまう

 術中にはまっているようだ

 ふと奥に目をむける ....
左手首に残る掻き傷の赤く腫れたる筋
三角の爪の痕が
薄らと桜桃のように熟れて浮かび上がる
外気に触れるたび僅かな痒みと痛みが
己が存在を知らしめる
白くて水をたっぷり含んだような手

節の見えない長めの指

綺麗な淡色のマニキュア

カウンターに置かれたそれは
何か美しい生き物のように魅惑的で

コツコツ ....
なぜ日本刀を持ってしまうのか
知り得ざることなり

そのうち一人一殺とか
またぞろ言い始めないか
心配でならない

それよりも僕らは
一人一冊で生きたい

本が売れなくなり昨今
 ....
右、心房に届く
夜明けの海を
寄せては返す
ブランコたち
知らない
光の
所在なんて

笑う唇の端に
救急車のサイレン
初めてキャベツを
買った日の静けさ
何も無い
 ....
最近 目方が増えた気がする

八月の検診以来
体重計には乗っていない

でも 増えているのは確か
このデニムを履くとわかる

おそらく 新米のせい
二杯食べてしまう 新米のせい
 ....
 ソニアは悲鳴をやめ、しわくちゃになったシーツを引っぱり上げて台なしになった魅力を隠すと、みっともなくのどを鳴らして悲劇的な表現に熱中しはじめた。ぼくはものめずらしい気持で彼女を仔細に眺めたが、それは .... 見失った

時に一体何ほどのものがあるのか

先ほどから少女が現れては立ち去ってゆく

それこそ命懸けの眼差しで訴えては  やがて悲しそうに

というよりは私が

邪険に   冷酷 ....
やさしさちゃんは家に帰ると 
いつもぐったり疲れている 
ベッドに倒れ込んだら
着替えるのもメイクを落とすのも
もう何もしたくなくなってしまう

やさしさちゃんはみんなにやさしいから  ....
夕立
つるべはしぐれ
指先

防風、防水、防寒手袋
きみが忘れた公園も
ひぐれも時間も半袖も

スニーカーだけ走り出して
追いつけなくなる

撤去された
ジャングルジムと砂場
 ....
二人ベットで退屈なニュースを見てる。

「腕枕した手が痺れるのは、
ハネムーン症候群っていうんだぜ。」

君はそっけない返事、頭をどける気配もない。
ニュースは温暖化現象の話題。
コメン ....
醜い天使が卵を守っている
パン屑たちは本の海に溺れて、光から逃れた
あなたの手のやわらかさを
表現することばが見当たらない
まるで世界が瞬きをしているみたいだ
シナプスのきらめきが脳内をかすめて

墜落する飛行機のニュースを見ながら

この夜が終わらなけれ ....
ああ、もうすぐ
あなたの誕生日
秋だというのを
忘れそうだった
忘れてないけど

わたしはと言えば
くちびるを噛んで腫らしてる
ジグソーパズルは吊リ上がり
笑顔も汚れてしまったかもね ....
自分でも信じられないけど、
もう家には帰りたくないんだよ。

君には信じられないかも知れないけど。
この狭くて汚い部屋が、
君が帰ってくる場所だと信じてるんだ。
惨めたらしくね。

今 ....
最初から知ってた

きっと私のどこかが感づいてた

あなたが私のことを好きでないこと

好きになろうとしてくれたのかもしれないけれど

あなたは一人で夢を見てた

私の笑顔が素 ....
季節の短さに
誰も気付かないけれど
きみは今その真っ只中に
いることすら分かっていない

汗で額についた前髪を
何気なく払う姿は
きみが何とも思わなくても
確かに美しいんだ
それは否 ....
人肌寒く吹く風と
舞い踊る枯れ葉にキスをする

そんな赤茶けた土の上
数羽のカラス
袋啄みて中のゴミ荒らす

それを見ていた鳩
首を傾げて見つめてる
電言柱の雀たちも
遠巻きに見下 ....
命に帰る
私には 悪の部分がある
だからこそ
善く生きたい私
善く生きたい命

命を
見つめすぎると
悲しくなるけれど
命の命は
幸せに気付く
幸せとは
命が嬉しくなり満ちるこ ....
歯を抜いてマイナス1
噛み合わない分
噛み合うところで負担して
馬力は8割か9割

失ったものは
帰ってこない
マイナス1のまま
工夫するしかない

マイナス1のことばかり気にかけ ....
素直さのない
夏の熱砂が残す灰、夜想曲の静かさで
降り積もる
森は、夏の温もりになごり
いつか 一つの季節を追いやる
季節風は海の果てに姿をけし
かけ違えられた犠牲の森の彩
見捨 ....
薔薇色の日々を与えてくれて
貴方には心からの感謝を

どうしようにも
憧れすぎて
私は貴方になりたかった

貴方が知りたくて
ボードレールを読んだ
それがきっかけで詩を書き始めた
 ....
そこを避けて着水しなくては/


かなって夕日の沈む頃に合わせるかのように操縦士だけの小型機が墜ちた/燃料は使い切るだけを飛行したはずなのに静かに知られずに海でもえて・/夜空への祈りのように最後 ....
現実は
私を疲れさせる
作り笑いを引っ込めて
素に戻る
良く喋るひとは嫌いだ
一緒にいるなら
沈黙が心地好いひとがいい

気がつけば
夢想して微笑んでる私は
此処に存在してない
 ....
行方不明になりたい
雪が降るだけで
明るい白になった
時々思うね
あの日
カーステレオから聞こえたグルーヴ
夏休みの初日
手のひらから溢れていく
意地悪 さよなら 憧れ
グループ 二人 一人 またそして
太陽 雨 自動販売機 コンビニのアイ ....
大地に落ちた雨つぶは
雨つぶ同士ひかれあいくっついて
水の筋となる

大地を這う水の筋は
水の筋同士ひかれあいくっついて
川となる

大地を流れる川は
この{ルビ地球=ほし}で
一 ....
花びらちぎっってどうするの

あなたのその手の中の花

まだ  風の中で揺れていたかった

あなたの恋の行方とは関係のない命
なのに

花びらちぎってどうするの

命をちぎってど ....
もしいつか会うならば
そこは淡い抽象画のような場所
つつましく響き合う
やわらかな薔薇色を 薄明や薄暮の青灰色を
ほのかな真珠色を しっとりと佇む秘色を
感触しながら
静かな体温を寄り添わ ....
知られてはいけない事と
隠したい事は意味が違う

知られたい事と
伝えたい事も大きく違う

「意外だね」って言葉が好きだ
小さな声で大きな夢を語るような

山頂の空気が美味しい ....
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